日本の京都の街並みをモチーフ、さらに演歌のBGMが流れる日帰り温泉施設。

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最近は週末を利用した気軽な海外旅行が人気。パスポートこそ必要なものの、国内旅行とさほど変わらない感覚で行ける国も少なくない。台湾などはその筆頭といえるだろう。

台湾が旅行しやすい理由はいろいろある。親日家が多く、日本語も通じやすいし、比較的治安もいい。地理的にも近く、東京から台北までのフライト時間は約3.5時間。沖縄の与那国島とはわずか111kmしか離れておらず、天気のよい日には与那国島から台湾が見えるほど。

さらに、日本と同じ温泉天国。九州ほどの国土のなかに100カ所以上の温泉がある。台湾の温泉文化はもともと日本の統治時代に根付いたものだが、近年は新たな温泉ブームが到来。週末に家族や恋人と温泉旅行を楽しむ台湾人も多い。

台北周辺の温泉といえば、北投温泉が有名だ。ミシュランの旅行ガイド『ミシュラン・グリーンガイド』でも3つ星を獲得した人気の観光スポット。日本統治時代に開拓されたとあって日本情緒も色濃く、石川県の老舗旅館「加賀屋」も進出している。

周囲をぐるりと山に囲まれた風流な温泉街でありながら、台北市内からは電車でわずか40分ほど。距離にして10kmあまり。東京では近場の温泉といわれる熱海まで約100kmあることを考えると、その近さがわかるはず。

北投温泉の中心となるMRT新北投駅周辺には、硫黄の煙が立ち込める源泉地「地熱谷」や広々とした公共の露天風呂などがあり、まさにザ・温泉街なムード。高級旅館からスパリゾートまで幅広くそろい、日帰り入浴OKな宿も多い。

もう少しローカルチックな場所でしっぽり寛ぎたいなら、紗帽山温泉もいい。北投温泉(またはMRT石碑駅)からさらに車で15分ほど行った山奥にあり、秘湯風情もたっぷり。このあたりには食事処を併設した日帰り温泉施設が集まっている。

今回、紗帽山温泉にある日帰り温泉の1施設に立ち寄ってみた。京都を街並みモチーフにしたという施設内には日本の演歌がBGMに流れ、不思議な非日常感が漂う。客は地元の人がほとんどだったが、入り口では日本人旅行者の中年グループにも遭遇。どうしてここへ? と聞くと、
「いや、もうここは好きで、何度も来てるのよ」
という返事。料金表の一部には日本語も併記されていたし、脱衣所には「風呂での撮影禁止」を伝える日本語の看板もあったから、日本人客も少なくないようだ。

温泉はすっきりした酸性硫黄泉を贅沢にかけ流し。露天の大浴場が気持ちよい。台湾には水着着用の露天風呂も少なくないが、ここは裸で入浴可能だった。

ただし、女性はシャワーキャップ必須。実は私自身、入り口で手渡されたにもかかわらず、ショートヘアなので不要と判断。着用せずに入浴すると、妙に頭に視線を感じる。しばらくすると、近くにいたおばちゃんに「シャワーキャップ、被らなきゃダメよ」とでも言いたげに頭を指さされ、慌てて着用。事なきを得た。

一方、同行した男性陣の報告によれば、男性風呂ではなぜかみな椅子に腰かけず、立って体を洗っていたという。さらにサウナは満員電車並みに混んでおり、こちらも立ちながら入ったとのこと。あとで調べてみると、裸OKのせいか、たまにリラックス以外の目的でくる男性もいるらしい……。ひとくちに温泉施設といっても、場所ごとに雰囲気やローカルルールが違うのは日本も同じ。当たりはずれや相性の良し悪しもあるだろうが、それもまた一興かも。

今回は台北市内に宿をとり、夕方からフラリと日帰り温泉を楽しみに出かけた。所用時間は移動も含めて2〜3時間だが、雑多な刺激に満ちたる台北の街並みから、自然あふれるのどかな山里へと景色は一変。短時間でもかなりの小旅行気分が味わえる。

グルメや観光、買い物など、あれこれ楽しみの多い台湾。旅の疲れをいやすリラクゼーションといえば「足つぼマッサージ」が定番だが、「日帰り温泉でリラックス」も大いにアリな選択肢だ。

ちなみに台湾、スクートのようなLCCを使えば片道1万円前後〜、と交通費も国内旅行並み。リピーターはもちろん、海外旅行は久しぶりという人も、国内旅行の延長線に近いスタイルで大いに楽しめる旅先といえそうだ。
(古屋江美子)

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