鏡の状態です。

写真拡大 (全2枚)

中高生の頃は思春期で、鏡を見るのが好きだった。自分が今、どんなヘアスタイルになっているか確認。周囲に鏡が無い場合は、その代わりになるものを探す。窓ガラスだったり、CDの反射面だったり、あらゆる物を代用品に。要するに、私は“気にしい”だったのです。

今はさすがに当時ほど鏡に執着する自分ではないが、だとしても嬉しい研究が進んでいるみたいなんです。「産業技術総合研究所」(以下「産総研」)が開発した『調光ミラーシート』は、鏡⇔ガラスが自由自在だというのだから!
例えば、窓ガラス。ガラスなんだから、向こう側が透けて見えるじゃないですか。微かにこちら側を映してはくれるものの。しかし今回の技術開発により、さっきまでガラスだったそれが鏡に変身する、なんて事が可能となるわけ。

ではその原理についてだが、正直難しい。ぶっちゃけ、よくわからない。はしょらせてください。
ただ詳細について説明すると、このシートに用いられたのは「マグネシウム合金薄膜」なる素材だそう。これが、スゴイのだ。水素(水を電気分解して発生させる)を注入すると、前述の通り“鏡状態”から“透明状態”にスイッチングし、また酸素を注入すると脱水素化により“透明状態”から“鏡状態”に戻る。
どうですか。鏡⇔ガラスと、状態の行き来が現実のものとなっている!

……なんて物凄く驚いてしまったのだが、こんなシートって実は以前より存在したらしい。でも今回の新技術は、従来より大きく進歩しているのです。
まず、ムチャクチャ薄くなった。この前進が、あらゆることを革新していく。まず従来のシートの場合、2枚のガラスをスペーサーを用いて貼り合わせてペアガラス(二重ガラス)にし、その間の空間に水を電気分解して作った水素や酸素を注入。そのようにして、状態を切り替えていたという。しかし今回の『調光ミラーシート』は、そこまで手間がかからない。活用するのは、すぐそこにある“空気”なのだ。
「空気には、微量の水分(水蒸気)が含まれています。これを電気分解し、注入します。また、戻す際には空気中の酸素を利用します」(「産総研」サステナブルマテリアル研究部門・吉村氏)
シートが薄くなったから、状態変化のために必要な水素の量は以前の50分の1に減少した。だから、もう何も準備しないでいいのだ。必要なのは、周囲にある空気だけ。これを活用し、状態を変えてみせます。

非常に、画期的な発明だと思う。さて、では本番はここからです。この『調光ミラーシート』が生まれたことによって、我々の生活にどう影響が及ぼされるのだろう? どんなシチュエーションで活用されるのか? その辺り、伺ってみた。
「ほぼガラス張りになっているビルって、ありますよね。そのガラスとして活用していただきたいと考えております」(吉村氏)
面積の問題などなど超えるべきハードルは数多いのだが、最終的な目標はそれである。これ、助かりません? 例えば、異様に日差しがキツイ日とかあるじゃないですか。そんな時は、「ガラス窓」から「鏡」に切り替えればよい。なぜなら、鏡は太陽光を95パーセントもカットするから。きっと、生活もしやすくなる。
他にも航空機の窓として活用できるはずだし、開発が進み今より透過率や耐久率が上がれば自動車のフロントガラスに応用することだってできる。

もう、知らないことだらけでした。鏡に変身することで、こんなにもメリットが生まれるとは。
自分の姿を凝視するばっかりではない。実用性に満ちた技術革新であります。
(寺西ジャジューカ)

関連リンク
■ 「産業技術総合研究所」ホームページ