38室ある個室風ホステル。費用はキャンペーンや時期などによって変わるが、私が滞在した時は1泊約3500円だった。旅行サイトや同ホテルサイトから予約可能だ。(2013年3月現在)

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旅行の時ぐらいホテルでゆっくり過ごしたいという人、一人旅なのでホステルで宿泊客と文化交流したという人、予算もあるが状況や目的によって選択肢はさまざま。アジアを旅して物価の安さに驚いたのが、タイ・チェンマイ。高級ホテルではないものの、街の中心から5分ぐらいの場所にあるホテルで一泊2000円だった。だが、富裕層が多いといわれるシンガポールの物価は日本と同等かそれ以上。特にホテルは、他の国と比べると割高に感じた。

そんな中、旅行サイトで観光客のレビューポイントが高級ホテルと並び上位に上がるホステルを見つけ興味が沸いた。2012年11月に、シンガポールのチャイナタウンにオープンした「Adler Hostel」だ。ホステルといえば、知らない人と部屋を共にし2階建てのベッドが雑然と並んでいるという印象があるが、同ホステルは個室風。一つのベッドがしっかりとカーテンで仕切られているため、服を着替える時にもトイレ等で着替える必要はなく、プライバシーが保てて何かと便利そう。これならアラフォー女の寝姿を誰にもさらさずにすむではないか。

さて、カーテンの中に入ってみるとスーパーシングルサイズのベッドがあり、板の間のような荷物置き場もある。1.5畳強はあるだろうか。立つことはできないが、ベッド内には貴重品を入れる鍵つきクローゼットが完備。通常、ホステルでは付かない清潔なバスタオルも用意されている。共同ドミトリーのほか、女性専用ドミトリーもある。ドミトリーの入り口は各自が渡された電子鍵をかざし暗証番号を入力してからでないと入室できないよう配慮されている。

共有の洗濯機や冷蔵庫、簡単な朝食がついていて、「寝るだけなのでお金はかけたくないがホステルは嫌」「プライベートな空間がほしい」という短期・長期滞在者に人気があるという。共有スペースでは世界からの訪問者と交流できるというホステルの利点を残しつつ、寝る場所にはプライバシー空間が広がる。丁度いいホステルのカタチなのかもしれない。

同ホステルのオーナーは若干27歳のシンガポール人、Adlerさん。ヨーロッパやオーストラリアをバックパックで旅行した時の経験から、同業界に興味を持った。「経済的だが安らぎと共に『贅沢な気分が味わえるホステル』を提供したい」と思ったそうだ。海外進出も視野にいれている。少しでも快適に過ごしてほしいという思いから、2タイプの枕、マットレスにもこだわる力の入れよう。ベッド内に併設された電源スペースや個人用の電灯はありがたかった。

ベッドには遮光・遮音に優れたカーテンの仕切りがあるとはいえ、通常のホステル同様、周りの人の生活音が気になって眠れないという人は、配布してくれる耳栓などで各自対応する必要がある。中には深夜にチェックインしてうるさい人がいるかもしれないが……それはお互い様。運に任せるしかない。

余談だが寝顔が見えないようにとカーテンで仕切りが施された日本の深夜高速バスは人気が高い。値段は抑えたいがプライベートな空間もほしいという心理は世界共通なのかもしれない。ホステルとホテルの間を目指した、ちょっと贅沢なホステル。選択肢の一つにいかが?
(山下敦子)

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■ Adler Hostel ウェブサイト