イタリア産コシヒカリ「ゆめにしき」のほかに日本の新米出荷と同時期に限定販売する早稲品種「めぐみ」もある。

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欧州の日本食ブームと共にコシヒカリの認知度が広がっている。コシヒカリといっても新潟など日本産ではない。イタリア北部ロンバルディア州やピエモンテ州で作られたイタリア産コシヒカリ「ゆめにしき」だ。かつて欧州の日本食レストランで使われる米と言えば米国産が主流だった。なぜイタリア産が台頭したのか。同商品を製造・販売するJFCヨーロッパ社でお話をうかがった。

「まず距離が近いです。精米したものを米国からコンテナで海路輸入すると日数がかかっていたのですが、イタリアの場合、欧州域内の消費者に収穫したての米を精米後すぐに届けられる利点があります」(同社担当者)

元々、イタリア北部はリゾットに代表されるように米の栽培が盛んな地域だ。アルプス山脈の豊富な水を背景に穀倉地帯が形成され、その潜在性はあった。ここで日本のコシヒカリと変わらない甘み、ねばり、つやを出すために約10年、開発を行ったという。

「イタリアの現場では日本の技術を取り入れて、苗作りから収穫まで日本式の育成管理に沿い作られます。また気候の変化など、その時々に合わせた細かな対応を取らないと日本の味は再現できません。その指導に沿って栽培してくれる農家にのみお願いしています」(同)

イタリアの栽培地域は欧州では南に位置する。しかし緯度を比べると北海道の稚内とほぼ同じ。そのため高緯度地域での栽培方法の確立も必要だったそうだ。また欧州の水は主に硬水。その硬度で炊いた時の米の味加減など、多くの試行錯誤があったという。

当初「ゆめにしき」は日本食レストランや欧州に住む日本人向けの販売が主だった。そして近年では現地のスーパーマーケットで売られている持ち帰り用の寿司にも使われ始めているそうだ。以前からあった外国産日本米と違い、「ゆめにしき」の場合は冷めてもパサつかないのだ。どこの国で多く消費されているのだろうか。

「ドイツ、イギリス、フランスを中心に売れています。最近は欧州だけではなく欧州域外への輸出も行っておりシンガポール、オーストラリア、アラブ首長国連邦(ドバイ)などが主な輸出先です」(同)

こだわり抜いた結果、海外で根付いた日本米。欧州へ移民したコシヒカリが世界の食卓へ上り始めている。
(加藤亨延)

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