式典にて参加者全員でビデオを鑑賞中。

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国籍は変えられる。そうは言っても日本国籍から外国籍に変えるケースは(近年は猫ひろしさんの例もあったけれど)あまり聞かない。古くは画家・藤田嗣治が日本人からフランス人なったように、日本人から外国人になるということはどのようなことなのだろうか。そこで実際、フランスに国籍変更した人(日本生まれ日本育ちで婚姻による変更ではない)に話を聞いてみた。フランス人になる瞬間とは一体どのような感じなのか。

「法的には書類が認められた瞬間がフランス人になった時なのですが、実感としては帰化した人を対象に行われる式典へ参加した時が、最もそれを体感できます。私が参加した式典は木曜14時から行われたもので参加者は約50人。元の国籍もアフリカや南米、南太平洋諸国から欧州内はイタリアやギリシア、そしてソビエト連邦(ロシアではなく!)までいました。年齢層も幅広く親子でフランス人になった人もいました」

同式典の会場はパリのへそ、シテ島にあるパリ警視庁。担当者からの話を一通り聞いた後、全員で約6分間のビデオ『ドゥブニール フランセ(フランス人になること)』を見るという。このビデオはフランスの歴史や偉人に触れつつ、フランス人としての権利と義務、そしてフランスは昔から移民で成り立っていたという内容が詰められたものだ。

「ビデオが終わると、いよいよ個別に名前が呼ばれオランド大統領の署名が入った書面が担当者から渡されます。この時は皆、隣の人に声をかけて自分がフランス人になる様子をお互いカメラに収めていました。参加資格があり当日招待されていたにも関わらず、出席者名簿への記載漏れなのか当日名前を呼ばれなかった人もいて、船出からフランスにありがちな大らかさを感じました(笑)。そして仏国家『ラ・マルセイエーズ』がカラオケで流されるので歌います。もし歌詞を忘れても、歌詞が書かれた紙があるので大丈夫! 私は一応、前日にユーチューブで予習しました。どうやら、この日は時間が押していたらしく1番のみ(『ラ・マルセイエーズ』自体は7番まで)でした」

ところで、年にどれくらいの人がフランス人になるのだろうか。仏国立統計経済研究所によれば2010年は約9.5万人、2011年は約6.6万人がフランス国籍を取得している(結婚によって取得した人数は含めておらず、それによる取得は2010年、2011年ともに約2.2万人)。以前はサルコジ前大統領の移民政策により帰化が厳しくなっていたものの、昨年社会党に政権交代してから手続きは緩和される傾向だ。高学歴外国籍の若者に対する国籍取得もより優遇・促進されている。

日本の場合、法務省民事局によれば2011年で国籍取得者は1207人いた。一方で同年に日本から国籍離脱した人は168人。様々な生き方があるようだ。
(加藤亨延)

関連リンク/取材協力
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