アジや季節の魚が釣れる「フィッシングゾーン」。子どもや初心者でも釣れるので、みんなかなりテンション上がってます。

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3月8日、横浜・八景島シーパラダイスに“海育”をコンセプトにした施設「自然の海の水族館 うみファーム」がオープン。“海育”とは、“ひとが自然の海とふれあい、海とともに成長していく”という意味の造語なのだとか。
さっそく、先ごろ行われたプレビューに参加してきました!

施設は東京湾のリアルな生態系が観察できる「オーシャンラボ」と、自然の海で魚釣りや魚のつかみ獲りができて食べられる「食育ゾーン」に分かれています。海の生態系を解説するような企画は全国の水族館で行われているものの、実際の海で約7300平方メートルものスペースを使った展示ができるのは、広い“シーパラ”ならでは。さらに魚を釣って食べる食育的なプログラムを取り入れている水族館は全国で何か所かあるのですが、関東近郊ではかなりレアといえます。

まずは魚釣りができる「フィッシングスクエア」(参加料600円 ※魚の調理代は別、付添い入場は1名100円)へ。複数の生け簀があり、通年でアジ釣りが楽しめるほか、季節ごとの旬の魚が泳ぐ生け簀もあります。私はギンザケのコーナーで久々の釣りに挑戦しました。エサだけ取られないよう、オキアミをしっかり針に付けて……30秒くらいでヒットした! 早っ! このギンザケくんたちはやたら元気がよくて、釣り上げてデッキに下ろした瞬間飛び跳ねてまた水の中に逃げてしまったりするので気が抜けません。暴れるギンザケくんから針を外すのに苦労しながら、生きた魚に触るのが本当に久しぶりだということに気づきました。
そして、バケツの中でなおも暴れるギンザケくんとなるべく目を合わせないように「からっとキッチン」へ持っていきます。このコーナーはガラス張りになっていて、ギンザケくんたちが魚をおろすマシンを通り、スタッフの方々に手早く調理されていく様子が確認できます。数分後、カラッと揚がったギンザケくん……は、すごくおいしかったです(!)。身がやわらかく、とってもジューシー。残酷な気分も味わってしまうんですが、水産物にまつわる仕事をしている人や釣り好きでない限り、こういった形で生きている魚が料理に変わる瞬間を見る機会は大人でもなかなかありません。ましてやアジがひらきの状態で海で泳いでいると思っていたり、魚に骨があることにビックリする子どもだって冗談抜きでいる時代。水族館をただ楽しむだけじゃなく、命を学ぶいい機会なんじゃないかと思います。

お隣には海に入って魚をつかみ獲りできる「ハンティングスクエア」(参加料600円 ※魚の調理代は別、付添い入場は1名100円。フィッシングスクエアとは別料金)があり、そちらもかなり盛況。「フィッシングスクエア」「ハンティングスクエア」で獲った生き物は、施設外の「海のバーベキュー 焼屋」でも調理してもらえます。

このあと、大きく育ったワカメを数名で力を合わせて引き上げる「春のワカメ収穫体験会」(3月末までの限定プログラム)に参加しました。最初は小さな芽をロープにくくりつけるようにして植えつけ、海の中で4カ月ほど育てるそうですが、成長したワカメたちはスーパーなどで見かけるしおしおのあの姿ではなく、ストレート、天然パーマ、アフロ(?)とも形容しがたいダイナミックなビジュアル。そして、とにかく重い! 「1本持ち帰ってOK」と言われたのですが、どこまでが1本なのかもよくわからないまま、とりあえず全力で引き抜いたら1m近くありました。どう料理したらいいのか途方に暮れましたがそれはさておき。

このユニークな施設が生まれた経緯を、広報の和田淳太さんにうかがいました。

「うみファームをオープンしたのには、大きく分けていくつかの理由があります。まずは“海の食育”。日本人、特に若年層の魚離れは大きな問題になっています。魚の持つ栄養価を再評価する動きも高まっていますし、見るだけではない、魚の“食”の部分も伝えていかなければならないと考えました。そして“海の恵みの回復”です。海には“恵み”と“脅威”の2つの側面があります。2011年の東日本大震災によって、日本では海のもつ“脅威”の側面が大きく強調されることになりました。私たちのような水族館施設にとっては“恵み”の部分を回復していくことが使命であり、社会に対しての約束だと考えています」

ついキャッキャしながら釣りやワカメ獲りに興じてしまいましたが、ここは楽しみながら海のいまとこれからを考える場。東京湾の生態系をコンパクトに見せると同時に環境浄化にも取り組んでいる「オーシャンラボ」でも、飼育員さんによるわかりやすい解説が聞ける「観察なっとくツアー」(500円)のほか、季節ごとの海の恵みや神秘にふれられるプログラムが予定されているそう。和田さんによるとオープン直後は混雑が予想されるので、午前中やお昼時をはずして小腹が空いた頃に「うみファーム」を楽しみ、から揚げをおやつ感覚で味わうのがオススメだとか。

人気のアクアミュージアムなど水族館や遊園地と組み合わせて、これまでよりちょっと深く、身近なようで意外と知らない海について学んでみませんか?
(古知屋ジュン)

横浜・八景島シーパラダイス
営業時間:施設により異なる(詳しくはHPを参照)
料金:大人・高校生2900円、小・中学生1700円、幼児(4歳以上)850円、シニア(65歳以上)2400円
大人・高校生4900円、小・中学生3500円、幼児(4歳以上)2000円

関連リンク/取材協力
■ 八景島シーパラダイス
■ 「自然の海の水族館 うみファーム」