1998年、日高さんが大学1年の時に出場した「パネルクイズ アタック25」優勝後の記念撮影

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ハッキリいって、知識の多い人はモテる。クイズに強い人は、難しい問題が出た時にどのようにして答えているのだろうか?先日、エキサイトニュースBitコネタで掲載して好評だった「人気クイズ作家の謎の生活」の記事に引き続き、「パネルクイズ・アタック25」(優勝)など、数々のクイズ番組への出演を経て、現在は「高校生クイズ」「クイズプレゼンバラエティー Qさま!!」などで使用する問題を作っている人気クイズ作家、日高大介さんにお話を伺った。


●正解を聞いて、みんなが喜ぶ方が正解!?

――いきなりお聞きしますが、どうしても分からない問題を解くためのテクニックはあるのですか?
「問題を深読みするっていうテクニックはありますね。例えば、僕が高校1年生の時に初めて出場した『高校生クイズ』の地方予選の時に、名古屋の会場で出題された第1問は、『日本で「恐竜の化石」が発見された県は、フォッサマグナを境として、ここ名古屋を含む西のほうが多い。YESか、NOか?』というものでした。ハッキリいって、分かるわけがありません(笑)。しかし、当時は『ジュラシックパーク』などの映画が流行していた時期でもあって、もし正解が『名古屋を含む西』だったら、会場が名古屋なので地元の大勢の参加者が喜びます。逆に、『反対の東』が正解だったら、なんだか気持ち悪い空気になってしまいかねません。やっぱりみんなが素直に喜びやすい方を正解にするんじゃないかと思って『YES』を選択したら、正解でした」

「ウルトラクイズ」の「突撃○×どろんこクイズ」でも…
「テレビで観ていて、『アメリカのハーバード大学は、なんと、ケンブリッジ市にある。○か×か?』という問題が出されたことがありまして。まさかそんな偶然があるなんて思わないけど、正解は○なんです。○の方が正解を知った時に驚きがあって、楽しめますよね。しかもこのとき、出題者の福留さんは問題文の『なんと』をすごく強調されていましたし。だから、クイズ問題ってある意味、視聴者を楽しませるようにできてるんです」

もちろん、中には全く当てはまらないこともあるため要注意である。
「あまり深読みしてしまうと、クイズというより読み合い合戦になってしまうのでよくないですが…○×クイズや三択クイズなどの場合、自分が最初にひらめいたものが正解になりやすいか、またヒラメキと反対の方が正解になりやすいか、『自分のクセ』を知っておくといいかもしれませんね」とのこと。


●究極!早押しボタンの研究

――一般の方が参加できるクイズ番組といえば「アタック25」や「連続クイズ ホールドオン!」などがありますが、クイズ番組に出演する際の対策はありますか?
「まずは、その番組をとにかく何度も見ることですね。この番組は季節に絡んだ問題がよく出されるなとか、ことわざの問題の比率が高いなとか、ある程度の傾向がわかります。あとは、自分が実際に出演していることを想定しながら見ることをおすすめします。例えば『ホールドオン』を見ていても、色々なことが分かります。テレビでは問題のテロップが表示されますが、解答者はテロップが見えない状態で答えていることや、シンキングタイムが短いので素早く判断することが重要…というようなこと。

だから、僕は『ホールドオン』や、芸能人の方が挑戦する『超タイムショック』などは、常に問題のテロップを隠して見ています。勝つことを意識したイメージトレーニングも重要で、僕が初めて『アタック25』に出演が決まった時は、スタッフの方に『僕の解答席は何色ですか?』って尋ねまして、『緑です』って返答いただけたので、25枚のパネルが緑一色に染まることを想像するイメージトレーニングをしました。クイズはメンタルの勝負でもあるので、これが非常に大事なんです。あとは早押しボタン。ボタンがどんな形のものなのかを把握しておいたり、どの指で押すのが一番はやいのか考えておきましょう。スタジオに行って、その場で決めているようでは遅いです」

ちなみに、以前の『アタック25』の早押しボタンは棒状のものだったという。
「『第13回アメリカ横断ウルトラクイズ』で優勝した長戸勇人さんの著書『クイズは創造力〈理論篇〉』(情報センター出版局)によると、『アタック25』のボタンは棒状のものだから、タオルの上に割り箸を置いて、それに手をかけたまま見ると、番組に出演しているような疑似体験ができると書いてあったんです。本番では、それがすごく参考になりましたね。タオルを置くのは押した時の感触を体験するためです。そうすると、どの指先で押すと良いか、それとも手首のスナップをきかせて押したほうが良いのか、押しやすい方法を見つけておくことができるんです」

他にも、出題者の声を録音しておいて、何度も聞いて慣れておくとか、本番までにやっておくことはたくさんあるとのこと。
「でも結果的には、その場の雰囲気を楽しめる人が勝つような気がします。初出場なのにビギナーズラックで優勝しちゃう方もいますし。2回目の出演でも緊張して力を出しきれない方もいますし」

●超精細!上級向け早押しテクニック

早押しボタンの話が出てきたが、ボタンを押すタイミングにもテクニックがあるそうで…。
「例えば、早押し問題の時はこんなふうに頭の中は考えています。仮に『本屋大賞』の問題が出るとします。昨年(2012年)に受賞された三浦しをんさんは『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞を受賞されていて、第1回めに受賞された小川洋子さんは『妊娠カレンダー』で芥川賞を受賞されている。そこで、たとえば『本屋大賞の受賞者の中で、芥川賞を受賞したのは小川洋子ですが、直木賞を受賞したのは…』というマニアックな問題が出たとすると、最後まで問題を聞かずに途中の『本屋大賞の受賞者の中で、あ…』と言ったところでボタンを押すんです。『“芥川賞”の“あ”の部分を強く読んだので、これは芥川賞ではなくて直木賞が問われるな』と先読みして、小川洋子を答えることもあります」

おお〜!もう上級者すぎてついていけない。「クイズ!ドレミファドン」(←高島忠夫さん時代ね)の「超ウルトライントロクイズ」の速さについていけず、キョトンとしている自分が蘇ってきた。

●クイズファン御用達の謎の冊子

もちろん、本で勉強しておくのも重要とのこと。

「実は、個人やサークルが主催して、クイズを趣味とする人が集まるクイズ大会が全国各地にありまして、その大会で出された問題や、大会での様子を再現した同人誌のような冊子があるんです。それは非常によく書かれてあって、問題と答えだけではなく、誰が問題のどの部分で早押しボタンを押したかということまでも明記されています。これは本屋さんでは売ってなくて、クイズ大会の会場で売っているので、それを買って勉強するという方法もあります」

――そういった冊子で勉強する方が近道なんですか??
「クイズはとにかく量をこなすことも大事なんです。テレビや新聞から得られる情報からは、旬なものは手に入るけど、それだけでは不十分で、クイズを解くための色々な知識を広く浅く頭に入れておくにはこういった冊子などが効率的で良いですね。もちろん市販のクイズ本でも構いません。クイズは、問題を解けば解くほど強くなります」

●どの放送局のクイズ番組のピンポン、ブー音が好きか?

クイズ大会の話が出てきたが、実は日本中で頻繁に大会が開催されているという。
「私が知る限りは、月に50回くらいは日本のどこかで開催されています。規模はさまざまで、20人規模から500人規模まで。ジャンルもオールジャンルの本格的なものから、アニメやゲームに特化したものまでさまざまです」

クイズ王が主催する場合もあり、実際に他のクイズ王が参加することもあるとか。
「今は一般の人が参加できるクイズ番組が減ってしまって、クイズファンがどこで“発散”させているかというと、そういったクイズ大会なんです。クイズで有名な方が主催する場合があって『あの人が主催している大会は面白いから、行ってみよう』という感じで参加することもあります。そうやって集まるので、クイズ王同士は仲が良いですね。本番になると真剣ですが」

イベントといっても、照明、演出、音響などに非常に凝っている大会も多いとのこと。実は先日(3月3日)、日高さんも5年ぶりに大会を開いた。
「僕はTBSのクイズ王番組で使われている『ピンポン、ブー音』が好きなので、音もその音に似たものを使ってます(笑)」

――TBSで使われていた音って、どんな音でしたっけ?
「昔ながらのベルのような『ピンポンピンポンピンポン〜、ブーーー』ですね」

――おお〜〜〜!すごい!!思い出しました!まさに「史上最強のクイズ王決定戦」で使われてた音ですね!

まさか、日高さんから「TBSのクイズ番組における、ピンポン、ブーの音のまね」が聞けるとは!思わず感激。

「ちなみに、『ウルトラクイズ』の『ピンポン、ブー音』のイメージが強い方もいらっしゃると思いますので一つだけうんちくを言いますと、あの音が使われ始めたのは第6回めからで、それまでは「(小さな声で)ピンポーーーン」という感じの優しい感じの音だったんです」

おお〜〜!こちらも負けじとうんちくを…と言いたいところだが、一つも出てこないではないか…。「ウルトラクイズ」が始まった当初は「バツ」の言い方が違っていて、福留さんが「バツ」のことを「ペケ」と言っていたことがある…ことぐらいしか知らないけれど、何を言っても日高さんには勝てないから、そのうんちくは黙って脳内にしまっておくことにしておいた。

●奥様に「アタックチャンス!」

さて、ここまで2回にわたって日高さんにクイズについて教えていただいたが、一つ気になることがある。それは「“非常に変わっている日高さん”の奥様は、どんな方なのか」ということだ。ほとばしる好奇心を抑えきれずに聞いてみた。

――日高さんの奥様もクイズ好きなんですか?
「はい。実は妻も『アタック25』で優勝したことがあるんです」

――クイズ夫婦!?どうやって知り合ったんですか?
「ある意味、それも『アタック25』つながりです。妻は番組に3回も出場していて、1回目は女子大生の時に出演して10枚獲得して2位に、それから5年がたって(※注:アタック25は一度出演すると5年間は出られないルールがあるそうです。同じ人が頻繁に出るのを防止するため)、2回目に出演した時は、0枚だったんです。かなり悔しかったらしく、『クイズの勉強をして強くなりたい』という決意をきっかけに、当時クイズをバリバリやっている大学生、ということで僕が紹介されまして、それで会ったんです。初対面なのに彼女が出演した時の『アタック25』を一緒に見てアドバイスしたり、クイズに出そうなデータを渡したり、クイズ好きの大先輩が集まる『ホノルルクラブ』っていう老舗のクイズサークルに一緒に行ったりしていくうちに趣味が合うことが分かって、付き合い始めました」

さらに彼女が3回目に出演した「アタック25」では念願の優勝!その時、日高さんは何をしていたかというと…。
「後ろの応援者席に座ってまして、ウルウルしてました」
その後、日高さんが大学の学費ローンを完済したのを機に、プロポーズ。同棲生活10年だったという。
「何人もの人から言われましたよ。『プロポーズの言葉は、「僕にアタックチャンスしてください!」ですか?』って(笑)。いちいち切り返すのも面倒くさいので『そうです』って適当に返事をしてましたけど(笑)。実際は普通にプロポーズしました」

他にも「夫婦でクイズを出し合ったりしてるんですか?」と、頻繁に聞かれるという。
「仕事で作った問題が解けるかどうかを確かめるために問題を出すことはありますが、プライベートで出し合うことはありません(笑)」

とはいえ、なんとも仲が良さそうではないか。クイズが好きな人は勉強して、ぜひクイズ大会に出場してみよう。良い人が見つかったら早押しして「アタックチャンス!」※すみません、自分で書いてても意味がわかりません。(取材/文:やきそばかおる)

●クイズやうんちくに、もっと強くなりたい方は…
『クイズ作家が教える「マメちく」の本』(日高大介著:飛鳥新社)2013年3月2日(土)発売

・全て140文字以内で書かれてあるので、1つのうんちくが10秒くらいで頭に入ります
・よくある「歴史」「科学」「スポーツ」といったようなテーマ分けではなく、「起きてから寝るまで(平日編)(休日編)」など、1つのうんちくから次のうんちくへ、流れるような構成展開です。

3月14日(木)にはトークイベントを開催。
「クイズ作家が語る「クイズ作り」の裏側」
ジュンク堂池袋本店
19時開場、19時半開演。
お申込みは1階の案内カウンターか、お電話03-5956-6111にて。