ネット上にも熱狂的ファンがいる「ハムケツ」。

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「あー、昔、飼っていたことある。なんか一時流行ったよね?」
「でもさ、どうせなら反応があるペットを飼いたくない?」
ハムスターは飼い主のこと、ちゃんとわかるの?」

かつては大人気だったのに、今はそんな侮辱的な言われ方をされることもあるペット・ハムスター
ペットショップにおいても、入口付近を陣取る「看板スター」の犬や猫に比べると、店の奥に地味にいる印象があるが、実はまだまだ知られざる魅力がある。
その一つが、「美尻」だ。

丸い尻に、冗談ほど小さくポチッとついている尻尾のキュートさときたら。これを見て全く動揺せずにいられる人はほとんどいないのではないかと思う。
ネット上では「ハムケツ(ハムスターのお尻)」と呼ばれ、「悶絶するほどかわいい」というスレッドが立ち、多数の画像が貼られていたりするほどだ。
壁際などを手で掘りながら、何かを懸命に探す後ろ姿の「ハムケツ&踏ん張る両足」というのも、なかなかイイ。

また、「無口」なところも魅力的だ。
ごくたまに、怖かったときや驚いたときなどに、ぜんまい仕掛けのような機械的な「ジー」という音を立てる程度。無表情ながら、ムッとしているとき、愉快そうなときがある(気がする)のを勝手に読み解くのも楽しい。

「輪回し」ひとつとっても、軽やかに流す程度でやるときもあれば、やけくそ気味に激しくまわし、自分でそのスピードに耐え切れずに落ちたりすることもある(コネタ既出)。
実はこの「輪回し」の行為、ストレス解消になるらしいが、なぜ回すかというと、もともと砂漠で暮らす生きものの習性なのだそうだ。
輪を回すことは、本人的には遠くまで来たイメージがあるらしく、輪回し後にピタッと止まってキョロキョロ見回すのは、「自分がどこまできたか」を確認する行為なのだと、ある飼育本に書いてあった。切ない。

さらに意外なのは、外見は似ても似つかないのに、接し方は、昆虫飼育にもどこかしら似ていること。
両者の類似点は、夜中になるとゴソゴソ活動し始めるサイクルや、人が近づく物音によってピタッと止まり、気配を殺すことなど。
さらに、ハムスターがチップ(昔は新聞紙)の中にくるまって寝ていると、どこにいるかがわからないことがよくある。
ケージの外から眺めて、かすかに動く場所を探し、ハムスターの居場所を確認する行為は、まるでカブトムシやクワガタの幼虫をプラケースの土中から、湿っていたり白く見えたりする場所を頼りに探す行為に似ている気がするのだ。

コミュニケーションはあまり成立しないながらも、人間側が観察し、考察・分析する楽しさをたっぷり持つハムスターの飼育。
面白さに関してはペット界の王道・犬猫にも劣らないと思うのだが、唯一残念なのは、寿命が2年程度と、比較的短いこと。早くお別れしてしまう悲しささえ乗り越えられるなら、知られざる意外な魅力にたくさん出合えるペットだと思うのです。
(田幸和歌子)