宮崎高千穂町の野方野神楽
(C)高見乾司

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このたび東京で展覧会が行われていた「高千穂・椎葉・米良の夜神楽」。夜神楽ってあまり聞いたことがないのですが、どんな目的で行われて、どんなものなのか? を主催者に伺ってみた。

――夜神楽ってどんなものなのでしょう?
「夜神楽とは、良く神社で舞われている神楽と起源的には同じもの。しかし、高千穂地方などの夜神楽は、里の氏神様を神楽宿と呼ばれる家や場所にお招きし、 夜を徹して三十三の神楽を一晩かけて奉納する昔からの神事のこと。起源は高千穂神社に伝わる『十社大明神記』にも記録があります。国の重要無形民族文化財にも指定されている貴重な舞いです」

――なぜ一晩中やるのですか?
「夜神楽は、五穀豊穣の祝祭であり、年に一度、村人たちが山から神々を迎え、三十三の演目が奉納されます。三十三もあるので、やり始めると朝が来てしまう。宮崎の高千穂・椎葉・米良の3地域は山深い秘境の地であるため、人々の生活形態だけでなく神楽も集落ごとに古い形を保ったまま残されている。『古事記』や『日本書紀』中に登場する日向神話の舞台も数多くあります」

――現在、神楽をやる地方はどれくらいあるのでしょう?
「戦後の高度成長期などを経て宮崎県内の神楽の継承集落は以前の半分に減ってきています。最近のある調査によれば、県域では今も300 を超える神楽が伝承され、夜神楽は80ケ所で行われています」

3地区でも地域の集落ごとに神楽は異なり、高千穂の神楽は、集落の氏神の祭りで、秋の実りと収穫を感謝し、天照大神の復活を願うお祭り。椎葉村は、柳田国男が記したように神楽の古形を伝える山の神儀礼が組み込まれるなど厳しい山岳地帯で生きる人々の生活文化が反映されています。西米良村は、南北朝末期に伝承した宮中舞の名残をとどめながら、皇子の悲憤と菊池一族の悲劇を演じているそうです。

夜神楽を長年追っている高見乾司さんの撮った精霊に扮した人々の映像と特別公開の神楽面が異空間へと誘ってくれました。日本の源流を呼び起こす神楽の数々に、ぜひ現地を訪れたくなりました!
(カシハラ)

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