泣くために「涙活」に集まった皆さん。涙へのモチベーションは非常に高い。

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いつ、どんなシチュエーションでも必ず着火する作品が私にはある。それは『ドラえもん』シリーズの名作・「おばあちゃんの思い出」。
もう、100パーセントの確率で落涙する。私にとって、必殺の1本。だからこそ、うかつに観れない。我が家のライブラリーにもしっかり所蔵されているが、数年に一度しか手に取らない。だって、絶対泣いちゃうんだもの。

ということは、逆に言えばこういう事です。「今日は泣くぞ」と心に決めた時、私の中では選ぶ手段は一択なのです。
……そうです。確実に「今日は泣くぞ」と心に決める日が、私にもあるのです。

では、他の人はどうなのだろう。泣きたいモチベーションはあるのか? そして、そんな時はどうしているのか?
というわけで、ご紹介させてください。離婚式プランナーである寺井広樹氏が今年の1月より開始させているイベント「涙活(るいかつ)」が、今の時代と非常にマッチしているのです。
「1か月に2〜3分だけでも能動的に涙を流す時間を設けることで心のデトックスを図る活動です」
涙の活動だから「涙活」。寺井氏の造語である。

そんなイベントの第2回目が2月22日に「誠メガネ 新宿店」にて開催されるというので、ちょっくら私も泣きに行ってきました。
さて会場に到着すると、すでに15名前後の男女が集結している模様。年齢層は20〜40代といったところでしょうか。そして男女比は、きれいに半分! 老若男女、多くの方々が涙のシチュエーションに飢えているのかもしれないな……。

そして、いよいよ本日の「涙活」がスタート! 早速、主催者である寺井氏が登場し、このイベントの趣旨を説明します。
「ある日、私の知人女性から『3年以上泣いていない。そして、泣きたくても泣けない。感動できない体質になってしまった』という話を聞き、“涙”を活動にする必要があるのかも……と、感じるようになりました」(寺井氏)

続いての登場は、その名も“涙ソムリエ”の梅田崇先生。この方が、「涙活」イベントにおける“泣くためのコンテンツ”を製作しているそうだ。
「人間が生まれ、一番初めに何をやるかと言ったら泣き叫ぶことですよね。『赤ちゃんは泣くのが仕事』とまで言われているのに、大人になるにつれて『笑う』ばかりが義務付けられるようになります。メソメソしてばかりでもいけませんが、涙も非常に有意義な感情表現ですよね」(梅田氏)
だが、胸に刺さるプログラムは人それぞれ異なる。よって、様々なコンテンツを用意する必要がある。なるほど、“涙ソムリエ”です。

では、この日の第1弾。まずは、谷川俊太郎『さようなら』という詩の朗読から始まりました。読み上げるのは、ソムリエの梅田先生。そして、ジッと聞き入る参加者たち。
「どうでしょうか? まだまだ、こんなものじゃ泣けないよという感じでしょうか(笑)」(梅田氏)
やはり、人は聴覚より視覚からの情報の方が響くようだ。

そこで満を持し、この日のために用意された動画が披露されます。3分ほどの短編フィルムが連続で10本以上続くという、このスペシャル映像。いや、明らかに威力がありそうなんですけど……。
そんなこんなで、動画はスタート。もう、色々な角度から感情に迫ってくる。子から母へ送るメッセージを字幕にした動画、シンガーがバラッドを歌い上げる映像、“事故に遭った娘を救おうと必死になる父親”を描いた映画……。
ふぅ、困った。取材している身分で泣くわけにはいかない。

そして、会場内からも鼻をすする音が聴こえてきました。まず「乳がんで余命半年となった飼い猫の動画」で、女性が1人、2人と目頭を押さえ始める。父子の絆を描くアニメは、30〜40代男性の方々の涙腺を緩ませた。私も、ここが一番ヤバかった!
なるほど、やはり心に響くコンテンツは人それぞれである。

最後は、ゲーテの詩の朗読で締めます。今回は男女の掛け合いになるらしく、梅田氏と参加女性による読み聞かせという形態が取られました。内容は、まさに「涙」をテーマとしたもの。「泣いていいんだよ」と語りかけてくるようなメッセージが込められていた。

では、寺井氏による総評です。
「私自身、今まで映画を観ても全く泣けず、自分自身で『冷たい人間なのかな?』と思っていたのですが、離婚式を始めてから完全に体質が変わりました。式でも、実は男性の方が号泣するんですね」(寺井氏)
と言っている寺井氏の声が震えている。どうやら、ご本人も涙活していたようだ。

その後は、参加者による交流会が行われている。泣き顔を見せ合っているので、打ち解けるのも早いようです。
「『類は友を呼ぶ』の『類』は『涙』ですね。皆さまに“涙友(るいとも)”を作っていただきたいと思います」(寺井氏)

それにしても参加者の方々、やはり望んで泣きに来ていただけのことはある。非常にモチベーションが高いのだ。様子を見ていても「何とか、この動画で泣いてみたい!」と、意気込みが伝わってきたから。
当然だ。だって、この人たちは「涙活」に来ているのです。
(寺西ジャジューカ)

関連リンク
■ 「涙活」オフィシャルサイト