上海にて。前へ前へと…。(撮影:原田みずき)

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知ってるようで知らない国の一つが中国だ。原田みずきさんは、中国の街の様子を撮影し続けるクリエーターの1人である。先日開催されたカメラと写真映像の情報発信イベント「CP+(シーピープラス)」内の写真展「御苗場」(写真家・テラウチマサト プロデュース)で、ご自身が撮影した上海の街の様子を展示して注目を集めていた。果たして、原田さんから見た中国とは?早速、ご自身にお話を伺った。

――街の様子はどうですか?
「中国にはよく足を運んでいまして、今回、展示した写真は上海の郊外を映したものが中心ですが、非常にのんびりしてますよ。おばちゃん達が、道端でずっとおしゃべりをしている光景なんかがよく見られます。写真の奥の方には高層ビルがあって、昔ながらの中国の生活と高層ビルが一枚の風景として映っているのがなんとも美しく、中国の勢いを感じます。『徐々に』ではなく、急に成長したから撮れる写真がたくさんありました。高層ビルが次々と建てられるなど、景色の変化に比べて、人々の意識は変わっていないギャップの部分が多い。そのギャップの大きさに、中国の勢いが表われていると感じ、今回はそこに焦点を置きました」

急速な経済成長を遂げている中国の裏側を撮影。
変わるもの、変わらないもの、創られるもの、そして同時に失ってしまうものを表現しているというわけだ。

勢いの良さはアートにも現れているという。
「上海に行ったのは、中国国内でも上海はアートの先端を走っているといわれているため、観に行こうと思ったのが動機だったのですが、意思の強さというか、上り調子の勢いがにじみ出ています。中国の歴史を取り入れつつも、モダンに仕上げているものが多いですね」

続いて、中国の人々について聞いてみた。
――中国のお友達はどんな感じの人が多いですか?
「基本的にやさしくて良い人ばかり。日本に比べるとプラス思考で自信家の人が多く、フェイスブックやグーグルなどが使えなかったりで、情報が制御されている中、国内で流れるニュースを信じている人が多いです。その一方で、海外に精通している人は、疑問を感じている人も多いと思います」

原田さんによると、とにかく前向きな発想の人が多いことに、驚かされるという。また、日本にまつわるニュースや情報が、全く違った内容で伝わっていることが多いことにも驚くという。

ここで、原田さんが中国で写真を撮るようになったきっかけを聞いてみた。
「学生時代に経済学を専攻していたので、当時から中国はこれからどうなるのか気になっていたんです。仲の良い中国人の友達がいて、お互いの国について語り合う機会も多く、中国自体に親近感と興味があったので、日本人として、というよりも自分の感じた目線で今の中国を残しておきたかったんです」

特に最近は中国関連のニュースが多く、時期的にも中国の経済を絡めたテーマで作品を作りたかったという思いから、昨年に中国で撮影した写真を展示することに踏み切ったそうだ。

――ちなみに、初めて中国に行った時の印象は?
「10年ぐらい前だったんですけど、私にとって中国といえば自転車というイメージだったのに、どこに行っても自動車だらけだったことにビックリしました。『日本より都心なんだ!どうしよう…』と思って焦りましたね(笑)。おまけに、街中に工事用のクレーンがあって、訪れる度に新しいビルがどんどん建ってて、まさに建設ラッシュでした」

確かに、広い道路を無数の自転車が通っているイメージが未だに強いため、中国の変わりように焦る人は多いようだ。
ではここで、原田さんご自身について聞いてみた。

――原田さんは昔からカメラを?
「それが数年前までは、カメラはそんなに興味はなかったんです(苦笑)」

――そうなんですか!
「カメラは持ち歩いていたんですが、そこまでハマってた訳ではなくて…。でもある時期から、自分の日常の中で、印象に残っている風景を形にできたら…と思うようになって、そこから自分の心に火がつきました。『私がやりたいのは写真だったんだ!』って」

――尊敬する写真家は?
「志賀理江子さんです。6年前から宮城の北釜に移り住んで、地域のカメラマンとして皆さんと交流を深めながら写真を撮られています。独特の切り口で素敵です。私が真似しようと思ってもできないから、うらやましいです」

※志賀理江子さん:1980年愛知県生まれ。ロンドン芸術大学チェルシーカレッジ・オブ・アート卒業。2008年写真集『CANARY』(2007年、赤々舎)、『Lilly』(2007年、アートビートパブリッシャーズ)で第33回木村伊兵衛写真賞を受賞。2009年ICPインフィニティアワード新人賞受賞。2012年第28回東川賞新人作家賞。


●美魔女になりたい

――原田さんがこの先、やってみたいことは?
「将来は海外で展示をしたいです。特にロンドンで」

――なぜロンドンで?
「イギリスに住んでいたことがあって、ロンドンの街や人からかなり影響を受けたんです。ロンドンの街並みは綺麗だし、アートを楽しんでいる人も多いし、あとはなんといっても、人々が良い意味でいい加減です。例えば、トーストにジャムとバターを塗る時って、日本だとジャムとバターを塗るスプーンを別々にしないと嫌がられがちですが、イギリスはそういうのは全く気にせずに、混ぜて使うような人が多いんです。そういうところが私にとっては居心地が良いな〜と思いまして。イギリスの人は人生を楽しんでいる人が多い感じがして、そういうところもいいですね。社会人でも、休みの日のことばかり考えている人も多いですし(笑)」
実際に、「日本人はなぜあんなに働くのか?」と不思議がるイギリス人が多いという話も聞く。

実は、中国以外ではイギリスに行くことが多いという原田さん。そこで、こんな質問をしてみた。
――難しい質問かもしれませんが、イギリスと中国の違いってなんでしょう?
「イギリスは、成長が成熟してしまって、経済的にはあまりよくないけど、色々な国の出身の人がいて自由な感じがしますし、心に余裕がある気がします。中国はバブルの終わりかけだから、成長が伸びきっちゃう前に、なんとかして自分達を“上の階級”にもっていかないといけないという思いが強いです。実際に下から上がるのは難しいですし」

広い意味で、対称的ということである。

――海外での個展以外にやってみたいことは?

「写真集の出版をしてみたいですね。私は芸術家ではないので、アート本でも、それ以外の形でもいいです。あとは、自他共に認める美魔女になりたいです」

――なぜ美魔女に!?
「写真を撮る時は、相手とのコミュニケーションが大切なので、撮る側の私も見た目が気になっちゃうんです」

なるほど。でもここだけの話、原田さんは既に容姿端麗なので、気にする必要はないと思うけど…(←いや、お世辞抜きで)

実は、原田さんは普段は美容ライターとして活躍中。日頃から美魔女の分析にも余念がない。今後、美魔女に一層の磨きがかかり、「日本の美魔女クリエーター」として、海外で話題になる日を楽しみにしている。(やきそばかおる)



●原田みずきさんのブログ
Mizuki's Butterfry Effect
http://mizukilab.exblog.jp/

※原田さんの作品コンセプトは次の3つに分かれている。
RED RABEL:タグ付けする感覚で街の記号をコミカルに切り取る作品。
BLUE RABEL:自分が今感じる社会的なテーマを意識した作品。(中国の写真もBLUE RABEL)
YELLOW RABEL:絵画やポストカードのように視覚的に印象に残るような作品。

じっくり楽しみたいところである。