お話を伺った「ゆかい」所属写真家の(※写真左から)池田晶紀(「ゆかい」主宰)さん、川瀬一絵さん、たださん。モデルから田舎のおじいちゃんまで幅広く撮影。池田さんは大学やデザインの専門学校で講師も勤めている

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職業の数だけ「あるある話」がある。今回は、プロのカメラマンさんに、仕事をしていてよくありがちな話を聞いてみた。普段、あまり接する機会がない職業だけに、カメラマンならではの「あるある」が盛りだくさん。お話を伺ったのは、雑誌やファッションカタログ、広告・音楽、アートなどの幅広い分野で活躍する「ゆかい」のメンバーで、主宰の池田晶紀さん、たださん、川瀬一絵さん。

(カメラあるある)
●カメラを2台持っていったのに、2台とも動かなくなって青ざめる

たださん「現場が都内の場合だったら、大至急レンタルするという方法もありますが、こういうアクシデントって、いつ起きてもおかしくないので、怖いです」
怖いといえば、バッテリー切れも。たくさん用意していても、寒い時はあっという間に消耗する。


(幼稚園児の集合写真撮影あるある)
●幼稚園児の集合写真の撮影では、1人も目をつむらせないように必死

川瀬さん「大きな声を出して『いきますよ〜。3・2・1…』ってカウントして、とにかく気をひくようにしますね。ただ、その前に、顔が隠れて見えなくなっている子がいないかどうかを確かめた上で撮らないといけないので、気を使います」


(写真用品あるある)
●ベンツより高い写真用品

写真用品の価格はピンからキリまでだが、中にはベンツが買えるくらいの価格のものもあるという。
たださん「カメラも機材も、安くないものが多いわりに、買っても刷新されていくのが早いんです。だから、『高いものを買っても、毎日使う物でもないし…』と躊躇しちゃいますね」


(カメラマンの洋服あるある)
●なぜか、黒い服を着ているカメラマンが多い

派手な色の服を着ていると、光に反射して被写体に色が写ってしまうことがあるからだという。たださん「カメラマンの基本ルールなのですが、中には派手な色の服もいらっしゃいます」


(見た目あるある)
●なぜか、男性カメラマンは、帽子をかぶっている人が多い

男性カメラマンの帽子の色は、洋服同様に黒もしくはグレー系の率が高し。帽子をかぶると、日よけにも使えるわけではあるが、なぜ男性の帽子率が高いのか、これといった理由は見つからないという。


(同業者あるある)
●カメラマン同士の交流が、ほとんどない

基本的に、1ヵ所の現場にカメラマンは1人いればいいので、他のカメラマンとの交流がほとんどないという。
池田さん「でも例えば山の写真を撮っている人と、海で写真を撮ってる人との仲が悪いかというと、そういうことは全くなくて、その場を選んだお互いを尊敬し合います。そういうところがいいな〜って思います」


(カメラ購入あるある)
●新しいカメラを買った時、今まで使っていたカメラを売ろうと思っていたが、思い出がつまっているため、あれこれ考えた結果、売らない。

たださん「カメラって、何十万円もしますし、特に初めて仕事で使うカメラを買った時は、ローンを組んでまで買った時の思い出が詰まってたりして、結局、売らずにとっておきました」


(荷物あるある)
●編集者さん、ライターさんの荷物は少なめで、自分だけ荷物15kg

スタッフの中には、現場にほとんど手ぶらで現れる人もいて、ちょっとうらやましいこともあるという。ちなみに、筆者も時々、女性のカメラマンさんとお仕事をするが、女性のカメラマンは、比較的小柄な方が多いというイメージがある。小柄な体に巨大な荷物。荷物を持つのを手伝いたいけど、精密機械に「もしも」のことがあったら大変なので、三脚ぐらいしか持てない。


(手荷物検査あるある)
●空港で自分の荷物が重さ制限ギリギリの時は、必死で交渉する

精密機械などの大事な機材がギッシリ入っているだけに、できるだけ荷物は預けずに自分で持って入りたいところ。
たださん「バッテリーケースを他のバッグに移し替えるとかして、なんとかして機内に持ち込めるようにします。ほとんど、子どものように、ごねているような感じですね(笑)」


(田舎のおじいちゃん撮影あるある)
●どうしても写真に映りたがらないおじいちゃんを、ちょっとずつ“その気”にさせる

おじいちゃんの取材の時に、インタビューは受けたものの『写真は写さなくてもいいよ』と、なかなか撮らせていただけない方もいるという。ただし、どうしても記事に載せる写真が必要な場合、そのまま帰ってくるわけにはいかない。
池田さん「『家族に乾杯方式』でいくしかないですね(笑)。とにかく仲良くなって、『あなたの良い姿を撮らせてください』という気持ちで接します」
たださん「楽しく話しているうちに、構図の良さそうな位置に、おじいちゃんをちょっとずつ移動させちゃうとか(笑)。そのうち、気が緩んで撮らせていただける瞬間がきます」


(身内あるある)
●飲み会の席で記念写真の撮影を頼まれて、綺麗に撮れると「さすがプロ」と言われる

たださん「この前、おばあちゃんの一周忌だったんですけど、やっぱり僕が撮るはめに。これはしょうがないですけど(笑)」


(おまけ)
●カメラマン志望者必見!
カメラマン“いるいる”

では最後に、エキサイトニュースの読者の中に、カメラマンを目指している人もいらっしゃると思うので、カメラマンにとって必要な要素(いる要素)をいくつか教えてもらった。

●場の空気をつくるための、コミュニケーション能力
池田さん「写真撮影の時は、田舎のおじいちゃんのように撮られ慣れていない方でも、モデルさんのように撮られ慣れている方でも、どんな写真を撮るのか不安なもの。こういう写真を撮って、喜んでいただける作品を残します…という感じで説明することで相手の不安を取り除くことが大事です。相手が身構えないように、常に笑顔でいることも大事です」

●人の間にズンズン入っていける図太さ
川瀬さん「きちんと写真を撮ることが仕事なので、イザという時は人の間にもズンズン入っていく図太さが必要です。『うまく撮れなかったらどうしよう』とか、細かいことを心配しがちですが、心配しすぎても仕事になりません」

●撮る瞬間に、ロボットのようにシャッターを切れる冷静さ
池田さん「いかなる状況で撮影する時でも、冷静であり続けられるような、生活習慣をつくっておくことが大事です。どうしても、状況によってモチベーションが上がったり下がったりしがちですが、それだと心が折れて疲れてしまいます。冷静さを保つことが大事という点では、アスリートの感覚に近いものがあると思いますね」

あとはとにかく大きな荷物を持って移動する体力が必要なのだそうだ。街で大きな荷物を持っている人がいたら、カメラマンさんかもしれない。とっておきの1枚を残そうと、今日も色々な現場を大きなカメラを片手に渡り歩いているのである。(やきそばかおる)



(「ゆかい」とは?)
2006年に設立された、写真家の池田晶紀氏が主宰する写真事務所。雑誌・CD/DVDジャケット・広告・映像制作など、5名のスタッフと共に写真を軸とした "ものづくり" を展開中。展覧会やワークショップなどの企画運営やコミッションワークの活動も定期的に行っている。

皆さんに、「今後撮ってみたい人」を聞いてみたところ…
たださん「大ファンである島田雅彦さんです」
川瀬さん「友近さんです。とても綺麗な方ですし、ネタが面白いので、街の風景の中で何かネタっぽいことをしている写真を撮りたいです」
池田さん「なんといっても、さだまさしさんの写真を撮りたいです!」

「ゆかい」のサイト
http://yukaistudio.com/index.php