バレンタイン村は郵便ポストもバレンタイン仕様。

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フランスのロワール地方にあるセント・バレンタイン村。「バレンタイン」という村名も手伝って近年少しずつ観光客を増やしているという。どんな村なのか。

「村がなぜ『バレンタイン』という名前になったのか、じつは謎なのです。歴史をさかのぼると、この地のことを『バレンタインの傍らに』と記されていたことが1190年の資料で確認できます。そして1332年には、すでにここが『バレンタイン小教区』とされていたことを確認できますが、由来を決定的に著した資料は残っていません」(ピエール・ルッソー村長)

バレンタイン村は人口280人の小さな集落だ。レンズ豆や小麦、大麦などの穀物を栽培する農業を主な産業としている。そして約30年前、同村は転機を迎えた。

「1985年に仏イラストレーター、レイモン・ペイネのイラストをあしらった切手が発表され、それがきっかけとなりバレンタイン村の名前が広まりました。村でも天使のイラストを施した郵便ポストの設置や、村名をラベルしたオリジナルグッズ、結婚承認証の発行を行いました。その影響もあって次第に『フランスにバレンタイン村がある』ということが世間に認知されていきました」(同)

現在バレンタイン村にはフランス人に加え、ベルギーなど近隣国からも観光客が訪れるという。じつは日本との関係も浅からずある。

「岡山県作東町(現在は合併し美作市)にあるお寺の住職が、以前村を訪れたことが日本とのご縁になりました。その時、バレンタインデーが日本においても大きな年中行事の一つになっていることを知ったのです。その後、住職の計らいもあって、1988年に作東町と姉妹提携を結ぶことになりました。日本のブライダル企業との提携やガイドブックに取り上げられたことが重なって、今では日本からも観光客がしばしば訪れます」(同)

日本とも結びつきが強くなったバレンタイン村だが、じつはフランスのバレンタインデーと日本のそれとでは作法が全く逆だ。

「フランスでは女性が男性にチョコレートを贈る習慣はなく、男性が女性に花や香水、宝石などを贈ります。もちろん義理チョコや友チョコという習慣もありません。ホワイトデーの習慣もないので、男性の私が妻にプレゼントをしても、お返しはもらえません。残念です(笑)」(同)

日本の感覚ではバレンタインというと、どちらかといえば若者カップルをイメージさせるが、同村に来るフランス人の多くは年配者が多いそうだ。例えば銀婚式記念に同村を訪れたりするという。また毎年2月14日のバレンタインデーに行われる祭りでは、村の人口の10倍にあたる2〜3千人の観光客であふれ、日本からはメリーチョコレートが出店する。

「バレンタイン村には世界中の恋人を惹きつける魅力がたくさんあります。ぜひお越し下さい」とおっしゃっていたピエール村長。遠くて行けないという人は、バレンタイン村の郵便局を経由して郵便物を送ることで、セント・バレンタイン村オリジナルのダブルハートの消印を押してくれるサービスもある。何事もメールで済ませがちな昨今、たまにはゆっくりと手紙で気持ちを伝えてみるのもいいかもしれない。
(加藤亨延)