ブラジル戦について、日本はハイプレス&ポゼッションのサッカーでどこまで通用するのか試したのだから・・・、という事を言われる人がいますが、ハッキリ言って、そんな事は、この試合の評価には全く関係ありません。日本ができなかった事は、守備ブロック(設定した守備のゾーン)での守備の強さを発揮する事と、相手のDFラインの裏を突くような攻撃をする事と、大きくはその2つであり、それは戦い方がハイプレス&ポゼッションであろうと堅守カウンターであろうと、どちらであっても必要とされる事です。

また、ハイプレス&ポゼッションでは通用しないから堅守カウンターで、という事を言うと、堅守カウンター=リトリートしたベタ引きの守備、と勘違いしてしまう人が多いようなのですが、ファーストアタックから守備のフィルターをかけ、守備ブロックで相手の攻撃を止めてボールを奪い、という戦い方において、そのファーストアタックの位置や守備ブロックの位置を高く設定しておけば、それは堅守カウンタースタイルでもリトリートしたベタ引きの守備にはなりません。

ポゼッション率を高くする、などという事は、相手がこちらにボールを持たせても良いと考えていれば、相手がどこであろうとできる事で、従って、本当に意味のあるポゼッション率というのは、相手が堅守カウンタースタイルであっても、ボールを奪われた瞬間にすぐに守備のフィルターをかけてボールを奪い返し、相手にカウンターを許さないで再び攻撃に転じる、という事ができた時のポゼッション率の事です。従って、カウンターを簡単に許してしまうようなポゼッションサッカーには全く意味がありません。

ブラジルが堅守カウンターで戦ってきたのは、日本に堅守カウンターをさせないため。ブラジルという強国を相手にする場合の日本(アジアの国)が、もしくは、南アフリカW杯や直前のフランス戦の日本の戦い方を考えれば、日本は堅守カウンターの戦い方をしてくる、とブラジルが考えたのは当然の事。しかし、その予想に反して日本は攻撃的なサッカーをしてきた訳ですが、それでもブラジルが圧倒的にポゼッションした戦い方をしてしまえば、日本に堅守カウンターの戦い方を選択させてしまう事になる。

従って、ブラジルはやろうと思えばできたのにポゼッションサッカーをせず、「あれ? ブラジル相手でも結構ポゼッションできるぞ。攻められるぞ。バイタルエリアに入る前までの位置での守備はルーズだぞ。そこではボールを奪われないぞ。」、と日本に思わせ、それによって日本に、「やっぱり守備的に戦わないとダメだ」、と考えさせないようにしていた、という事ですね。なぜかと言えば、例え日本のような国であっても、リトリートされてしまってはブラジルでも苦戦するからですね。

つまり、日本は攻撃的に戦えたのではなく、攻撃的に戦わされていた、という事。この試合は攻撃的に戦おう、という主体的な意思が日本側にあったので、その日本が攻撃的に戦ったという事が、能動的にできていた事なのか、受動的にさせられていた事なのか、そこの判断を誤ってしまう人が多くいるようなのですが、個の力差を考えれば、ブラジルが攻撃的に戦ってきていたら、日本が攻撃的に戦おうとしていたかどうかという事は関係無く、当然、日本は守備的に戦わざるを得なくなっていた、と考えるのが普通だと思います。

フランス戦がまさにそうだったですよね。フランス戦も、日本は守備的に戦おうと思って守備的に戦った訳ではない。フランスの圧力に負けて守備的に戦わざるを得なくなっていただけ。ブラジル戦、特に試合の立ち上がりをよく見てもらえればわかりますが、ブラジルは、奪おうと思えば日本のボランチの長谷部と遠藤のところでボールを奪えたのですが、あえてそこではボールを奪わずに逃がし、日本がブラジルのバイタルエリアのところまで攻め込んで来るように誘い込んでいた。それによって最終ラインと中盤の間を間延びさせ、もしくは、最終ラインを高い位置に上げさせ、それによってカウンター攻撃を成功させやすくしよう、という明確な意図を持っていました。