日本に堅守カウンターサッカーを選択させないためにはどうすれば良いのか、そこにブラジルの作戦が集約されていたと言っても過言ではないと思います。ブラジルがガンガン攻めてしまっては、日本に守備的にサッカーを選択させてしまう。そこでは、日本がどう戦おうとしていたのか、などという事とは無関係に、ブラジルがガンガン攻めてしまったら、当然、日本を押し込んで守備的にしてしまう訳で、そこをよく考えて欲しいと思います。

日本のサッカー人のいけないところは、常に日本側からだけしか物事を見ない事。日本がどうだったのか、日本がどう戦おうとしていたのか、そこだけにしか思考が働かず、相手の事をよく見ようとしない。相手の事をよく考えようとしない。ブラジルの監督の日本への褒め言葉は、ただのリップサービスでもない。それは、これからも日本を攻撃的に戦わせよう、という、甘い罠。甘言。ブラジルのような国が恐れている事の1つは、格下と考えている国に足元をすくわれてしまう事で、特に最近の日本にはその危険性を強く感じているからこそ、日本には、「ブラジルは日本のパスワークに付いていけなくて守備的になった」、と勘違いさせておきたい、という事ですね。

そして、繰り返しになりますが、ハイプレス&ポゼッションでは通用しないから堅守カウンター=リトリートしたベタ引きの守備、という事ではありません。そういうミスリードをしようという人が多すぎます。リトリートしたベタ引きの守備とハイプレス&ポゼッションの間には、堅守カウンターだけど守備の設定位置を高くした戦い方、というものが存在し、段階的に言えば、日本はまだそこを目指すべき段階にあります。

南アフリカW杯のような守備的な戦い方では将来性が無い? W杯では優勝できない? W杯での優勝4回、準優勝2回、カテナチオでこれだけの結果を出してきたイタリア。近年のイタリア代表が苦戦していたのは、その守備的な戦術が原因ではなく、個々の選手の能力が落ちていたから。バレージ、マルディーニ、ネスタ、というようなクラスのDFは出現しておらず、FWはやっとバロテッリとカッサーノの出現によって威力を取り戻してきたばかり。また、EURO2012では準優勝を果たしましたが、決して攻撃的なスタイルになった訳ではなかった。

そして、フランスW杯で優勝したフランスも、その時は徹底的に守備的だった。フランス代表が圧倒的な攻撃力を誇ったのは、フランスW杯後の一時期だけ。しかしそれも、個々の選手の質が低下するにつれて落日の一途をたどり、今は何とか数人の質の高い選手の存在によって強豪国の地位を保守しているだけ。そこには、スタイルの問題というのは何も関係していないし、むしろ自国開催でありながらシャンパンサッカーを捨てた時の1回だけW杯で優勝できた、という事が客観的な事実。

他にも、アメリカ大会で優勝した時のブラジルは守備的だと批判されたし、日韓W杯で優勝した時のブラジルは3バックシステムでしたし、更には、南アフリカW杯で準優勝したオランダは、攻撃的なサッカーでもトータルフットボールのサッカーでも無く、徹底的なリアリズムに徹した堅守カウンタースタイルだった。つまり、これらの客観的な事実が、南アフリカW杯のような守備的な戦い方では将来性が無い、W杯では優勝できない、という事の無根拠を証明していると思います。もう1つ付け加えるならば、スペインが常にポゼッション&ハイプレスの戦い方で結果を出し続けてる、という事もありません。

従って、もし日本がハイプレス&ポゼッションのサッカーを目指すのであれば、それは守備的な戦術でも構わないから、それで1回でもW杯で優勝してみせてからで良い。もっと言えば、2回とか3回とかを優勝してからでも良い。堅守カウンターは弱者の戦術? 当然ですよね。まだ日本はW杯でベスト16にしかなった事が無いのだから。しかし、それもまたミスリードで、堅守カウンターが弱者のためだけの戦術ではない事は、前述までの事が証明していると思います。