【寺野典子コラム】日本人選手@欧州、その現実
昨シーズンはバイエルンで厳しいシーズンを送った宇佐美。新天地で迎えた今シーズンは、通訳もつけずに、孤軍奮闘している。開幕時にはベンチスタートだったが、今ではレギュラーに定着。第5節のシュトゥットガルト戦ではゴールも決めている。アウブスブルク戦でも試合開始時は左MFだったが、後半には左MFへとポジションを変えて起用。監督からの信頼度の高さがうかがえた。
■ダークホースが序盤の魅力
ドイツでの試合で一番強く感じたのは、クラブの格の違いだった。
バイエルンやドルトムント、シャルケ、ハノーファー、レヴァークーゼンなど、強豪と言われ、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグの常連クラブは、当然選手層も厚い。所属する選手のレベルの高さは、ボールタッチなどの個人技だけでなく、組織の駒としていかにプレーできるかという部分でも痛感した。上質な材料(選手)で作られる料理(サッカー)の質は明らかに違う。しかし、逆に代表選手も多く、シーズン前にしっかりとした準備ができない点では、不安要素も多い。強豪陣のそんな隙を突くように、新しいチームが躍進する面白さがシーズン序盤の魅力になっているのだろう。
フランクフルトやデュッセルドルフなどのダークホースは、試合を重ねて、負傷などで欠場者が出たり、相手に研究されたとき、どうそこを乗り切るか勢いが止まったときの修正力が、鍵になってくるだろう。
■ミラノへ
9月30日はミラノへ飛んだ。第6節インテル対フィオレンティーナ戦を観戦する。
主力を大量放出したACミランほどではないが、インテルもなかなか波に乗れないでいる。第4節では下位のシエナに敗れ、第5節では3バックへとシステムを変えて勝利をつかんだ。しかし、いまだホームでは未勝利。4万1082人と発表された観客数だが、実感としては半分くらいの入りに思えた。長友佑都の写真を使ったチケットの販促チラシには、「大人用の年間パスを2枚買うと、14歳以下の子供二人にも無料で年間パスをプレゼント」と書かれていた。
経済不況の影響もあり、セリエAでは、年間シートの購入者が減少しているらしい。こちらもインテルはまだミランほど状況は悪くはないらしいけれど。唯一好調なのが、首位を走るユヴェントス。完成した新スタジアムだが、あえて大きなものしなかったことが、功を奏しているという。建設費も抑えられて、空席も目立たない。監督の出場停止処分が続いているが、首位を走っている。
長友佑都は左MFで先発。3人のディフェンダーの前に4人の選手が横一列並び、2トップの下に一人のMFが立つ。相手にボールが渡ると長友と右MFのサネッティもディフェンスラインに並び、中盤には大きなスペースが生じてしまう。開始直後は攻守に渡り、豊富な運動量でカバーしていたものの、17分にPKで先制点を決めると、途端に相手のボール保持時間が増えていく。低い位置でボールを奪ってもそこからカウンターを仕掛けて、攻め急ぐが、後ろが押し上げられないシーンもあった。しかし、それでも2点目が決まる。
「フィオレンティーナは、ユヴェントスともいい試合をしていたし、難しい相手。ボールをキープできる選手も多いから、中盤では相手にボールを持たせて、裏のスペースだけを気を付けようという形で試合に入った」と長友。
2−1で前半を終えて、後半17分に相手に退場者が出たこともあり、自陣深くで守り、ボールを奪ってからのカウンター攻撃というインテルの意識はより高まったように見えた。そして2−1のまま試合が終わり、今季ホームでの勝利を飾る。