ネット依存・健康被害問題も挙げられ、これは個人の問題であるため、教育的・心理的に働きかける対策を大谷教授は紹介する。

最後が有害情報・情報発信・セキュリティ問題で、出会い系・アダルトサイトへの誘引や詐欺、個人情報窃取、著作権侵害などの情報発信、有害情報へのアクセスで、子どもの人格形成にも影響する、と大谷教授。

この場合、外部の攻撃者がいることになり、対応として大谷教授は「子ども自身に少々の被害体験を経験させながらネット被害免疫を形成し、ネットリスク教育を行う」という方策を挙げる。

フィルタリングやマルウェア対策が必要で、スマートフォンの時代になって被害は拡大していくとみている。

スマートフォンの普及で被害が拡大する背景の1つに「無線LANの急速な普及がある」と大谷教授。

従来の携帯フィルタリングは携帯回線向けに提供されていたため、それを回避できる無線LAN通信の登場で、端末へのフィルタリングの設定が遅れていると指摘する。

大谷教授は、「従来の携帯電話で起きた問題はすべて起きる」うえ、射幸性の高いスマートフォンゲームによる金銭被害、マルウェアによるプライバシー侵害、アダルト動画や有害サイトへのアクセスといった問題が拡大するとみる。

「フィルタリングを利用するには、子どもが危険を認識し、納得しなければならない」と大谷教授。

青森県では、教員への講演や専門家の巡回指導、保護者への働きかけを行い、子どもと保護者の双方への理解を深める対策を進めた結果、フィルタリングの導入率は6割を超えた、としている。

MIAU(インターネットユーザー協会)代表理事でコラムニストの小寺信良氏は、LINEが同意を撮りつつ電話帳をサーバーにアップロードして利用者を検索する機能について、「子どもにスマートフォンの情報を送信することの意味が本当に分かっているか」と指摘。

App StoreやGoogle Play上のアプリレビュー欄にユーザーIDが書き込まれている現状が「出会い系みたいになっていて放置状態」と懸念を表明する。

小寺氏は、「自転車の補助輪のようなもので、まずは補助輪をつけ、慣れたら片方ずつ外す。

ケガはしょうがない」と表現し、フィルタリングの必要性を強調。

大谷教授も同様の意見で、リスクを理解させるリスク教育をしながら、子どもを守るためのフィルタリングの重要性を訴える。

また、デジタルアーツの経営企画室コンシューマ担当の工藤陽介氏は、「保護者の知識が追いついていない」点も挙げ、「フィルタリング業界のリーディングカンパニーとして、リスクの啓発啓蒙をしていきたい」と話している。

・フィルタリングアプリ「i-フィルター for Android」の”月額版”が登場 (2012年05月07日)・デジタルアーツ、Android向けフィルタリングアプリ「i-フィルター」発表 (2011年07月20日)