――浄念さんとスネオヘアーさんは、何か通じるものがありますか?

スネオヘアー:一つのキーワードとしては“音”だと思うんですけど、僕は“音楽”で浄念さんにとってはもっと抽象的で“音”、“ノイズ”だったりしています。

――性格で似ていると思う部分はありますか?

スネオヘアー:比較的、影響を受けやすいというか、悲しいってことがあったら悲しくなりますし、楽しいことがあれば楽しくっていう所です。

――感情が“直球”な所ですかね。

スネオヘアー:あと、突き抜けて明るいということがなく、小っちゃいことでも日々葛藤していたりするので。

――スネオヘアーさん自身が音楽から演劇に、そしてまた音楽にというように様々な経歴があるのも葛藤だったのでしょうか?

スネオヘアー:定まってないんでしょうかね。

――でも、どちらもうまく生かされているというのは素晴らしいですよね。

スネオヘアー:いやぁ、今たまたまやらせて頂いているだけで。本当ありがたいと思うんですけど。

――この映画は福島で撮影されましたが、福島の印象はどうですか?

スネオヘアー:僕は新潟の出身なんですけど、新潟の隣接県なので、似ている感じがしますね。畑の感じというか、見渡す景色というか。本当にオール福島ロケなので、色々と地元の方にお世話になりました。キャスティング出演という部分でもそうなんですけど、○○の撮影、○○の町だったり、色々なサポートを受けたりするので、本当に良く感じました。東京から撮影隊で行って、がやがやと賑わして、ばっと撤収して行くみたいな感じじゃ本当になかったんです。参加型っていうか、日常の中、地元の人に本当に支えられて。東京だと何かある種の疎外感みたいなのがあると思うんですけど、そういうのは全然なかったですね。

――今回エキストラで福島の方が参加されていましたが、印象や演技はどうでしたか?

スネオヘアー:僕自体が演技で不安だったり、色々抱えていたわけなんですけど、僕自身救われるような「そうだよね、素人だもんね」っていうような人もいれば、僕が演じた浄念の子供の理有っていう子の役を演じた拓君って、地元の素人の子なんですけど本当に素晴らしくて。もう撮影以前の台本読みの時から全て台詞が入っていて、あまりにもでき過ぎてしまうので、プレッシャーに感じるような所もありました。

――確かに、エキストラにしては上手かったですね。

スネオヘアー:そう。とっても自然だし、子役みたいですよね。

――この映画の中で「救い」のシーンがありますが、スネオヘアーさんの人生の中で「救い」を感じたエピソードはありますか?

スネオヘアー:そういうことばかりだと言えば、10代の頃から本当に多いんですけど。近い所でいうと、今、音楽をやらせて頂いていることですね。デビューが31歳で遅いんですよね。音楽を本格的に始めたのが20代の終わりで、周りが家族を築き上げていく中、解体から始まり、何も形になっていない。年齢的なものもあるとは思うんですけど、周りも「頑張れ」っていうノリじゃないというか。そういう中でデビューの話が立ち上がっては消え、立ち上がっては消えっていうことがあって。

――辛い時代があったのですね。

スネオヘアー:まずは多く届けたいという所で、デビューは全然ゴールじゃなくて、入り口にすぎないんですけど、メジャーっていう土俵でやりたかったんですよ。それが本当に進んで立ち消えたことがあって…デビューしたから生活が変わるなんて全く思っていないんですけど、それはとてもショックで。

――そんな中、「救い」になることがあったのですね?

スネオヘアー:とても辛かったんですけど、ちょっと時間が空いて、ちっちゃいライブハウスで変わらずまたライブをやりました。その時に、お客さんは少ないんですけど、自分が発信したい、アウトプットしたいことのやり取りがお客さんと成立しているよなって思えて、そこからすごく自分のライブが変わっていったりするんですけど。要するにお客さんに助けられたというか。お金をペイして足運んでライブハウスまで聴きに来てくれることにすごく救われましたね。そこから、コミュニケーションしようという風に、音楽自体の表現も変わっていったので。

――最後に、この映画をこれから観る人達にメッセージをお願いできますか?

スネオヘアー:まず、先入観を持たずに観てもらいたいなと。それで観て頂いたら、本当に“答えがない”っていうのがすごく良く思えます。答えの出ない映画の中で、個々が生きている中で思っていること。どこかで何かしらのリンクをしてきて、時に救いになったり、いや違うって意見になったり。それは分からないですけど、本当に気持ちにノックできる映画だと思うんですよね。なので、誰に観て欲しいっていうのはないんですけど、悩める人にはもちろん響きますし、生きる気持ちに対しては必ず伝わる映画だと思います。

〜 『アブラクサスの祭』ストーリー 〜
 仏の道を志し、禅寺で奉仕の日々を送る、鬱の僧侶・浄念。妻や子供もおり、寺で任される仕事も増えてきたが、何事にも“慣れない”不器用な彼は、法事や説法すら思い通りにいかない日々。そんな浄念の心に引っ掛かっている、なくてはならないもの・・・それは音楽。そしてついに「どうしてもライブをやりたい」と言い出す浄念。しかし、妻や住職、そして檀家達にも反対されてしまう。果たしてライブは実現するのか!?

 12/25(土)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー

『アブラクサスの祭』 - 作品情報
『スネオヘアー・ファーストツアー』
チケット一般発売日:2010年12月25日(土)