スイスの補聴器メーカー「バーナフォン」のセミナー講師として出席した中川雅文氏(7月13日、東京都内にて)

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補聴器を装着した外見上でのイメージ。海外と日本では、大きな違いがあるようだ。日本では自分が障害を持っていると、判断されるのを恐れて、難聴の不便さに向き合わない人が多い。暗く、マイナスイメージを持つ人が大半だ。一方海外では、そういった偏見は無いらしく、企業側の理解もあり、職場では補聴器の使用を奨励している例もあるとか。難聴の初期段階に敏感で、50代ごろから補聴器を積極的に使用するなど、プライドを保つ傾向があるという。

聴力に対する見識が高い中川雅文氏(創進会 みつわ台総合病院副院長 聴覚センター長)は、それらの外見上の心配より、もっと重要なことがあると話す。「難聴の症状は、“聴き取り”能力の一部が遮断された状態です。その状態から起こりえる不便さよりも、言語という重要な刺激が乏しくなる変化による“脳の衰え”を心配してほしい」と訴える。その悪影響「小さな声が聞こえない…、高い音が聞きづらい…、大きい音が響くなどの不快さに直面すると、難聴者の中には興味もやる気も積極性もなくなり、引きこもってしまう人が少なくありません。脳の休眠部分が増えていくと、最悪の場合、認知症のような状態まで進んでしまうことがあります」

中川氏は続けて、コンシューマーレポートを扱う米国の専門機関データを紹介した。

「同レベルの難聴を持つ方々への調査。補聴器をつけているか、いないかで収入差を調べたところ、補聴器をつけていない人に比べて1.3倍の収入増。最大で2倍の開きが出たそうです」

そうなった状況を分析して…。

「人は社会を築き、集団生活する生き物。集団の中でのコミュニケーション能力は、イニシアティブをとったり、仲間との和を保つのに重要な要素。主なコミュニケーションツールである『言葉』を理解するため、大脳の広い範囲に言語の解析回路が広がっているのも、人間にとって重要なツールであることを証明しています。ビジネスマンにあてはめた場合でも“聴けること”は仕事の出来を左右する重要な能力です」

中川氏は最後に、補聴器のマイナスイメージを恐れず、聴こえないことに対し関心を持って欲しいと話した。

「会議の場では、白熱するほど声のトーンやピッチが高く、早くなる傾向があります。しかし、難聴の人は、“高く”“早い”会話についていけません。盛り上がった場で取り残されることは、仲間から評価を下げるだけでなく、自身の意欲をそぐことにも考えられます。そうなった場合、うつ状態やノイローゼを引き起こしかねません。“健常な自分”でいるためにも、補聴器支援を活用して“仲間入り”することを大切にしてください」


■関連リンク
・中川雅文氏の書籍「耳の不調」が脳までダメにする - amazon.co.jp
・スイスの補聴器メーカー「バーナフォン」 - 公式WEBサイト(日本語)