W杯で毎度のように優勝候補に挙げられるブラジル。今回も欧州や母国のトップレベルで活躍するメンバーが揃う。その中で、フレッシュな存在として目立つのが、フランスのリヨンに所属するミッシェル・バストス(26)だ。

 右サイドバックは、ダニエウ・アウベス(バルセロナ)がマイコン(インテル)の控えに回るほど豪華な顔触れだが、左サイドはやや層が薄いセレソン。ドゥンガ監督は、レアル・マドリーのマルセロを外して、バストスにこのポジションを託そうとしている。

 バストスの“本職”は2年連続で2ケタゴールをマークした攻撃的MF。前所属先のリールで、左サイドバックとしてデビューしたのは、多くの人々が忘れかけていたことだった。ドゥンガ監督をはじめとするスタッフのリサーチ力と判断、抜擢に至った決断力は注目に値する。

 バストス本人にとっても、層の厚い攻撃的MFでセレソン入りすることは考えられなかった。フランスのレキップ紙によると、昨年10月、妻子との散歩中に初選出の報を知った。携帯電話を見つめながら、「あり得ない」とつぶやきしばらく立ち尽くした。サッカーをはじめたときから夢見ていたこの瞬間、自分が世界一幸せな男だと感じたという。

 ブラジル代表のチームメイトからは、新入りが受ける恒例の“洗礼”を受けた。冷やかしの声が渦巻く中で、スピーチをさせられたり、歌をうたわされたそうだ。「スター集団なのにふざけてばかり。でも試合では真剣になる。メンバーがエゴを出さないのにも驚いた」と語るように、すっかりチームに溶け込んでいる。2日のジンバブエ戦では、得意のフリーキックから代表初ゴールをマークして自信もつけた。

 ロベルト・カルロスの背番号「6」を受け継いで世界の舞台にデビューする“急造”左サイドバックに大きな注目が集まりそうだ。