短い時間も玉田は存在感を示していた<br>【photo by Kiminori SAWADA】

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■途中出場で輝いた二人

 「ロングボールを蹴ったら、相手の思うつぼなのに。向こうはやりたいようにやっていた」

 玉田がさらりと話す。岡田ジャパンに初招集されながらも、後半からの途中出場。悔しさもあるし、不完全燃焼という思いは消えない。しかし、ピッチに立った彼は落ち着いていた。ジーコ・ジャパン時代とは違う、堂々としたオーラがあった。

 ゴールに背を向けながら、パスを受けては出し、走り、またパスを裁いた。CKを蹴り、ニアに出したあとボールを受け、ゴールへとドリブル突破してみせた。
 途中出場なので疲労感もなく、フレッシュな状態だったこともあるが、玉田の動きからは、明確な意思が伝わってきた。

 「ボールをもらう動きを入れていかないとね。タメが生まれないと、中盤が前を向けないし、こういうチームは崩せない。単に外に出してセンタリングを上げても、中の相手は大きいし跳ね返される。崩した中でのクロスもなかった」

 現状を改善するためのプレー、言葉に出さなくとも、その動きがメッセージとなっていた。

 同じく途中出場となった遠藤の動きも光った。ピッチに立った直後、左に開き、手を上げてボールを要求する。相手選手のいないスペースを見つけては、難なくボールを保持し、パスを送った。

 「蹴ってばかりで、ボールが落ち着かないというか、なんとなく相手に合わせた形で戦ってたような印象は受けた。とにかく運動量が少なかった。運動量を増やせば、パスコースは当然空く。しかし、それがないから、横の揺さぶりも生まれず、パスがキレイに繋がったシーンは、ほとんどなかった。タメも作れないから、2列目もサイドバックも上がって行けない。すべてが悪循環だった。自分が入ったら、ボールを落ち着かせ、自分たちのリズムが作れていなかったので、どうにかリズムを作りたいと考えた。FWに当たらないことには、攻撃が始まらないので、できるだけ中盤でタメて……と。そして運動量を増やして、空いているところを探していこうと思った」

 遠藤は何度も“運動量”という言葉を口にした。

 「自分たちのサッカーをバーレーンのようなプレッシャーの激しい相手に対して、表現できなかった。3人目が動くだとか、みんなが連動しないと上手く行かないサッカー。誰かが悪いというのではなくて、ボールを持っていない選手がもう少し動かないといけない。相手よりも走っていないのが原因。疲労とか関係なく、走るのは気持ちで走れる。自分たちの問題。

 運動量で勝てないことには、アウェーではああいう風になってしまう。引き分けでいいと考えている選手はいないはず。1点取られてから動くのではなくて、やっぱり先に点を取るんだという気持ちがあれば、自然と体は動く。ウチも相手も3−5−2。基本的にはがっぷり四つの状態。目の前の相手に勝てばいい、はっきりしている。でもそこで勝てなかったのが、負けてしまった原因。相手に合わせてしまったというのではなくて、後手にまわってしまった。選手一人一人がもっと自信を持ってプレーすることが大事」

 「戦術的な理由」と岡田監督からの説明を受けスタメン落ち。だからこそ、不甲斐ない試合を続けるチームメートを見ながら、イライラすることも多かったに違いない。0−0の状態でピッチに立ち、「なんとか先制点を!」と挑んだが、先に点を許してしまった。遠藤の無念は小さくはないはずだ。