東京株式市場の動揺が収まらない。日経平均株価が昨年、2ケタのマイナスとなったのに続き、今月4日の取引初日は、大発会として7年ぶりに下げ相場を記録。さらに4日続落し、下げ幅が1100円を超えた。“官製不況”と日本経済を揶揄してきた外国人投資家の言を借りれば、株式相場は“官製暴落”の様相を呈しているのだ。株式市場の暴落は、我々に、いったい何を問い掛けているのだろうか。

「この水準がいいとか悪いとかということについて、政府としてコメントをする立場にはございません」

「昨今の株価というのは、日本経済のファンダメンタルズとはほぼ関係なく、海外の株式市場であるとか、あるいは米国経済、サブプライムローンの影響を受けたアメリカの株安の反映であります」

「どうみても、日本経済の実体と関係がないなという印象を持ちます」

 1月7日午前。大発会翌日も下がり続ける東京株式市場について、福田康夫内閣の要である町村信孝官房長官は、株価の暴落を他人事と言わんばかりの調子で、こう言い連ねた。

 そして、この発言が伝わると、多くの株式市場関係者は「当事者意識の欠如を露呈した救いがたい発言だ。責任逃れも甚だしい。東京市場の下げを加速しかねない」(銀行系証券会社アナリスト)とがっくり肩を落とした。

 町村官房長官と言えば、名門・都立日比谷高校から東京大学経済学部に進み、通商産業省に13年間も勤務したあと、父親に続いて、政治家に転進した人物。経済に明るいはずの人物だ。その人物の株式市場に対する発言が「責任逃れ」呼ばわりされるほど無責任だと言うのはなぜだろうか。

 なるほど、多くの市場関係者が指摘するように、1年のスタートである4日の大発会で、日経平均株価が前年末に比べて下げたのは“事件”である。もともと、ご祝儀色の強い大発会で終値が前年末を下回ったのは、7年ぶりのこと。しかも、その616円という下げ幅は、大発会としては過去最大の下げである。

 ご祝儀色が強く、上げ相場が当たり前だった大発会の様相が一転したのは、「失われた10年」と呼ばれた90年代のことだ。92年から01年までの10年間を見ると、5回の大発会が、この時期の厳しい経済環境を映すかのように前年比マイナスという結果を残した。今回の下げは、再び、失われた10年が繰り返されるのではないかという嫌な連想を働かせると市場関係者たちは言う。

 ただ、年末年始も取引が継続していた米国では、株式市場の相場が軟調だった。このことを考えれば、久しぶりに開場した東京市場の下げが大きくなったこと自体は、それほど不思議のないところだ。さらに、4日以降も米国株の軟調が東京に悪い影響を与えていたことも、否定のできない事実だろう。そういう意味では、町村発言は、あながち的外れとばかりは言えない。

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