「これだけ頑張っているのに、報われないのは嫌だ」小3で慌てて馬渕教室に入塾 京都「洛星」を目指してサッカーを封印した親子の葛藤【中受ドキュメンタリー】
公立か私立か、どの塾にいつから通うか、部活や習い事と勉強は両立できるのか、このままのやり方で本当にいいのか--。中学受験は親にとっても子にとっても、悩ましい選択の連続だ。これらの難問に確たる正解はなく、当初の目論見通りにいかないことも多い。今回ご紹介するのは関西圏に在住しながら、中学受験に挑戦した親子。過酷な中受を走り切り「後悔はないし、やり切って本当によかった」と振り返る。そこには様々な葛藤があって……。
公立か私立か、サッカーを続けるか辞めるか
結婚を機に、夫の仕事の都合で京都市に移り住んで約15年。水野麻衣子さん(仮名)はかつて生まれ育った地方都市で国立の中高一貫校に通った自身の経験から、早い段階で我が子の中学受験を念頭に置いていた。

「私が通っていた学校はとても居心地が良く、友人関係も含めてその後の人生の土台となるかけがえのない6年間を過ごすことができました。自分の息子にも、そんな“一生モノ”の経験をさせてあげたいと思ったんです」
小学校低学年の頃から「中学受験をしてみない?」と声をかけ、自然な流れで親子で受験に挑戦することに。ただ、息子は小1からサッカーに熱中していたため、当初は「サッカーを続けながら無理のない範囲で勉強して、公立の中高一貫校を目指せばいいね」と話し合っていたという。この目論見が甘いことに気づいたのは小学3年生の2月、大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県など関西圏を中心に展開する大手進学塾、馬渕教室の説明会に参加したときのことだ。
「受験対策の塾通いは小5くらいから始めればいいかなと思っていたのですが、『今、入らないと間に合いませんよ』と告げられ、昔とは全然違うのだと驚きました。主人と相談し、後で『あの時こうしていれば』と後悔だけはしたくないと、すぐに入塾を決めました」
慌てて塾に入ったこの時点では、夫婦ともに他県出身ということもあって京都における受験事情をまったく把握していなかった。塾の講師から話を聞いてようやく、京都では同志社や立命館といった大学附属校や洛南・洛星などの私立の難関進学校が根強い人気を誇る一方で、近年は西京や洛北といった公立中高一貫校も目覚ましい進学実績を上げて人気が高まり、かなり狭き門となっていることを知ったそうだ。
「公立一貫校一本のつもりでしたが、あまりの難関化を知り、私立との併願も考えました。でも、そうすると入試傾向がまったく違う公立と私立両方の対策をとらねばならないという問題があって」
受験対策を本格化させていく中、クラブチームに所属して頑張っているサッカーをどうするかという難題にも悩まされた。もとは週1回、「体を動かす習い事」程度の軽い気持ちで始めたサッカーだったが、学年が上がるにつれて熱が入り、過酷な練習にもめげずにメキメキと腕を上げ、塾通いが始まった後も本人は「(サッカーを)絶対に辞めたくない」と主張した。しかし小5になる頃には塾の日数も増え、講師から「サッカーはいつ辞めるんですか?」と直接言われてしまったという。
「頑張りが報われないのは嫌だ」--小5の夏、息子の決断
水野さんは親として何が最善かを悩み抜き、一時期は公立受験対策に特化した小規模な塾で週1回、作文対策に通わせてみるなど様々な選択肢を探った。しかし、そこでも「私学に絞るなら大手の馬渕さんをお勧めします。公立ならうち一本にした方がいい」と言われてしまう。最終的な決断は、息子本人に委ねた。小5の夏のことである。
「本人に『どうしたい?』と聞くと、『これだけ頑張っているのに、報われないのは嫌だ』と言ったんです」
前述の通り、面接や作文で思考力が問われる公立は“いちかばちか”の要素が強い。それよりは、自分の頑張りが確かな結果として表れやすい知識重視の私立受験に挑戦したい、というのが息子なりに出した答えだった。
「『そのために、中学に上がるまでサッカーも休む』とも言いました。まだ小さいのに現実としっかり向き合い、覚悟を決めた息子の意思を尊重することにしました」
この決断を機に、塾通いは馬渕教室での私学対策に絞り、学校見学で好印象だった洛星中学校を第一志望と定めた。そして小5の秋から大好きなサッカーを封印し、勉強に専念する日々が始まった。
小6の冬、12月には本番の緊張感に慣れるため、大阪で受験できる岡山中学校の「前受け受験」や東山中学校独自の「プレ入試」にも参加した。当日の流れを事前に把握した上で、ついに迎えた1月の入試本番。受験したのは第一志望の洛星と、第二志望の東山。このとき水野さんの胸中には、事前に塾講師から言われた「どんな結果が出ても、後期試験まで絶対に走り切ることを心に決めてください」というアドバイスがあった。
息子と言葉を交わす中、水野さんは本人のメンタルとモチベーションを保つにあたっていかに母親の役割が重要かを、あらためて実感したという。
「息子が志望校に落ちたとしたら、もし全ての受験先に縁がないという最悪の結果になったとしたら--。何があろうと、親が慌てたり動揺したりして当人を不安にさせるわけにはいかないので、事前にあらゆるシチュエーションを想定し、具体的にどんな言葉をかけてフォローするかということまで準備を万全にしておきました」
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新潮QUEで配信中の『京都「洛星」を目指してサッカーを封印--馬渕教室での試行錯誤で辿り着いた第二志望での学校生活』では、小3での入塾から、小5での大きな決断、そして、第一志望が不合格でも第二志望校で幸せな学校生活を送る、中受を走り切った親子のドキュメントを詳細に報じている。
デイリー新潮編集部
