週刊文春が追い続けるプルデンシャル生命の闇…ここは企業ではなく「犯罪者養成所」だった!(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)
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2019年2月、長崎県対馬市で、JA対馬の職員・西山義治(当時44歳)が自ら運転する乗用車ごと海に転落し、溺死体となって発見された。
人口わずか3万人ほどの離島で、西山はJA共済が扱う生命保険や損害保険の販売で全共連トップクラスの成績を叩き出し、年収4000万円近くを稼ぐ「日本一の営業マン」「JAの神様」とまで称えられた人物だった。
しかし、彼の死の背景には、実に22億円超という途方もない額の不正横領疑惑があった。
元日本農業新聞の記者だった窪田新之助は、地を這うような取材を続け、架空契約や名義貸しなどを悪用した巧妙な詐欺・流用のシステムを西山がつくり上げ、「王国」を築いていった過程を明らかにしていく。
背景には、本部から現場へ課される過酷な営業ノルマや、数字さえ上げれば不正に目をつむり特別扱いするJA組織の狂気と隠蔽体質が存在した。
窪田の「対馬の海に沈む」(集英社刊)は開高健賞を受賞している。
■顧客と養子縁組をし殺害
アメリカのプルデンシャル・ファイナンシャルの子会社であるプルデンシャル生命(以下、プル生命)が、100人超の社員らが約500人の顧客から、計31億円余りを騙し取っていたと発表したのは、今年の1月だった。
この事件を追い続けている週刊文春によれば、顧客のカネを騙し取っていただけではない。高井凜というLP(ライフプランナー)は、資産家女性と養子縁組をし、受取人を自分にして約1億5000万円の生命保険をかけさせ、殺害した容疑で2022年に逮捕された。その後、留置場で自殺している。
今年2月、警視庁特別捜査課が元プル生命の営業マンである菊池啓太郎(30)を逮捕した。特捜課は、菊池が騙しの電話をかける「かけ子」のリーダーで、男女計約450人から約7億円を騙し取ったとみている。
9月には、やはり元プル生命の秋山涼(33)が逮捕された。
「警視庁は、秋山を全国1000人以上から総額15億円以上を騙し取った特殊詐欺グループの幹部とみています。秋山の役割はかけ子の勧誘や、売り上げの管理。このグループは、都内で拠点を転々と変えながら、犯行を繰り返していました」(社会部記者)と文春は伝える。ここは生保会社ではなく「犯罪者養成所」ではないのか。中年のベテラン女性LPは、中小企業やIT企業の経営者といった“見込み客”と関係を持つ「枕営業」をして、相手の妻から訴えられたという。
■転職組LPの壮絶な人生
LPに新卒はいない。他の会社にいて、「月収1000万円なんて普通に稼げる」と勧誘された転職組。入るとまずやらされるのは前職の顧客リストを提出すること。ローンで高級スーツや靴、腕時計を買わされ、借金漬けにされた挙げ句、固定給なしの完全歩合制。1週間に3件の契約がノルマ。経費はすべて自腹。新人LPの稼ぎの数%がSM(セールスマネジャー)の懐に入るから、LPへの要求は苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)を極める。このやり方は「ねずみ講」そっくり。
LPのトップ、SG(スーパーゴールド)の年収は3億円を超え、高級車にヨット、愛人を持つ者も僅かにいるそうだ。だが、4000人を超えるLPたちのほとんどは、年収4000万円が翌年には200万~300万になる「天国と地獄」人生。
“カネの亡者に成り下がった人間”は、さらに稼げる「特殊詐欺犯罪」に手を染めていったのである。
プルデンシャルとは「思慮深い」「慎重な」という意味があり、会社のHPには「顧客から最も信頼される会社となります」とある。「ふざけるな」である。
プル生命は不祥事の責任をとって社長が交代し、新規契約の自粛をしている。だが、その間にも、40代の社員が顧客を騙し、金銭を授受していたことが発覚。当人は8月に自殺したという。
私は商学部を出たが、他人様(ひとさま)のおカネを扱う「銀行」「保険」「株屋(証券)」に入ろうとは考えなかった。貧乏新聞屋の小倅(こせがれ)だった私は、カネに飢えていた。カネに対する「倫理観」が欠如していた。プル生命のような会社に入っていたらと考えると……冷や汗が出てくる。
(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)
