「クックパッド来るんだ(笑)」から始まった独占インタビュー。料理レシピ本大賞を3度受賞したリュウジさんが『生きるための弁当』に込めた本音
「料理レシピ本の書籍としての指標を示し、その魅力と価値を広く届けること」を目的として創設された「料理レシピ本大賞 in Japan」。第13回となる今年2026年の料理部門大賞はリュウジさんの『リュウジ式 生きるための弁当』(ライツ社)でした。受賞発表会当日、クックパッドニュースが独占インタビューしてきました!
「クックパッド来るんだ(笑)」
9月9日(水)、第13回料理レシピ本大賞 in Japan 2026 受賞発表会当日。個別インタビューのために記者と対面すると同時に、リュウジさんの放った第一声はこれでした。
クックパッドとリュウジさんの間には、これまで少なからず距離があったと感じている読者の方もいるかもしれません。それでも、こちらのカメラに向かって「いいですよ、酒映してください」とハイボールのグラスを掲げる姿は、壇上で見た「料理研究家・リュウジ」そのままでした。
料理部門大賞『リュウジ式 生きるための弁当』(ライツ社)は、『悪魔のレシピ』(2020年)、『至高のレシピ』(2022年)に続く3度目の大賞。懇親会の合間に、「6杯くらい飲んだ」と言うリュウジさんに、この本に込めた思いを聞きました。
「もう俺を受賞させないほうがいい」

3度目の大賞、率直な心境から聞くと、返ってきたのは意外な言葉でした。
「もう俺を受賞させないほうがいいです。若い人にがんばってもらいたいから。若くなくてもいいんですけど、僕はもういろいろ取り沙汰されている人間なので、それよりは他の方にスポットライトを当ててもらったほうがいいのかなと」
料理レシピ本大賞という場は「料理レシピ本業界において必要」だと断言したうえで、こう続けます。
「自分が目立ちたいという気持ちは一切なくて、料理業界を盛り上げたいという気持ちしかない。僕以外の人がやってくれるなら、僕は全然いなくていいと思っている。今いないからやってます」
YouTubeで料理を発信し始めたきっかけも同じ。「料理の良さを伝えたい、それだけ」。伝えることに固執しているから時に過激な手段も取る、でもそれは信念があってこそのこと--。リュウジさんの発信スタイルの根っこは、驚くほどシンプルでした。
「家で食えばいい」と思っていた人が、なぜいま弁当なのか

料理研究家になって8年、「弁当本は絶対出さない」と公言してきたリュウジさん。理由は明快で、「家で作って、その場で食べるのが一番おいしいと思っていたから」。
その考えを変えたのは、時代の変化でした。
「コンビニもお弁当もどんどん値上げしていて、弁当需要が高まっている、そんななか僕が社会のために何ができるかと考えたときに--ちょっとおごりかもしれないんですが--僕が弁当を作ることで、『おかず1つでいいんだ』『こんなに材料が少なくてもいいんだ』というのが、皆さんの心に少しでも残ればいいなと」
「弁当は彩りや見栄え、栄養にも気を配ってちゃんとしてなくてはいけない」いつの間にか広まっていた“ルール”から解き放たれるためには、野菜炒めをのせるだけの弁当が、市民権を得るようになるべき。そのための本が『生きるための弁当』でした。大賞という結果については「そう思っていた方が多かったのかな、という感じ」と控えめです。
「こんな弁当を子どもに持たせていいのか」は“呪い”
本書には「ちゃんと生きるためにも、ちゃんと作るな」という言葉があります。「手抜き」「ズボラ」という言葉を使わず、すべて「工夫」と呼ぶこだわりも。この本で一番伝えたかったことは何かと聞くと、話は“呪い”に及びました。
「よく言われるのが、『こんな弁当を息子や娘に持たせていいのか』。この考え方は呪いではないでしょうか」
「世の中ではデコ弁とか華やかな弁当が『すごいね』と言われるけど、僕は別にそんなにがんばらなくていいと思っている。どうも夫に作る、子どもに作る、というときだけハードルが爆上がりするんです。じゃあ誰がいけないの?と考えたら、作る人も食べる人も悪くなくて、周りの目線なんですよ」
出汁は取らなくていい、うま味調味料を使っていい、インスタントでもいい、そう言い続けてきた8年の間に「だいぶ呪いは解けてきた」と感じている一方、弁当にはまだ相当な呪いが残っている、と続けます。
「『こういう弁当じゃないとダメ』という呪いを全部取っ払いたい。だからこの弁当本を作りました」
以前X上で議論になった「夫が絶賛」「子どもが残さず食べた」という他者評価によって料理を表現することについても、スタンスは一貫しています。
「作る人が一番偉いんです。食べる側が『こういうのがいい』と言うのはもちろんいい。でも作る側の気持ちも考えてほしい。だから老若男女問わず、全員が料理をできる状況になれば、作る人の気持ちは絶対にわかる。男性だから、女性だから、子どもだから、大人だから、そんなものは一切ないです」
「大賞は第一歩でしかない」--だから、バズらせる

本書の巻末には、YouTubeで公開した弁当レシピに寄せられた「救われた」という視聴者の声も紹介されています。その反響をどう受け止めているか。答えは一言でした。
「足りないですね。まだ全然足りない」
「僕の弁当でいいという認識がまだまだ足りない。その足がかりとして大賞をいただいた、と思っています。こう言うとレシピ本大賞を陳腐に捉えていると思われてしまうかもしれませんが、もちろんそんなつもりはありません」
「料理研究家としてはものすごく嬉しいです。ただ、日本中が『生きるための弁当がいいね』と思えるところまでやって、ようやく『ちゃんとできた』と言えると思っているので、そういう意味で第一歩でしかないですね。『こんな弁当でいいのか』という声がある限り発信しつづづけていきます」
では、呪いにとらわれている層にどうやって届けるのかという問いには、「バズらせるってことですね」と即答。
「もちろんバズらなかったものにもいいものはあります。でも悲しいながら世の中はバズらないといいものだと認識しないんです。だからそこに乗ります。乗って、ムーブメントにすることで世の中の認識を変えたいですね。影響力のある人間が率先しないと、多くの人はわからないから」
「リュウジがやっているんだから、弁当は簡単でいいんだ、電子レンジで作っていいんだ」と思えるようになれば、世の中はそうなっていくはず。「バズレシピ」という言葉を使うのは、誇りなのだといいます。
とはいえ、日々バズらせることを狙っていると、いずれそれが目的となってしまい、発信したかったことからズレることもあるのではないかと聞くと--
「料理という軸があれば、最初はズレていてもいいと思っています。僕のレシピにはお菓子を使ったものも、栄養価がそんなに高くないものもある。でもそれが入り口になるんです」
「料理の入り口に入らなければ、そこから考えることはできない。だから僕はその間口でありたいんです。僕の料理から入ったら、次はいろんな人のところに行っていい。『僕だけ見ろ』とは言っていません。でも今、登竜門になる人があまりいないので--だから僕がそのつもりで活動しています」
「僕を利用してください。利用されるの大好きなので」
本書には「好きじゃないことをがんばらなくても生きていけるようにしたい」という言葉もあります。レシピを届ける側として、これからどんな視点で発信していきたいのでしょうか。
「もっと料理を身近なものにしたいです。日本人にかけられた料理の呪いはすごく大きいと思っていて、飲食店に対する呪い、家庭料理に対する呪い、家事をめぐる男女間の呪い--いろいろあるんですよ」
「……本当はこういうこと言いたくないんですよね、ごちゃごちゃ言われるし(笑)。でも賛否両論を浴びてメンタルが保てる人間なんてほとんどいないなか、僕は保てるので、言いにくいことも言っていきます。いつ料理研究家生命が終わってもいいという覚悟で、間違っていたら言ってください、というスタンスで自分勝手に言い続けます」
みんなが言えないことを代わりに言っているのか問うと、返事は慎重でした。
「僕が世の中の代弁者だとは一切思っていません。僕が言いたいことを言っているだけですけど、ただ、少なからずみんなが思っていることを発信してはいると思います」
最後に、毎日の弁当作りや料理に疲れている読者へメッセージをお願いしました。
「正直言うと、みんなコンビニ弁当を買っていると思うんですよね。僕も会社員を10年やっていた間は、おにぎり1個とカップラーメンとか買っていました。じゃあなんでわざわざ作るのかといったら、満足感が得られたり、栄養バランスがよかったり、あとは節約のためだったり、昨日の夕飯の残りを使いきれたり、ということですよね」
「そういうときは、うまく僕を活用してほしいです。利用されるの、大好きなので(笑)」
いつものYouTubeやXなどで見る姿そのままに、ハイボールを掲げながら始まったインタビュー。呪いを解く、登竜門になる、利用されるのが好き--過激な言葉で注目を浴びることの多い彼ですが、その先にあるのは「もっとみんなに料理を身近に感じてほしい」という、まっすぐすぎるほどの目標でした。
書籍情報

『リュウジ式 生きるための弁当 LIFE HACK RECIPE103』
著:リュウジ
発行:ライツ社(2026年3月刊)
第13回料理レシピ本大賞 in Japan 2026 料理部門 大賞
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