【AKB48 20年の軌跡 光と影 #3】第1回選抜総選挙を徹底解剖! 2位発表の直前に起きた「前田コール」の奇観
【AKB48 20年の軌跡 光と影】#3
(2)「おニャン子クラブ」の二の舞いを回避した「順位付け」という競争原理はグループを飛躍的に活性化させた
2009年7月8日午後6時過ぎ、「神様に誓ってガチです」と銘打たれた第1回AKB48選抜総選挙の結果発表会場「赤坂BLITZ」(東京・港区)にジュラルミンケースが運び込まれた。そこには弁護士によって厳重に管理されていたという投票用紙と集計結果が書かれた封筒が入っていた。仕掛け人の秋元康は“ガチ”であることを徹底的に演出したのである。
ステージに選抜メンバーが登場し、新曲「涙サプライズ!」を披露。どの顔もひきつっているように映る。この日を境に、選抜メンバーでいられなくなるかもしれないのだ。続いて、それ以外のメンバーたちがあいさつを済ませるとステージから降り、観客席最前部に用意された椅子に座った。
7時に結果発表がスタート。メンバー、詰めかけたファンたちの緊張のボルテージが極限まで高まる中、進行役を務めるAKB48劇場支配人の戸賀崎智信が最初の封筒にハサミを入れた。それは表に21位と書かれた封筒だった。22位以下とは“天国と地獄”とまではいわないまでも、待遇に雲泥の差があるのだ。21位より上位は選抜メンバーとして次の新曲「言い訳Maybe」を歌う権利が与えられる。
■安泰な者など誰一人いない
21位にすべり込んだのは倉持明日香。会場からは歓声とともにざわつく声が起きた。速報(6月24日)では14位、中間発表(7月1日)では15位。倉持自身、こんなにギリギリになるとは思っていなかったのだろう。その表情は戸惑っているように見えた。前回の集計から順位にかなり変動があるのは間違いなかった。安泰な者など誰一人いないのだ。発表を待つメンバーたちの鼓動が聞こえてくるようだった。あまりに残酷な光景は秋元の狙いである。
次の注目は12位までに入れるかどうか。上位12人は「メディア選抜メンバー」として、テレビでのプロモーションに優先的に参加できる。速報11位、中間発表12位だった峯岸みなみは16位まで順位を下げていた。12位に入ったのは秋元才加。中間発表23位からの大躍進である。同18位だった佐藤亜美菜も8位に入る健闘をみせた。
速報と中間発表で3位を守っていた高橋みなみが5位に落ちていたのは意外だったものの、上位の顔ぶれはおよそ予想通り。残すは1位と2位だけになった。絶対的エースの前田敦子と追い上げ著しい大島優子の一騎打ちである。速報、中間発表とも1位前田、2位大島となっていた。票数は4割ほど前田が上回っており、この差を覆すのは難しいように思われた。
司会の戸賀崎が2位の封筒にハサミを入れた時だった。会場から前田コールが沸き起こった。大島の逆転を期待するファンたちの声だった。この悪意に満ちたコールは前田にとって気分のいいものではなかっただろう。
「第2位、大島優子!」
戸賀崎が告げると、大島がマネジャーに抱えられながら舞台袖から姿を現した。体調を崩していた大島はこの日、欠席する予定だったが、AKB48にとってターニングポイントとなる場面になんとか駆けつけたのだ。
トップの前田の得票数は4630票。のちに指原莉乃が20万票を超えたことを考えれば、まだ全然少なかったが、これをきっかけに選抜総選挙は国政選挙をも凌駕する一大イベントに発展していくのである。(敬称略)
