ドイツで大躍進の政党・AfDを「極右」と決めつけていては理解できない「欧州の不満の本質」
実態はCDUの失墜
9月6日にドイツ東部のザクセン・アンハルト州で州議会選挙が行われ、「極右」と評されることの多い「ドイツのための選択肢(AfD)」が2021年の前回選挙の得票率の20.8%から倍以上の43.8%もの得票となり、第一党となった。今回の選挙の投票率は78%に達しており、決して低投票率の中でAfDが相対的に優勢になったというわけではない。幅広い有権者の支持が、間違いなくAfDに集まったのである。
AfDが支持を集めているのは、このザクセン・アンハルト州に限られるわけではない。オーストラリアのSBS Newsが「世論調査によると、ドイツ全土的に見てもAfDは今やドイツで最も支持率の高い政党である」と報じたように、今やドイツ全土で支持を集めている。AfDについては、メディアが「極右政党」だと報じていることから、現実離れした無茶苦茶な考えを語る一部の例外的なグループのようなイメージを持っている人もいるだろうが、それは現実ではないのだ。
ここで注目すべきは、これまで保守政党として大きな支持を得てきたキリスト教民主同盟(CDU)の支持率が、前回の37.1%から19.9ポイントも下がって、17.2%に落ち込んだところだ。前回の半分以下となる大惨敗だ。ドイツを代表する保守政党の地位はこれまではCDUが担ってきたが、CDUが保守政党として認識されなくなり、その地位がAfDに移行したことを象徴する出来事だったとも言える。9月20日にはメクレンブルク・フォアポンメルン州議会選挙とベルリン州議会選挙があるが、メクレンブルク・フォアポンメルン州議会選挙においてもAfDは4割程度の議席を取るのではないかと見られている。
こうした動きは、CDUを率いるメルツ首相にとってまさに大打撃だ。CDUの中には、不人気なメルツ首相率いるCDUを見限って、何らかの形でAfDを支援する側に回った方がいいのではないかと考える動きも出ている。単純に乗り換える選択肢も一応ありうるが、それよりもCDUから離党してAfDを無所属の立場から支援するといった動きが広がるのではと見られている。
上=EUからのキレイゴト押しつけへの反発
今回の選挙でAfDは大きく票を伸ばしたが、州議会の議席の過半数には3議席届かず、連立相手がいないと政権を握ることはできない。こうした中、主要政党は軒並みAfDとの連立を拒否している。
唯一AfDとの連立を否定していないのが、「極左」と評されることの多い「ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)」である。BSWは、ドイツ社会で知名度のあるドイツ連邦議会議員のザーラ・ヴァーゲンクネヒトの名前を前面に出した割と新しい政党で、彼女たちは元々はドイツを代表する左派政党である左翼党のメンバーだった。
表面的に見ると、「極右」扱いされることの多いAfDと「極左」扱いされることの多いBSWが連立を組むことなんてありえるのかと思うかもしれないが、意外にも両党の根っこの部分の問題意識は似通っている。
BSWは、左翼党が気候変動、ジェンダー平等、移民差別反対などの理念ばかりを追いかけて、ドイツの労働者層の経済的利益を後回しにしていることに不満を持つ人たちが作り上げた政党だ。
AfDは、EUが押し付けてくる政策を既存政党が当然のように優先する中で、ドイツ国民のことがおざなりにされている既存の政治に危機感を持ち、ドイツの政治はまずドイツ国民のためでなければならないという主張によって生まれた政党である。
両政党は上から押し付けられてくるキレイゴトに素直に従うのをよしとせず、そんなことよりもドイツ人の現実の利益を優先して考えるべきなのだという、似たような問題意識から出発している政党なのである。
「反移民」はもはや「極右」ではない
ところでAfDはこれまでどうして極めて危険な「極右」政党扱いされてきたのだろうか。それは、AfDがEUの理念に反して移民に対して極めて厳しい姿勢を取っていることが、かつてのナチスドイツのユダヤ人排斥と変わらないものだと見なされたからだ。私にはこの受け取り方は相当に悪意のあるもののように感じられたし、AfDにしてもそう感じてきた。そして、大量の移民が押し寄せ、社会のあり方も激変する中で、移民に対する見方は今やヨーロッパの中でも大きく変容した。
イタリアの「極右」政党として位置付けられた「イタリアの同胞」を率いるメローニ首相は、首相選出当時は大いに警戒されたが、今やヨーロッパを率いる重要なリーダーとして認められるようになった。彼女が主張する反移民政策は、EUの政策の中にもかなり反映されるようになってきた。
デンマークの中道左翼政党「社会民主党」率いるフレデリクセン首相さえもが、今やメローニ首相の反移民政策に賛同するに至った。こうして見た場合に、AfDが掲げる反移民政策は、今やEU内においても極端な主張だとは言えない状況にあり、AfDを今なお危険な「極右」として扱い、政権参加や法案成立の協力を頭から排除する「防火壁」戦略を続ける根拠は失われてきている。
そもそもドイツの既存政党がこぞってこの「防火壁」戦略を採用することによって、AfDの内部では自分たちが不当に弾圧されているとの思いを募らせ、その団結を強める役割も果たしてきた。現実の政治で結果を残せない既存政党の政治が続く中で、既存政党に対する不信任からAfDを支持する勢力をどんどん強めていくことにもなった。BSWのザーラ・ヴァーゲンクネヒト党首は「支持率40%に達する政党を恒久的に排除し続けるのは非民主主義的だ」と主張しているが、まさにその通りではないか。
そしてこうした主張と同様の主張が、メルツ首相率いるCDUの中でも広がっており、メルツ首相が「防火壁」戦略を維持しようとすれば、CDU所属議員が次々とCDUから離脱しかねず、メルツ政権自体が崩壊する危機さえもが広がっているのである。
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