「まだ運転できない」明るみになるハジャーの窮状 魂の10位入賞を遂げた角田裕毅のF1継続参戦への影響は不可避か

写真拡大 (全3枚)

難所のモンツァで躍動した角田(C)Getty Images

渾身の10位入賞で評価はどう変わる?

 自身にとっての“難所”で披露した激走は、さらなる期待を膨らませた。

 現地時間9月6日、F1の今季第13戦となるイタリアGPの決勝がモンツァ・サーキットで行われ、15番手からスタートした角田裕毅は、怒涛のジャンプアップで10位入賞。レース後に違反を疑われたが、スチュワードからのお咎めはなく、昨季のカタールGP(第23戦)以来となるポイント獲得を果たした。

【動画】新型マシンで会心の走り! 角田裕毅の衝撃オーバーテイクを見る

 危機を回避しての躍進だった。シャルル・ルクレール(フェラーリ)のクラッシュによる赤旗中断から再開された6周目、出走ポジションだった15番手から一つだけ繰り上がっていた角田は、勘違いをし、そのまま15番に入ろうとした。しかし、途中で14番に入らなければならないことに気がつき、進路を変更。咄嗟の判断であったためにマシンを斜めに停車させた。

 この“斜め停車”が「スタート手順の違反」に当たる可能性を追求したスチュワードはレース後に2時間近い審議が実施。最終的に「レーシングブルズ(角田)のマシンはグリッドボックス内にあり、他の誰にも影響を及ぼしていなかった」と判断を下した。

 これが角田にとっては不幸中の幸い。それほど中断後の彼が見せた走りはまさに会心だった。

 再開直後に一気に11番手まで順位を上げた角田は、7周目にニコ・ヒュルケンベルグ(アウディ)、8周目にオリバー・ベアマン(ハース)をオーバーテイク。瞬く間にポイント圏までジャンプアップ。自身が過去5年で3度のリタイアを強いられてきた“鬼門”で魂のこもった気迫の走りを見せつけた。

 レース前には「本気で2027年のF1グリッドにシートを確保したいのであれば、何か特別なパフォーマンスを披露する必要がある」(英メディア『F1 OVERSTEER』)とも指摘されていた。その中で目に見える“結果”をチームにもたらしたのは、十分なアピールになったと言えよう。

 だからこそ、注目されるのは「ふたたびチャンスが与えられるかどうか」。

 本来ならば、角田はレッドブル、そして姉妹チームであるレーシングブルズのリザーブ兼テストドライバーである。F1シートが与えられている現状も今夏のサマーブレイク期間中に左手首にひびが入り、現在は治療中のアイザック・ハジャー(レッドブル)が復帰すれば、話は一変する。リアム・ローソン(レーシングブルズ)がレッドブルのシートから戻り、ところてん式に押し出される形となるからだ。

左手首を痛め、リハビリに専念しているハジャー(右)の現状をメキース代表(左)が包み隠さずに語った(C)Getty Images

メキース代表が語ったハジャーの「今」

 つまり継続的に出番が与えられるかはハジャー次第となる。では、その現状はどうなのか。

 このイタリアGP終了後に、英衛星放送『Sky Sports』などのインタビューに応じたレッドブルのローラン・メキース代表は「今はまだ運転できない状態で、『幸せだ』とは言えない」と証言。次回のスペインGPが行われるマドリードの市街地コースは22か所のコーナーと強い傾斜が存在する難所。ドライバーの身体的負担が大きくなる影響を考慮し、慎重にリハビリをさせる意向を仄めかしている。

「我々にとっての最優先事項は彼の回復だ。無理をしてリスクを冒す理由はない。彼はまだ非常に若く、車を運転するたびに上達している。だからこそ、100%の状態で復帰することが彼にとって重要なんだ。必要なら時間をいくらかけてもいい。彼の感覚と医師の指導を信頼し、回復させていくよ」

 メキース代表の証言が確かなら、スペインGPはおろか、9月24日に始まるアゼルバイジャンGPもハジャーの離脱は避けられないようにも思える。となれば、すでに幹部に強いインパクトを与えている角田にアピール機会が舞い込む可能性も高まっていく。

 次戦に向けて「チャンスがあるなら、もちろん準備はできている」と意気込む日本の天才ドライバーは、快進撃をどこまで続けられるか。複数チームからの関心も報じられている来季のF1キャリアを含めて目が離せない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]