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物価高が続く中で、一時期の高騰から一転して下落傾向を見せているコメの価格。消費者にとってはうれしい価格下落ですが、生産コストの高騰に直面するコメ農家からは悲鳴の声が上がっています。

【グラフで見る】安くなったコメ価格だが…4年前と比べると?

そうした中、政府は去年大量に放出した備蓄米について、21万トンの買い戻しを実施すると発表。なぜ今なのか?専門家への取材をもとに解説します。 

◎折笠俊輔氏:流通経済研究所・主席研究員
◎山下一仁氏:武蔵野大学国際総合研究所・研究主幹

“コメ余り”は少し前から言われていたが…なぜ今安く?

そもそも、なぜこのタイミングでコメの値段が下がり始めているのでしょうか。

背景にあるのは、去年の米不足を受けた増産や、高騰による需要減でコメ自体が余り始めていたことです。コメの民間在庫量(玄米ベース)は6月末時点で243万トンと過去最大量となっています。

しかし、今年秋に収穫される新米の出来は7・8月頃まで分からず、市場には「不作になれば去年のコメが高く売れる」との思惑から価格を維持する動きがありました。

流通経済研究所の折笠俊輔主席研究員は、秋以降の新米が多く獲れそうだという見通しが立ったことで、去年のコメが一気にダブつく懸念が生じ、価格を下げてでも売り切る動きへと転じたとみています。

農水大臣「タイミングは今が適切」 備蓄米を買い戻す政府の狙いとは

そうした中、1日、政府は去年大量に放出した備蓄米について、去年とれたコメ21万トンの買い戻しを実施すると発表。

大幅に減った備蓄米の水準を回復するためと説明していますが、根底にあるのはコメ価格の下落に対する「強い危機感」とみられます。

なぜ今のタイミングなのか?MBS山中真解説委員が鈴木憲和農水大臣に“真意”を直接聞くと…

(鈴木憲和農水大臣)「令和の米騒動と言われる、スーパーマーケットの棚に主食であるコメが並んでいないという事態は、もう二度と起こしません。100万トン水準まで回復をするということで、このタイミングで買い戻しを判断させていただきました」
―――もう少し後では問題がある?
(鈴木憲和農水大臣)「このタイミングが適切だったと思います」

「あと1~2か月早くても良かった」「もっと遅くていい」専門家でも意見割れる

しかし、政府のこの決断に対しては、専門家の間でも捉え方が大きく分かれています。

折笠氏は「今年の新米の価格の下落を止めたいという政府の思惑は見える」としつつも、タイミングについては疑問を呈します。

生産者保護の観点では、農家への支払額(概算金)が決まる前など「あと1~2か月早く決断しても良かったのでは」と指摘しました。

一方で、「タイミングは最悪」と真っ向から批判するのは、武蔵野大学・国際総合研究所の山下一仁研究主幹。

価格が今後さらに下がる可能性がある中で、高値のうちに買い戻すのは「税金の損失になる」との見解です。

山下氏は「コメ価格が下がるのを待って買い戻すべき。今慌てて備蓄米を買い戻す必要は全くない」と主張しています。

小規模農家と大規模農家の歪み…コメ政策めぐるジレンマ

価格下落をどこまで許容すべきかという問題の根底には、農家の「数」と「生産量」のいびつな構造が存在します。

日本の農家は8~9割が小規模農家。その生産量は全体の2~3割ですが、生産コストは高くなりやすい状況。一方、1~2割の大規模農家はITやAIを活用して効率化を進めており、低コストでの生産が可能です。

小規模農家に合わせた価格設定にするとコメ価格は上げざるを得ません。一方で大規模農家に合わせると価格は下げられるものの、大多数の小規模農家が立ち行かなくなるというジレンマがあるのです。

今後のコメ政策「大規模農家に農地を集約すべき」と専門家

山下氏は、消費者を最優先とし、大規模農家に農地を集約していくべきだと提言。「政治的思惑で小規模農家を守っているように見える」とも指摘します。

これに対し折笠氏は、長期的には山下氏の意見に同意しつつ、今すぐの集約は難しいといいます。

無理な集約により小規模農家の生産量(2~3割)がなくなれば、一時的な生産量減少による価格高騰が起こる可能性があると指摘し、地権者の感情の点からも、時間をかけて徐々にシフトしていくべきだと述べました。

また両氏ともに、平常時はコメを余らせて輸出に回し、国内で不足が生じた際に国内供給へ回すといった柔軟な仕組みづくりが長期的には必要であるという点では一致しています。

消費者の「安さ」への期待と、生産者の「営農維持」。日本のコメ政策は今なお難しい舵取りを迫られています。

(2026年9月3日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『山中プレゼン』より)