ニデック品質不正、創業者・永守重信氏の「利益至上主義」が生産現場にまで浸透…改革は前途多難
不正会計に続いて明らかになったニデックの品質不正を巡る調査委員会の報告書では、創業者・永守重信氏の「利益至上主義」が、会計部門などだけでなく生産現場にまで浸透していた実態が浮き彫りになった。
不正が起きた背景には、永守氏を起点とする業績向上への圧力を、幹部が緩和することなく現場に伝えたことがあるとしている。(金井智彦)
報告書は、認定した品質不正844件のうちの「重要品質事案」60件の代表例として、〈1〉出荷検査データを実際の測定値と異なる数値に書き換え〈2〉顧客の承認を得ることなく不適合となった部品の一部を再利用〈3〉含有化学物質を確認せず、顧客要求に適合する旨を連絡して製品を出荷--といった行為があったと指摘。
調査委はこれらの行為について、「個別の評価は避けるが、不正競争防止法などに違反する可能性がある」とした。

これらの行為は、永守氏を起点とする苛烈な業績向上への圧力を感じた幹部が、そのまま現場に伝えた構図に起因するとし、60件のうち、グループの役員や拠点長の関与が20件程度確認されたとした。トップダウンで数字だけを現場に押しつけ、各拠点で「コスト低減のためには仕方がない」との趣旨で不正が常態化していったと分析。
拠点によっては、不正が業務の中に定着し、代々受け継がれていたケースもあり、調査委によるアンケート調査では、約9万人のうち24・9%が「安全性や性能に問題がなければ法令や契約の違反にはならないと理解していた」と回答した。
4日の記者会見で、調査委員長の伊丹俊彦弁護士は「会計不正と同じ問題が横たわっている。品質保証部門の独立性の不十分さなど固有の問題もある」と述べた。
ニデックOBは「現場の採算性向上は永守氏自身が視察に来るたびに口酸っぱく言っていた」と明かす。顧客が工場に来た際に検査の改ざんが発覚し、苦情が来たこともあったが内々で処理していたという。
永守氏は1973年に日本電産(現ニデック)を創業し、一代で売上高2兆円の世界的なモーター大手へと育てた。しかし、永守氏自身も聞き取り調査で、会社の規模に対して品質管理に携わる人員の補強が追いついていなかったことを認めている。
岸田光哉社長は調査委とは別に開いた会見で「しっかり反省しつつ、より良くなっていくために風土、制度、プロセスの改革にまい進していきたい」と強調した。
改革 前途多難
ニデックは調査委の調査報告書を受け、今後人事処分を行った上で改革を進めるとしているが、前途は多難だ。
品質や会計不正の調査委員会とは別に、ニデックは外部弁護士らによる役員責任調査委員会を設置しており、永守氏や岸田氏を含む現旧の取締役らの法的責任を調査している。
さらに、複数の株主から永守氏ら現旧役員に損害賠償請求訴訟を起こすよう求める提訴請求書も受け取っている。ニデック側が提訴しない場合、株主は会社法に基づき、株主代表訴訟を起こす方針だ。
不正会計については、証券取引等監視委員会が金融商品取引法に基づき調査を進めている。課徴金などの行政処分を見据えた調査の一環で、悪質な違反が見つかれば刑事告発に至る可能性もある。
東京証券取引所からは内部管理体制に問題がある「特別注意銘柄」に指定されており、10月末までに改善の道筋を示せない場合、最終的に上場廃止となる恐れがある。
