陰茎がんの進行サインとは?“そけい部の腫れ”など注意すべき「3つの症状」
初期の変化を放置すると、陰茎がんは皮膚の奥深くへと広がり、リンパ節や遠くの臓器へも転移していく可能性があります。病期(ステージ)が上がるにつれてどのような症状が現れるのでしょうか。発見のタイミングが治療の選択肢や予後にどれほど影響するかについても、詳しく解説します。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科
陰茎がんが進行したときに現れる症状と病期の関係
初期の小さな異変を放置してしまうと、陰茎がんは皮膚の表面だけでなく内部の組織や周囲のリンパ節へと徐々に侵入(浸潤)していきます。病期(ステージ)が進むにつれてどのような身体症状が現れるのかを理解しておくことで、早期受診の重要性がより明確になります。
病変の広がりとともに現れる症状の変化
陰茎がんが進行すると、最初は数ミリ程度だったしこりや傷が次第に大きくなり、盛り上がったり深く落ち込んだりして陰茎の形そのものを変形させていきます。がん細胞が増殖して正常な組織の血流を阻害すると、皮膚や肉の一部が死んでしまう壊死(えし)が起こり、膿(うみ)や強い悪臭を伴う分泌物が生じるようになります。また、がん組織は脆(もろ)いため、下着に血がつくような出血が日常的に繰り返されるようになります。
がんの進行具合は「病期(ステージ)」という段階で表現されます。
ステージI(早期): がん病変が陰茎の皮膚や上皮下の浅い組織にとどまっている状態です。
ステージII: がんが陰茎の奥深くにある海綿体(かいめんたい:勃起に関わるスポンジ状の組織)や尿道にまで浸潤(侵入)している状態です。
ステージIII: がんが陰茎内部に広がるだけでなく、太ももの付け根にある「そけい部リンパ節」へ転移し、リンパ節が硬く腫れ上がっている状態です。
ステージIV: そけい部だけでなく骨盤の中の深いリンパ節にまで転移が広がったり、さらに遠くの臓器(肺、骨、肝臓など)へ遠隔転移(えんかくてんい)している状態です。
そけい部のリンパ節に転移すると、足の付け根(股の関節付近)にコリコリとした硬いしこりを触れるようになります。リンパ液の流れが滞ることで、片方の足全体が大きくむくむ「リンパ浮腫(ふしゅ)」という症状が現れることもあります。
さらに、がんが陰茎の真ん中を通る「尿道」に浸潤して圧迫すると、排尿障害(はいにょうしょうがい)を引き起こします。「尿の勢いが急に弱くなった」「おしっこをするときに強い痛みを感じる」「尿が途中で途切れる、まったく出なくなる(尿閉)」といった著しい生活の質の低下を招く症状が表れます。これらの症状は前立腺肥大症や尿路感染症でも起こりますが、陰茎の皮膚に変化がある状態で排尿障害が出ている場合は、がんの進行が強く疑われます。
早期受診が予後(よご)に与える影響
陰茎がんは、発見されたタイミング(ステージ)によって、治療の選択肢や治療後の経過(予後)が決定的に大きく異なります。
病変が皮膚の表面近くにとどまっている非常に早い段階(ステージIなど)で発見できれば、放射線治療やレーザー治療、あるいは病変部分だけを小さくくり抜く手術(部分切除術)によって、「陰茎の形や機能を可能な限り残す治療(温存療法)」を選択できる可能性が十分にあります。陰茎が温存できれば、治療後もこれまでどおり立って排尿することができ、性的機能を維持することも期待できます。
一方、発見が遅れてがんが深く浸潤していたりリンパ節へ転移している場合は、がんを確実に取り除くために陰茎の大部分または全体を切除する手術(陰茎全切除術)や、そけい部のリンパ節をごっそり摘出する手術(リンパ節郭清:かくせい)が必要となります。陰茎を全切除した場合は、会陰部(睾丸と肛門の間)に新たな尿の出口(新尿道口)を作る手術を行うため、座って排尿する生活スタイルへの変更を余儀なくされます。
国立がん研究センターなどの公的データや各種臨床研究によると、陰茎がんの5年相対生存率(治療開始から5年後に生存している割合)は、リンパ節転移のない早期段階では80~90%以上と非常に高い治癒率を示します。しかし、そけい部や骨盤内のリンパ節に広範囲な転移がある場合は生存率が低下し、他の臓器に転移した段階では厳しくなります。異変を感じたときに「恥ずかしい」「大事にしたくない」と受診を先延ばしにすることは、心身の負担を増大させる最大の要因です。
まとめ
陰茎がんは、早期に発見して適切な治療を受けることで、治癒を目指せる可能性がある疾患です。初期症状のサインを見逃さず、気になる変化があれば早めに泌尿器科を受診することが何より大切です。リスク因子を持つ方は定期的な自己確認を習慣とし、不安な点があれば医療機関に相談することをお勧めします。治療費についても高額療養費制度などの支援制度を上手に活用することで、経済的な負担を軽減できます。「早めの受診」と「専門の医師への相談」が、陰茎がんから身を守るための確かな選択です。
参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス「陰茎がん」
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
国立がん研究センター がん情報サービス「がんの統計」

