AI時代にラブレター代筆業 川崎・小林さん「話を聴くことに価値」300通超える思い伝え

思いを託した言葉を紡ぐ─。川崎市宮前区の小林慎太郎さん(47)は会社員として働く傍ら、本人に代わって手紙の文面を考える「ラブレター代筆業」を営んでいる。告白、復縁、感謝、謝罪─。これまでに300通を超える代筆を手がけ、さまざまな気持ちを文章で表してきた。生成AI(人工知能)で瞬時に文章を作成できる時代だからこそ、「書くだけでなく、話を聴くことがこの仕事の価値なんです」。じっくりと向き合い、心のうちの感情を言葉に落とし込む。時間がかかるからこそ、伝えられる思いがある。
「コミュニケーションが苦手で恥ずかしかったから」。手紙との付き合いは小学生の頃に始まった。大学生や社会人になっても好意を持っている相手への思いは面と向かって伝えず、紙に記して届けた。「相手の顔を見なくてもいい」手紙は、自分にとって最も自然に気持ちを伝えられる手段だった。
きっかけは挑戦心だった。会社員として順調にキャリアを重ね、結婚や子育ても経験する中で、「得意なことを生かして、新たなことをやってみたい」と考えるようになった。「ラブレターをもらってみたい」という周囲との何げない会話から「今も手紙の需要はあるかもしれない」と思い立ち、2014年に35歳で代筆業を始めた。
当初はラブレターを想像していたが、初めての依頼は20代の男性からけんかをしてしまった友人への謝罪の手紙だった。男性は事前に文面を用意していたが、体が不自由で文字を書けず、代わりに筆を取った。「恋愛にまつわる話だけでなく、思っていたよりシリアスな仕事かもしれない」と実感した。
