客数増と売上高増加を同時に達成(Ned Snowman - stock.adobe.com)

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西友の復調が鮮明になってきました。既存店の売上高は10カ月連続で前年同月を上回り、2026年6月期の売上高は期初計画を1.8%上回る4609億円で着地しています。客数の回復も顕著で、前年同月比で10%以上の伸びを見せました。
西友は2025年にディスカウントストア大手のトライアルホールディングスに買収された経緯があります。好調の背景にはどのような施策があったのでしょうか。

◆トライアルとの融合で「売上1.4倍」に

トライアルは九州発のディスカウントストア運営会社で、西友を買収する以前は東京に店舗を持っていませんでした。M&Aによって人口集積地である関東エリアや関西エリアで事業基盤を確立し、一気に全国チェーンへと駆け上がった格好です。

トライアルの2026年6月期の売上高は1兆3471億円に達しました。西友を連結子会社化する前の2025年6月期は8038億円でしたから、瞬く間に1兆円企業へと成長を遂げた計算になります。

同社の強みは長年培ってきたデジタル技術にほかなりません。創業当初から発注などの重要業務を担うシステムを自社で開発し、マーケティングや店舗の効率化を推進。顧客に新しい購買体験を提供できる背景には、まさにこの技術的強みがあるからです。

西友はかつてセゾングループの中核を担う存在でしたが、バブル崩壊後はアメリカの流通大手ウォルマートや楽天、金融大手KKRなどへ親会社が転々としてきました。そのため、経営不振というイメージを持たれがちですが、実態は異なります。

KKR主導による不採算店の閉鎖や地域撤退などを進めた結果、業績は着実に回復傾向を辿っていました。

一般的なスーパーの平均営業利益率が1〜2%程度である点を踏まえると、買収前の時点で高い収益力を取り戻していたわけです。とはいえ、3800億円という巨額の買収額を考えると、さらなるシナジー効果の創出は避けられない課題でした。

そこでトライアルは、新業態となる「トライアル西友 花小金井店」を2025年11月にオープンさせています。既存店を転換したこの店舗は、転換後の売上高が約42%増加し、客数も36%増えるという目覚ましい成功を収めました。

◆デジタルだけに頼らないのがミソ

「トライアル西友 花小金井店」では、専用のプリペイドカードをカートに登録してバーコードを読み取る「Skip Cart」を採用しました。専用ゲートを通過するだけで、キャッシュレス決済が完了するため、レジ待ちのストレスが大幅に軽減される仕組みです。購買体験の質を向上させる画期的な取り組みといえるでしょう。

もちろん、デジタルによる効率化だけでなく、スーパーとしての本質的な強みも磨き上げています。たとえば精肉部門を店内加工へ変更したことで、利用者は調理したての鮮度の高い肉を購入できるようになりました。

スケールメリットを活かした商品展開も強力な武器となります。トライアルで人気の生魚を使った寿司を導入したほか、精肉部門では一頭買いによって希少部位の提供も開始しました。

さらに総菜コーナーには、同社名物の「ロースかつ重」「たっぷり玉子サンド」といったキラー商品を投入しています。「トライアル西友」は、まさにM&Aによるシナジーを極限まで引き出した好例といえます。

デジタル技術の活用にとどまらず、店内調理や寿司の導入といったアナログ領域の大改革を断行した点に見逃せない勝因がありました。トライアルはすでに同タイプの店舗を3店出店しており、今後3年間で累計30店舗を転換していく計画です。

◆購買意欲を高める仕掛けが盛りだくさん

集客プロモーションにおいても、値ごろ感を前面に押し出した施策を継続する構えを見せています。加えて2026年3月から首都圏の西友に音声付きデジタルサイネージ「インストアサイネージ」を順次導入し始めました。