【 植村 華音】「ドラえもんや平原綾香ソングが……JR南武線と仙石線で廃止」JR東日本から”駅メロ”が消えていく「心寂しい理由」
2026年3月までに相次いで廃止されていた
駅から「ドラえもんの歌」も「川崎フロンターレ応援歌」も消えた……。
ご当地「駅メロ」が廃止の方向に向かっている。
列車が離発着する際に駅で奏でられる、地域ゆかりのメロディで、地域住民の熱意で導入された駅も多い。だが、JR東日本は、車両のワンマン運転化に伴い、順次、廃止して行く方針だ。すでに南武線(川崎〜立川)、仙石線(仙台〜石巻)で2026年2月末までに相次いで廃止、路線ごとのオリジナルメロディに切り替わり、惜しむ声が広がっている。
宙に浮いてしまった「地元愛」、経営効率化とは両立しないのかー。
JR東日本の喜勢陽一社長は8月4日、日本記者クラブでの会見で、「駅メロ」廃止について言及した。
「ご愛顧をいただいているのは非常にありがたい。一方で、鉄道をサステナブルに将来につなげていくには、効率化、生産性の向上は必須の課題になる。そういう中でワンマン化を進めると、駅のホームで発車メロディを出すわけにはいかなくなり、ご当地ごとではなくて、統一をさせていただく。非常に心苦しいことではあるがご理解を頂きたい」
ドラえもんと平原綾香の曲が消えた
JR東日本は経営の効率化を目指しており、その一環がワンマン運転導入だ。
発車メロディは車掌がホームに降りて、メロディを奏でるボタンを押すことで続いてきた。だがワンマン運転になれば車掌は不要、ボタンを押す人がいなくなる。JR東日本は都内を走る山手線で、2035年までに運転士不要の、AIも活用した自動運転化を目指しており、効率化の流れは避けようがない。
「ご当地駅メロ」は、地域にゆかりのあるアーチストやスポーツに関連したものも多い。南武線の登戸駅や宿河原駅(川崎市)では「ドラえもん」のアニメソングが廃止、近くに原作者の藤子・F・不二雄氏の美術館がある縁で子供たちにも親しまれていた。
武蔵溝ノ口駅(同)では、平原綾香さんの「Jupiter」が2024年7月から流れていた。川崎市政と、平原さんの出身校で同駅が最寄りの洗足学園の、それぞれ100周年を記念したものだった。平原さん自らアレンジしてサクソフォーンで演奏・録音した3つのバージョンがあった。駅メロ導入の初日には、駅構内で洗足学園の後輩たちも共演したミニライブも開催し、「駅始まって以来の人出」(関係者)となるほど盛り上がっていた。だが、2025年3月のワンマン化に伴い9か月余りで幕を下ろす。
武蔵小杉駅(同)ではJ1「川崎フロンターレ」のサポーター応援歌「ナンバーワン野郎!」が廃止。本拠地の競技場の最寄り駅で2014年2月から使用されていた。地域住民たちの9年越しの願いが叶ったものだった。
2006年頃から「駅メロ」設置に向けた動きがあり、実行委員会が結成され、町内会、商店街などの署名を集め、JR側が応じた。この曲はサポーターの応援歌として知られ、「フロンターレを知らなくても、この曲が発車メロディで流れれば『イカした町じゃん!』と思ってくれる人が多いという意見が大半で決定」、クロマニヨンズ側も快諾していた(サイト「フロンターレ日記」から)。
「地元の愛」の行方
仙石線では宮城野原駅(仙台市)で、プロ野球「東北楽天ゴールデンイーグルス」の球団歌「羽ばたけ楽天イーグルス」が2010年3月から使用されていた。こちらも本拠地のスタジアムの最寄り駅という縁だった。あおば通駅(同)では、仙台のご当地ソングである「青葉城恋唄」をアレンジしたメロディが流れていた。
「駅メロ」に託されていた「地元愛」はどこへ行けばいいのか。一つの答えが「Jupiter」にある。
廃止後の昨年3月から、川崎市の高津区役所で職員に終業を知らせるメロディとして夕方5時15分、短いフレーズが流れている。区役所が平原さんと洗足学園の了解を得て始めたという。注意して聞かなければそれだとはわからない。だが、レガシーは継承された。今後の一つのヒントとなりそうだ。それにしても、ご当地駅メロくらい、AIの力で何とかならないものだろうか。
【後編を読む】上りは「Desir―情熱―」で、下りは「セカンド・ラブ」……中森明菜の名曲が清瀬駅の”駅メロ”として流れる”心温まる理由”
【後編を読む】上りは「Desir―情熱―」で、下りは「セカンド・ラブ」……中森明菜の名曲が清瀬駅の”駅メロ”として流れる”心温まる理由”
