「NDC男子」が本の世界へご案内、背表紙の分類番号をイケメンキャラ化…全国の図書館で採用・小説にも
図書館の蔵書の背表紙に分野別に数字をふる「日本十進分類法」(NDC)。
その小難しさを解消し、楽しく本を探してもらおうと、徳島県の図書館が各分野を10のイケメンキャラクターに擬人化し、話題を呼んでいる。その名も「NDC男子」。全国120以上の図書館や学校で採用され、NDC男子をモチーフにした小説まで出版される人気ぶりだ。(徳島支局 三塚萌絵)
図書館の本にはNDCに従い、0〜9で始まる番号が与えられている。0類は百科事典や雑誌を含む「総記」、1類は哲学、2類は歴史、3類は社会科学などだ。例えば9類の文学から、93は英米文学、932は英米文学の戯曲――と細分化される。
図書館にとって蔵書を管理しやすく、検索端末を持たない学校の図書室などでも利用者が分類表を見て本を探せるメリットがある。
NDC男子の生みの親は、徳島県吉野川市立鴨島図書館の司書、井上詩苑さん(29)。調べることと密接な0類・総記は眼鏡男子、4類・自然科学は白衣姿、9類・文学は昔の文豪を思わせる羽織袴(はかま)――。特技のイラストを生かし、少女漫画風のタッチでキャラクターを描いた。
図書館には中高生が自習に来るが、本を借りる生徒は意外に少ない。井上さんは「もっと本を手に取ってほしい」と2021年12月頃から構想を練った。
キャラクターは22年の「春の読書週間」に初登場。NDC男子の説明書きを配布し、中高生向けの書棚にキャラクターをちりばめて周知した。本を多く借りた利用者に贈るしおりやストラップ、缶バッジを製作。好きなキャラクターに投票する「総選挙」も行った。
その結果、同館では中高生への貸し出しが以前の2倍に。県立名西高校2年の女子生徒(16)は「NDC男子の影響で図書館に来る回数が増えた。分類を覚えて本を探すのが楽しい」と笑顔を見せる。
取り組みは図書館業界で話題となり、キャラクターは鴨島図書館を飛び出した。同館によると、現在、東京や大阪など32都道府県の図書館や学校の図書室で採用されているという。
東京都渋谷区立神宮前小学校では今年度、NDC男子を図書室に導入し、書棚にイラストを並べている。読書週間に本を借りた児童への景品として作ったキャラクターのしおりが好評で、図書室の利用者が以前の1・5倍に増えたという。吉田まり奈・司書教諭(41)は「キャラクターをきっかけに、読書や図書室に親しむ子が出てきていてうれしい」と話す。
井上さんは高校生の頃、NDCを熟知して簡単に本を探し出す司書の姿に感銘を受けて司書を志したといい、「娯楽が多い時代に、NDC男子が図書館に来て本を選ぶ入り口となり、利用者と本をつなぐ架け橋になってくれたら」と願う。
小説でシリーズ化
キャラクターが登場する小説「NDC男子!〈1〉あなたのモヤモヤ分類します!〜お悩みはかもじま図書館へ〜」(岩崎書店)が6月に発刊された。映画監督で小説家の舟崎泉美さん(42)が執筆し、挿絵は井上さんが「えん」のペンネームで手がける。現時点で3巻までのシリーズ化が決まっているという。
全国で図書館を運営する「図書館流通センター」(東京)と岩崎書店がNDC男子の広がりに注目し、書籍化を打診した。
恋愛や進路、仕事などの悩みを抱えた図書館利用者や司書の前に、「分類に宿る精霊」として「0類」「5類」などのキャラクターが現れ、解決を後押しする短編集。登場人物が徳島の方言を話し、シンボルの吉野川や特産のトウモロコシ「甘々(かんかん)娘」が出てくるなど徳島色がにじむ。
発売後2か月で重版になったといい、岩崎書店の編集担当者、千田ひかりさん(44)は「キャラクターの力で読書を推進しただけでなく、図書館そのものにも興味を向けさせた点がすばらしい」と話す。
