「まったくズレている」前陸前高田市長 高市首相の熊本訪問動画に苦言…アピール映像の制作に垣間見える“忖度政治”
「あの熊本地震の被災地訪問をまとめた短い映像は、高市首相個人のプロモーションとしか思えませんでした。
あのような内容で首相官邸の名前で編集され、リリースされるまでには、高市首相は必ず確認しているはずです。私は、あの映像に対してOKを出したのだとすれば、『まったくズレている』と思いますね」
こう話すのは、岩手県陸前高田市の前市長の戸羽太氏(61)だ。2011年3月11日の東日本大震災で、同市の死者・行方不明者は1700人以上となった。当時就任1カ月の市長だった戸羽氏は、最愛の妻を津波で亡くした悲しみを胸に秘めて、復興に尽力。
被災者の目線で市政を12年間担ってきた戸羽氏が、「まったくズレている」と感じたのは、8月3日に熊本地震の被災地を高市早苗首相(65)が訪問した際のショート動画(首相官邸公表)だ。
被災地を訪問し、被災者の話に耳を傾けるシーンに続き、爆発事故で7人が亡くなったイオンモール熊本の建物に向けて、高市首相が手を合わせているシーンもある。しかし、なぜかヘリの中から、つまりはるか上空から爆発事故の現場と被災者・犠牲者を見下ろす形での「お悔やみ」になっているのだ。
「イオンで被害に遭われた方々に手を合わせるのであれば、少なくとも地上に降りて、被災者の方々と同じ目線に立つべきでした。実際、首相官邸が製作したショート動画ですから、首相本人が確認していないとはいえない状況ですので、『どこまでの哀悼の気持ちがあって撮影なさった動画なのか』と疑われてしまう余地があると思います」
戸羽氏は、もし政治家が、被災地を訪問して報告の動画を撮るとすれば「そこには明確な目的があるべきだ」と力説する。
「熊本地震の被災者を訪問したショート動画の概要欄には『高市総理による、令和8年熊本地震による被災状況視察のための熊本県訪問の様子です』と説明があります。私たちがふつうに考えれば、『被災者の方々が苦しんでいることはなにか、なにが大変なのか、を世に知らせ、国民のみなさんで応援しましょう』という目的はあるはずです」
そのような目的が伝わる動画であれば意義があるが、その場合は、映像で伝えたい対象は、被災者の方々のはずである。
しかし「このショート動画の主役は高市首相としか思えないんです」と続ける。
「誰の指示で高市さんメインの動画を作ったのかわかりませんが、首相も確認しているはず。つまり、『自分メインの動画』のゴーサインを出したというセンスが、政治家、しかも首相として理解できない。
だから、撮影の目的も伝わらないし、被災地視察の目的すら、国民にぜんぜん伝わってこないでしょう。だったら、被災地を視察しなくてもよかったじゃないか、映像を出さなくてもよかったじゃないか、という疑問が出て当然でしょう」
一国の首相が、あるいは首相官邸の国家公務員が、なぜそのような判断ができないのだろうか?
「ひとつには、高市首相の日ごろの態度や言動の端々から、周囲が忖度せざるを得ない環境が作られてしまっているのは、事実だと思うのが自然です。
ひとたび首相が『被災地に行く』と言ったら『被災地で首相に恥をかかせることになったら、大変なことになるぞ』とか『なにかあって、首相がへそを曲げたら大変だぞ』と、いやに気を回していると思うんです」
高市内閣の“強権”ぶりについては、8月7日にあった官僚の人事異動が取りざたされている。財務省の一松旬主計局次長が東京税関長に転出した人事について、“左遷ではないか”と一部で報じられているのだ。
「被災者ではない高市さんが、首相の立場で熊本の被災地に行く。首相本人から『なんで私が文句を言われなきゃいけないのよ?』という態度を出されなくていいように、あらかじめ文句が出にくい避難所を訪問するように周囲が忖度する。
ショート動画の撮影も、それと同じで、首相がご機嫌なように事が進められれば、その結果は、こうなるのは明白ですよね。『私、こんなに活躍したのよ!』っていうアピールになる動画ができたのは、そういう構造だったのではないかと思いますが、本来の『被災者の方々のために』という目的は、果たせないままではないでしょうか」
このショート動画を作るためにも、私たちの税金が使われている……。
