イランによる暗殺の脅威…トランプ氏が滞在していたホテルの階まで把握
ドナルド・トランプ米大統領が先月北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席するためトルコのアンカラを訪問した際、イラン側がトランプ氏の滞在場所だけでなく、ホテルの何階にいるかまで把握していたことが明らかになった。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)は11日(現地時間)、匿名の米当局者2人の話として、「当時、米情報当局は複数の経路を通じ、大統領専用機『エアフォースワン』を狙った地対空ミサイル攻撃の脅威があることを把握していた」と報じた。さらに、「首脳会議場付近で携帯式肩撃ち式ミサイルを所持した人物が確認されたとの情報があり、イラン側はトランプ大統領の具体的な居場所も把握していた」と伝えた。
米政府はこの情報を信頼できるものと判断し、トランプ大統領を安全に移動させるための欺瞞作戦に着手した。トランプ氏は先月8日、首脳会議を終えた後、アンカラ空港で旧型のエアフォースワンに搭乗したが、ひそかに機外へ抜け出し、機内食ケータリング用の積載設備を通じて、近くで待機していた米空軍輸送機に移った。輸送機は英国のミルデンホール空軍基地に向かい、トランプ大統領はそこで新型のエアフォースワンに乗り換えた後、米国に帰国した。この作戦は前日のワシントン・ポスト(WP)の報道で初めて明らかになった。
一部では、イスラエル側がイランによるテロの脅威を巡り、虚偽の情報を米政府に伝えたとの主張も出ていた(中東専門メディア「ミドル・イースト・アイ(Middle East Eye)」)。イランとの交渉中断を望んでいたイスラエルが、虚偽の情報を提供した可能性があるというものだ。しかし、この日のNYTの報道などを総合すると、米政府はすでにイランによる具体的な脅威の兆候を把握していたとみられる。
◇暗殺回避の欺瞞作戦…トランプ氏、記者・スタッフを「おとり」に
トランプ大統領の欺瞞作戦をめぐる波紋は広がり続けている。歴代の米大統領も身の安全を守るため、海外訪問の日程を隠したり、秘密作戦を実施したりすることはあったが、今回のように同行記者やホワイトハウスの参謀らを脅威にさらしたのは異例だとの指摘が出ている。トランプ氏自身は機内食ケータリング用の積載設備に身を隠して米空軍輸送機に乗り換える一方、ホワイトハウス担当記者やスタッフらを攻撃対象となる可能性のある航空機に残し、潜在的な脅威にさらしたためだ。
WPは11日、「ビル・クリントン政府も2000年に同様の欺瞞作戦を実施したが、トランプ政府とは異なり、メディアに作戦とその危険性を事前に説明していた」とした上で、「この欺瞞作戦は、すでに緊張関係にあるホワイトハウスとメディアの関係をさらに悪化させる可能性がある」と批判した。2000年3月、当時のクリントン大統領はパキスタンのイスラマバードに移動する際、身の安全を守るため実際に搭乗する航空機を隠す作戦を行ったが、ホワイトハウス記者協会(WHCA)の会長らには事前に知らせていたという。NYTは、大統領が秘密裏に移動すること自体が問題なのではないものの、「トランプ大統領の場合のように、実際の居場所や搭乗する航空機についてメディアに意図的に異なる認識を持たせる物理的な欺瞞はなかった」と指摘した。
米中央情報局(CIA)の情報官を務めたスティーブン・キャッシュ氏は英紙ガーディアンに対し、「トランプ大統領の身代わりとして100人余りをイランに殺させるために差し出すのと変わらないように見える」と批判した。また、情報当局が「信憑性のある脅威の標的となった人物」にその事実を知らせるよう義務付けたインテリジェンス・コミュニティー指令191号(ICD 191)を守らなかったとも指摘した。CNNで国防総省担当記者を務めたバーバラ・スター氏はWPに、「記者たちは自分たちの命が潜在的な危険にさらされていたにもかかわらず、その事実を知らされず、帰国する方法を別に選ぶ機会さえ与えられなかった」とし、「前例のないほどの不信が生じるだろう」と語った。
欺瞞作戦の内幕が明らかになった後、WHCAはホワイトハウスに対し、「今後、例外的な安全保障上の状況が発生した際にどう対応するかに関し、プロトコルを策定するためにわれわれと協力してほしい」と要請した。米民主党議員らは衝撃的な作戦だとして、真相究明に向けた議会向けのブリーフィングを求めている。
論争が拡大すると、トランプ大統領は、大統領警護隊(シークレットサービス)と軍の要請に従った作戦だったと釈明した。この日、「彼ら(シークレットサービスと軍の関係者)は、私に別の便、別の飛行機に乗ってほしいと言った」とした上で、「私は彼らの言う通りにする」と語った。

