横綱・豊昇龍はなぜ「ここ一番」で勝ち切れないのか…安青錦、大の里との「明暗を分ける差」
安青錦は「持っている」
いろいろあって、けっきょく安青錦かと、不思議な感じがする。
昨年の11月場所と今年の1月場所、安青錦は連続優勝を果たした。
3月場所も優勝すれば横綱かと言われているところで負け越し、5月場所は全休、関脇に陥落した。この7月場所は「10勝以上して大関へ復帰」をめざしていたところ、10勝を超えて12勝。優勝決定戦を制して3場所ぶりの優勝である。
ここ一年6場所で、安青錦が3回優勝している。そこだけを見るといまは「安青錦の時代」のようでもある。
ただ、7月場所を見るかぎり、安青錦は万全ではない。勝ったあとは足をひきずるようにして、見るからに痛そうだった。なんとか10勝できれば、と見守っていた、というのが正直なところである。
このまま勝ち続けて一気に横綱に駆け上がれるかどうか、ちょっとわからない。今場所も勝っているのにつまずいて土俵下に落ちるという一番もあった(8日目の隆の勝戦)。心配である。
ただ、安青錦は勝負強い。
いわゆる「持っている」というタイプである。
3回の優勝はすべて優勝決定戦を制して勝ち切っている。最後には負けないという強さが印象深い。相撲の芯の強さを感じるし、「お相撲の神さま」に愛されているように見える。
決定戦で勝ち切れない力士と勝ち切る力士の違い
較べて豊昇龍は、勝ち切れない。
大関だった令和7年1月場所の優勝決定戦で、金峰山と王鵬を倒して優勝、場所後に横綱に昇進したのだが、このときを最後に勝ち切れない。
横綱になってからに決定戦では令和7年9月場所(大の里の優勝)、同11月場所(安青錦の優勝)と続けて負けていて、ここ一番に弱いという印象がある。横綱なのに決定戦で連敗というのがとても歯がゆい。
すぐ投げようとするスタイルはもう通用しなくなっていて、なかなか痛ましい一番も多い。ちょっと大丈夫なのかと心配である。
「決定戦で勝ち切るかどうか」で力士を分けていると、いろいろ見えてくる気がする。
大の里は、決定戦では勝つ。勝ち切るタイプである。
令和7年の3月場所に高安、9月場所に豊昇龍を倒して優勝している。
この人は安青錦と同じで「すんなり勝ちあがってきた」力士である。初土俵から横綱まですごく早かった。幕内に上がって9場所で横綱になって、そのあとも4場所10勝以上をあげていた。
ことし3月に途中休場して以来、元気がない。勢いで横綱まで駆け上ったが、いま停滞中である。「上に上がる」というのがなくなったので失速したと見えなくもない。次の上は「歴史に残る大横綱」というあたりだろうけれど、これはスピードで達成できるものではない。
この7月場所も、「すぐ引いてしまう」癖が目立った。「晩年の大鵬かよ」、とおもって見ていたが、本来はのぼり調子であっていい26歳の横綱なので、気を取り直してがんばってもらいたい。
安青錦とともに「決定戦では負けない力士」でもあり、言い方を換えれば「選ばれた存在」である。このまま「ときどきおもいだしたように圧倒的に優勝する」存在となってもらいたくない。
今年後半の見どころ
この7月場所に「綱取り」を懸けて、それで最後まで優勝同点で併走しつづけたのに、決定戦で敗れたのが大関の霧島。
「大関復帰を目指す陥落した関脇」に対して「横綱昇進をめざす大関」が敗れてしまったところを見ても、霧島は「決定戦で勝ち切れないほう」の力士である。
その前の5月場所でも新大関(返り大関ではあるが)ながら決定戦で小結の若隆景に敗れた。二場所連続して、決定戦で番付下位に敗れて優勝を逃している。
横綱昇進の「内規」は、「二場所連続優勝、ないしはそれに準ずる成績」とされているので、強引にそれに適うのではないかという意見もあったようだが、やはりまだ無理だろう。「決定戦で二場所連続負けた大関」はあまり横綱向きではない。
横綱には「勝ち切る力」もやはり大事だとおもう。次場所以降に期待である。
勝ち切る能力はまた「相撲の神さまに愛されているか」どうかの違いでもあるように見える。勝ち切る力士は神さまに見出されている感じがする。
今回また決定戦で負けた熱海富士も、これで決定戦に出るも敗れること3回目である。
そのうち2回が平幕のとき(令和5年9月場所前頭15枚目で大関貴景勝に敗れ、令和8年1月場所前頭4枚目で大関安青錦に敗れる)であり、今回もまだ関脇である。
これから上へ上がっていく途上で3回も決定戦に出たのは、これはこれですごいとおもう。
ただ、どの位置であろうと出たからには勝ち切らないと意味がない、ともいえる。
「3回決定戦にでて3回とも敗れた力士」としてほかに有名なのは高安である。いまやそれは「なにはともあれ高安には優勝させてやりたい」という判官贔屓を引き起こするにいたっているが、「いつも強い力士」というわけではない。
熱海富士はそんなところでとどまっているわけにはいかないだろう。
個人的には、熱海富士はなんかちょっと不安である。調子がいいとちょっと浮ついてしまうふうに見受けられて、それと優勝決定戦で勝ち切れないのとがつながっているように見える。まあ、まだまだ若い23歳なので、これからではある。
余談ながら、優勝決定戦の記録を眺めながら、明武谷(みょうぶだに)が二度、決定巴戦に出ていたのを知って、ちょっと驚いた。この人は大鵬には強かったんだよな、と「つりだし」が得意だった高身長の明武谷のことをおもいだしてしまった。
「いざというとき勝ち切る“持っている力士”」の安青錦と大の里の時代がくるのかとおもわれていたが、二人とも怪我で失速して、わからなくなった。
勝ち切れない力士たち「霧島・豊昇龍・熱海富士」は果たしてそこから抜け出てくるのか。優勝して休場した若隆景も気になる。
今年後半の見どころはそのあたりだろう。
そして琴櫻にもがんばってほしい。
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