「中野サンプラザ」跡地の再開発めぐり区職員が“虚偽の公文書”作成か…地元地権者が刑事告発
東京・中野のJR中野駅前に立つ複合施設「中野サンプラザ」(地上21階・地下2階、2023年7月閉館)。
同施設とその周辺を含む「中野4丁目西地区」の再開発をめぐり、中野区の担当課長が再開発に同意する地権者の人数を水増しし議会に報告したとして7月30日、同地区の地権者3人が担当課長を虚偽公文書作成罪等で東京地方検察庁へ刑事告発した。
同日、地権者2人と代理人弁護士が都内で会見を開き、「まだ『再開発の検討』を進めることに賛成か反対かというアンケートしかとられていない段階だが、区はあたかも『再開発に同意』している人が(地権者の)70%以上いるかのように見せかける公文書を作成した」「再開発反対派の声を行政が押しつぶそうとするのは許せない」と告発に至った経緯などを語った。(ライター・榎園哲哉)
中野区のランドマークの一つとして存在感を示していた同施設は3年前の7月、開業50周年の節目の年に惜しまれながら閉館。その後の運営は二転三転しながら、現在は旧運営会社から土地・建物の寄付を受ける形で中野区へ引き継がれている。
同施設とその周辺の中野4丁目西地区では、地権者らによって2017年3月に「市街地再開発準備組合」(地権者23人が加盟)が設立され、再開発事業の検討が進められている。
会見資料によると、現在は「中野サンプラザ」の跡地には、2024年5月に開庁した中野区新庁舎と連接するように、地上47階建て・高さ約180メートルのタワーマンションの建設が予定されている。
しかし、同地区を含む都内の再開発事業では、工期の遅れ、事業費の大幅な増大とそれに伴う補助金(税金)の投入等が発生しているとして、告発人を含む一部の地権者らは、再開発に反対の意思を表明している。
地権者へのアンケート調査の結果を偽る?今年7月、中野区の中野駅周辺まちづくり課から区議会(建設委員会)に「中野4丁目西地区の市街地再開発事業について」と題する文書が提出された。
同文書の中で、再開発への地権者らの同意状況として、地権者39件中、同意件数28件で71.7%が同意しているように記されていた。
この同意状況の記載について、告発人らは虚偽であり、刑法156条(虚偽公文書作成)、同158条1項(虚偽公文書行使)に該当すると判断し、刑事告発に至ったという。
虚偽だとする根拠について、代理人の坂仁根(さか・ひとね)弁護士は「本来、我々が確認している再開発に同意している地権者の件数は最大で21件(53%)だ」と説明する。
中野区が「地権者同意状況」の基としたのが、市街地再開発準備組合が昨年10月から今年4月までに行った再開発事業“検討”の賛否を問う地権者へのアンケートである。
アンケートには、地権者39人中26人から以下のように回答があった。
「再開発事業の検討を進めてほしい」:20人
「再開発事業の検討を進めること自体は反対ではない」:6人
なお、「再開発事業の検討を進めることには反対である」の設問もあったが、反対派はアンケートをボイコットしたという。
坂弁護士は「検討を進めること自体に反対ではない」は中立的な回答であると指摘するが、区は回答した26人に、情報を得るために準備組合に加入している告発人の2人を合わせた28人(71.7%)を「同意件数」として文書にまとめた。
今年度中に「都市計画決定」させたい区の狙いなぜ、区が地権者の同意件数を水増しする必要があるのか。
告発人らは、まず「区は、再開発が進むという前提で、区役所の新庁舎を建てた。再開発エリアと新庁舎をデッキでつなぐ計画があり、まだ何も決定していないのに新庁舎建設の際にデッキの受け口を作ってしまった。区としては、住民の意向は関係なく、是が非でも再開発を進めたいのではないか」と指摘する。
都市再開発法では、再開発事業のためには地権者の3分の2(66.7%)以上の同意が必要となる。坂弁護士は「再開発を進めたい中野区が、それを達成するために故意に準備組合のアンケート結果を利用したのではないか」と述べた。
また、昨年3月に国交省が全国の各自治体等に宛てて出した事務連絡の中で、来年度(2027年4月以降)から再開発事業への補助金の交付を厳しく精査する旨が伝えられたことも、中野区のプレッシャーになっているのではないかと坂弁護士は話す。
中野4丁目西地区の再開発事業計画の予算は1353億円が見込まれ、そのうちのおよそ14%(194億円)を国からの補助金で充てようとしているという。
「補助金が出なくなれば、再開発計画自体がとん挫しかねない。そのため、区は今年度中(2027年3月まで)に都市計画決定(事業着手)まで進む必要があると考え、急いでいるのではないか」(坂弁護士)
「中立公正を保つべき行政が反対派の声を押しつぶそうとしている」会見では告発人のうち、地元である中野区で不動産会社を経営する食野(めしの)友彦氏も、区への思いを語った。
「民間の再開発事業に、行政である中野区がなぜ、前のめりで介入してくるのか。本来であれば、再開発への賛否については『賛成』『反対』『どちらとも言えない』で回答するようなアンケートを取るべきところ、あいまいなアンケートで、あたかも同意が70%以上あるかのように見せかけている。中立公正を保つべき行政が反対派の声を押しつぶそうとしていることは許せない」
中野駅周辺まちづくり課は、筆者の問い合わせに「訴状が届いてないのでコメントいたしかねます」(原文ママ)と回答を寄せた。
■榎園哲哉
1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。

