危険運転法改正で基準具体化も 法適用と遺族感情の温度差 富山県
危険で悪質な運転による事故を処罰する「危険運転致死傷罪」。法律改正は先月、衆議院で全会一致で可決されて成立し、今月21日に施行されました。
改正法では新たに「数値基準」が設けられました。これまで飲酒による危険運転は「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」とされていましたが、改正法では「呼気1リットルあたりのアルコールが0.5ミリグラム以上」と数値で示されました。これは体重およそ60キロの人がビール大瓶2本を飲んだ場合、30分ほど後に検出される量にあたります。あいまいだった基準が数値で示された今回の法改正。審議会の委員を務めた大学教授は…。
「危険運転状態というようなものになるためには、アルコールの影響によって正常な運転が困難になる状態にならないといけません。それは、お酒一滴でも飲めば何らかの影響が出るということはあるわけなんですけれども、その段階では法律が予定している危険運転状態には達しません」
審議会では「誰が運転しても正常な運転が困難になる数値」としてWHOの調査を参考に「0.5ミリグラム」という基準を設けました。この数値に満たない場合はこれまで通り「危険運転」か「過失運転」かで争われることになります。2019年に、家族と乗っていた車が飲酒運転の車に衝突されて亡くなった砺波市の心誠くん。事故の加害者は、この数値には届いていません。
心誠くんの父
「この結果というのは、私にとっては物足りないというか、期待したところにはなっていないというところです」
「現行法が期待している、考えている『危険な運転』というものと、被害者遺族が思っている『危険な運転』というのは、ちょっとレベルが違うところにあるなと」
「軽い量刑しか科せられない、これでは本当に残された遺族、かわいいわが子、家族を失ったものとしては耐えられないです」
心誠くんが亡くなった事故の裁判で裁判長を務めた大西直樹さんは…。
大西直樹 元裁判長
「数値基準に入る(超える)ということになればそこが中心的な争点になるはずなので、客観的な証拠によって客観的な数値が立証される、認定できるのであれば、だいぶ裁判は迅速に、しかも自信を持って(判決)することができるのではないかと思います」
大西さんは「酒を飲んで運転してはいけない」と強調しながらも、基準の数値を超えたら一律に「危険運転」とみなすことには慎重な議論が必要だと話します。
大西直樹 元裁判長
「人が亡くなった結果についてはそれは本当にアルコールの影響なのか。お酒は飲んでいたけれども影響しておらず、よそ見をした、スマホを拾った、スマホを見ていたという影響による。事故の時に0.15なり、0.5を超えていたらそれは全部危険運転致死だよと言って、それで罪を問われてしまうというのは本当に正しいのか。そこについては、疑問が残るのではないかなと思います」
「裁判官はある、存在する法律を適用する立場なので、その良し悪しを評価する立場にはないので、本当に自信を持って法律を適用できるような、良い法律を(今後も)国民の総意を踏まえて国会で作っていただく。これが一番大事なことかなと思います」
交通事故に関する法律はこれまでも、遺族や社会の声とともに変わってきました。
今回の新しい基準が実際の事故でどう運用されていくのか、司法関係者に限らず、社会全体で見ていく必要があります。

