新NISAは“悪魔の制度”ですよ…年収650万円・50歳サラリーマンが「NISA制度」を憎むワケ【FPが警告】
個別株や投資信託に投資した場合、その利益に対しては通常20.315%の税金がかかります。しかし、NISAであれば年間360万円(成長投資枠240万円+120万円)まで非課税となるため、このメリットを享受するため多くの人がNISA口座を開設しています。しかしなかには、NISAを「悪魔の制度」と忌み嫌う人も……いったいなぜなのか、みていきましょう。
年金これだけ?…老後が不安になった50歳男性
50歳の誕生月、年収650万円のサラリーマンAさんのもとに「ねんきん定期便」が届きました。そこには将来の年金見込額が記載されており、Aさんの見込額は「月額約13万円」でした。
今の生活水準を考えると、到底安心できる金額ではありません。
自身の老後に対する不安……これが、Aさんが資産運用に興味を抱いたきっかけでした。
ちょうどその頃、職場では新NISAの話題が広がっていたそうです。
「税金がかからない」「みんなやっている」「利用しないと損」などと話す同僚たちの声に後押しされ、AさんもひとまずNISA口座を開設します。
Aさんが最初に選んだのは、複数の同僚から勧められた「AI・半導体関連ファンド」でした。2023年から2024年にかけて、この投資信託は2倍以上に大きく値上がり。グラフを見ると多少の調整をはさみながらもほぼ右肩上がりです。
「この勢いに乗り遅れたくない」
焦ったAさんは、成長投資枠の限度額240万円を一括投資します。
しかし、その判断は結果的に「高値掴み」となりました。
その投資信託は一時的なピークをつけた後に調整局面へ入り、2025年1月から2025年4月頃にかけて、過熱感から大きく下落。投資した資金240万円が約170万円まで減少しました。
「儲かるんじゃなかったのかよ……こんなの聞いてない。危険すぎる」
下落率が30%を超えたところでAさんは我慢の限界に。保有していた投資信託をすべて売却したそうです。
Aさんはこう語ります。
「自業自得なのはわかっています。でも、自分のようによくわからず投資をはじめて大損した人はきっと多いはずです。メリットは理解していますが、正直、私からしてみたら新NISAは悪魔の制度ですよ……」
「NISAが悪い」わけではないが…
Aさんが「自業自得」と反省しているとおり、NISAそのものに非はありません。問題は「制度」ではなく、「使い方」にあります。
投資初心者が陥りやすい3つの落とし穴
このケースから見えてくるのは、投資初心者が陥りやすい典型的なミスです。
①なんとなく流行に乗るだけの投資:株式投資には“人気投票”の側面があるのも事実です。しかし、話題になっている商品はすでに高値である可能性に注意しましょう。「人気=安全」ではありません。
③分散不足:特定のテーマ(半導体など)に偏ると、相場の影響を大きく受けてしまいます。そのため、下落局面では傷が深くなるリスクを認識しておく必要があるでしょう。
不安定な相場で取るべき投資行動
ではどうすればいいのか……まず重要なのは、「目的から逆算すること」です。今回のAさんの場合、本来の目的は「老後資金の準備」でした。
こうした場合、値動きの激しいテーマ型ファンドではなく、全世界株式やバランス型ファンドなど、長期・分散・積立に適した商品を選ぶことをおすすめします。
次に、「時間を味方につけること」です。投資は短期で結果を求めるのではなく、長期目線で「資産を育てる」という意識をもっておきましょう。たとえば、毎月決まった日に決まった金額を積み立てることで、均してみると「価格が高いときは少なく買って、価格が低いときに多く買っている」という効率的な投資が可能な「ドルコスト平均法」などがおすすめです。
そして最後に、「自分が理解できるもの」に投資しましょう。よくわからないまま投資すると、その投資対象が値下がりしたときに不安になり、適切な判断ができなくなります。
資産運用は「目的」を明確に
NISAは本来、長期の資産形成を支援する非常に優れた制度です。しかし、使い方を誤れば今回のように資産を減らす結果にもなりかねません。
重要なのは「制度に振り回される」のではなく、「自分の人生設計に合った制度を活用する」という視点です。
老後不安を感じたときは、一度立ち止まりましょう。焦って投資をはじめるよりもまずライフプランを整理し、必要な資金を明確にして、その上で適切な投資戦略を組み立てる。これが不安の解消につながります。
投資は「知識」と「目的」があってこそです。NISAを自分にとって「悪魔の制度」にするか「最高の制度」にするかは、あなた次第でしょう。
武田 拓也
株式会社FAMORE
代表取締役
