選択肢が多く難しい「売り時」(taka1022/shutterstock.com)

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 首都圏のマンション価格は、新築・中古ともに1年間で大きく上昇した。不動産経済研究所によれば、2025年首都圏新築マンションの平均価格は、9182万円、平米単価も139.2万円となりいずれも過去最高値を更新。中古マンションの売れ行きも好調で、成約件数は3年連続で前年を上回り、成約価格も13年連続上昇し5200万円となった。「売る立場」にとってとても魅力的なマーケット環境となっている今、「マンションの売り時」について考察したい。(不動産コンサルタント・岡本郁雄)

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新築・駅近・タワマンは、郊外でも好調

 新築マンションの売れ行きが好調だ。つくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」駅徒歩1分の「パークタワー柏の葉キャンパス」は、第1期1次・2次157戸が完売。武蔵小杉の免震ツインタワー「ザ・パークハウス 武蔵小杉タワーズ」も売れ行き好調で、内覧予約が取りにくい状況にある。船橋駅前の地上51階建てタワー「プレミストタワー船橋」は、第1期1次販売がスタートし最高価格は7億2900万円をつけた。いずれも2025年9月配信の記事【「都心駅近」を狙えと言われてもムリ…専門家が教える「まだ買える」新築マンション3選の「実名」 狙い目は「再開発エリア」への“アクセス”にあり】において、首都圏の注目マンションとして筆者が紹介したプロジェクトだ。

選択肢が多く難しい「売り時」(taka1022/shutterstock.com)

 共働き世帯の比率が高まることによって、交通利便性と生活利便性を兼ね備える駅近マンションの評価が高まっている。ららぽーと柏の葉徒歩2分の「パークタワー柏の葉キャンパス」をはじめ、前述の3プロジェクトは、その条件を満たしている。周辺の中古マンションへの波及効果も出てきており、「パークシティ柏の葉キャンパス二番街」や「パークシティ武蔵小杉ザ ガーデン」、「プラウドタワー船橋」といった近隣の中古マンション価格は、大きく上昇している。フラッグシップとなる新築マンションの供給は、その地域での中古マンション流通の活性化にも寄与しているようだ。

 2025年の首都圏新築マンションの供給戸数は、前年比4.5%減少の2万1962戸と、1973年以降最少となっている。一方、2025年の首都圏中古マンション成約件数は4万9114件。新規登録物件数は、2年連続で前年を下回っており、「築浅・駅近・大規模」など好条件が揃ったマンションの引き合いは強い。

 新築マンション価格上昇の恩恵を最も受けているのが都心エリアだ。都心3区(千代田・中央・港)の2026年1月度の1平米あたりの成約単価は、255.58万円。2024年1月度は167.51万円だったので、実に「2年間で52%超」も上昇している。こうした状況を受けてか、都心3区の新規登録物件数は、前年同月比30.5%増の1379件に上っている。都心の不動産購入者は「資産形成」を目的とする人も多いため、成約単価の上昇したこのタイミングで売却物件が増えるのは、当然の流れだろう。

ポイント1 資産価値を保てる築年数は「30年まで」が一つの目安

 新築マンション価格が上昇している今、中古マンションの流通価格も高くなりやすい。新築マンション価格の上昇を受けて、埼玉県、神奈川県、千葉県といった郊外エリアでも売れ行きは好調だ。在庫件数も減っている地域も目立ち、「築浅・駅近・大規模」のマンションは、すぐに購入者が決まってしまうことも多い。この10年間、新築マンションの供給戸数は大きく減ってきており、ストック戸数がそもそも少ない。街のランドマークとなるようなマンションの競争優位性は、これからも保たれるだろう。

 では、どのくらいの築年数まで、資産性は確保できるのだろうか。一つの目安として「築30年」を挙げたい。近年、供給が目立つようになった定期借地権の使用期間が概ね70年程度であるように、マンションの耐用年数は、60年から70年程度が目安。価格上昇により40年ローンなどより長期でローンを組む人も目立つようになっており、そこから逆算しても「築30年まで」が安心して住宅ローンを組める築年数といえる。では、実際の流通価格はどうだろうか。

 2024年首都圏中古マンション築年数別成約動向を見ると、築0〜5年の成約併売単価が126万円台。築6〜10年が109万円台。築11〜15年が99万円台。築16〜20年でも85万円台と高値をキープしているが、築21〜25年では74万円台、築26〜30年では57万円台と下落する。さらに築31〜35年だと40万円台と大きく低下する。住宅性能は進化しており、築年数だけが価格の決定要因とはならないが、やはり築30年程度までが一定の資産性を保てる目安と言えそうだ。

ポイント2 「居住用財産の3000万円控除」など税制を細かく把握する

 マンションの売却の際に、忘れてはいけないのが譲渡益にかかる税金のことである。中古マンション価格の上昇によって、購入時の価格よりも売却価格が高くなり譲渡益が出るケースも少なくない。特に都心の高額マンションでは、「億」を超えるような売却益が出る場合もある。税制を把握しておかないと、せっかく譲渡益が出たのに税負担が大きく実質的な手取り額が大きく減るケースもある。居住用財産の「3000万円控除」と保有期間によって税率が異なる、「短期譲渡」と「長期譲渡」の違いは、ぜひ押さえておきたいポイントだ。

 まず居住用財産の3000万円控除を見てみよう。居住用財産を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3000万円まで控除ができる特例がある。適用されれば、譲渡所得税の負担が大幅に軽減されるため、住み替えなどで広く利用されている。主な要件は、「売却した物件が自分の居住用であること」と、「過去2年以内に同様の特例を使っていないこと」、そして「親子や夫婦など特別な関係者への売却でないこと」など。3000万円控除は、住宅ローン控除と併用ができないため、住み替えで住宅ローンを利用する場合、どちらかを選択することになる。

 居住用財産の3000万円控除は、夫婦それぞれが持ち分に応じて利用可能で2人合わせると最大6000万円まで控除が可能となる。都心のマンションでは、譲渡益が3000万円を超えるケースも少なくないので自宅マンションを夫婦で共有するメリットは大きい。居住用財産の3000万円控除を利用するためには、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要がある。転勤などで、住めなくなった場合に、期限があることを留意しておきたい。

 また、居住用財産を10年超所有して売却する場合、譲渡所得6000万円以下の部分の税率が軽減される。居住用財産の3000万円控除との併用も可能で、長期間にわたり自宅を所有した人の住み替えを支援することにつながっている。

 不動産を売却した際の譲渡所得税は、所有期間によって「短期譲渡」と「長期譲渡」に区分され、税率が大きく変わる。所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡」となり、税率は所得税・住民税を合わせて39.63%。一方、5年超の場合は「長期譲渡」となり、税率は20.315%と大幅に低くなる。所有期間の判定は、売却した年の1月1日時点での所有年数で行われるので注意が必要だ。

 例えば、2021年4月に購入した物件を2026年12月に売却した場合、2026年1月1日時点では所有期間が5年以下となるため「短期譲渡」となる。都心の大規模タワーマンションの中には、引き渡しから5年経過後に相当数の住戸が売り出されているケースもある。投資用で購入した場合、譲渡益の税率が大きく下がるので当然の動きだろう。ちなみに、晴海フラッグは、2024年1月から順次引き渡しが始まっているので「長期譲渡」に区分されるのは、2030年。この年は、売却に動く人が増えるかもしれない。

ポイント3 シニアの住み替えは「早いほうが良い」

 3つ目の視点は、ライフステージの変化など家族の事情だ。子供の成長や独立によって住み替えを選択する人は多い。また、広さや生活利便性など今の住まいの不満を解消するために住み替えを検討する人もいるだろう。こうした住み替えのタイミングは、早いほうが良い。

 特に住宅ローンを利用する場合は、住み替えのタイミングが遅くなると住宅ローンが組みにくくなる。また、シニアの住み替えの場合、不要になった家具や衣類の廃棄など引っ越しには相当の体力が必要になる。元気なうちに住み替えの準備をすることをおすすめしたい。

 人気エリアのマンション価格が高騰している今なら、広い住居からコンパクトな住居への住み替えや、都心から郊外への住み替えなら金銭的な余裕ができるケースもある。残債のない自宅を売却して、より廉価な住宅を購入できれば、一定の老後資金をつくることも可能だ。資産価値の高いマンションからの住み替えを検討する人にとって、今は絶好のタイミングと言えるかもしれない。

岡本郁雄(おかもと・いくお)
不動産コンサルタント及びFPとして、講演、執筆など幅広く活躍中。TV・雑誌など様々なメディアに出演、WEBメディア「街とマンションのトレンド情報局」も運営している。30年以上、不動産領域の仕事に関わり首都圏中心に延べ3000件以上のマンション・戸建てを見学するなど不動産市場に詳しい。岡山県倉敷市生まれ、神戸大学工学部卒。

デイリー新潮編集部