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世界的な観光地として知られる東京・渋谷のスクランブル交差点。

外国人とみられる少女が交差点で記念撮影をしていたところ、歩いてきた女性に突き飛ばされて倒れ込む──。そんな瞬間を捉えた動画がSNSで拡散し、波紋を広げている。

動画には、スクランブル交差点の一角で、歩いてきた女性が少女の背中にひじを当て、突き飛ばす様子が映っていた。この女性は、少女に接触する前にも、別の男性や子どもに、ひじや体をぶつけながら歩いているように見える。

少女は台湾からの観光客とみられ、SNSでは「明らかな暴力ではないか」「子どもに対して危険すぎる」といった批判が日本人ユーザーからも相次いでいる。

こうした行為は、法的にどのような責任に問われる可能性があるのだろうか。刑事事件にくわしい冨本和男弁護士に聞いた。

●暴行罪にあたる可能性

──路上や交差点などで、他人を意図的に突き飛ばして転倒させる行為は、どのような犯罪に該当する可能性がありますか。

暴行を加えた結果、傷害に至らなかったとき、暴行罪が成立します。ここでいう「暴行」とは、人の身体に対する有形力の行使です。

他人を意図的に突き飛ばして転倒させる行為は、身体に対する有形力の行使であることが明らかであり、暴行罪の「暴行」に当たります。

暴行罪が成立する場合、2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留、科料といった刑罰の可能性があります。相手にケガがなかったとしても、暴行罪は成立し得ます。

●ケガを負わせば傷害罪に

──突き飛ばされた側が転倒してケガを負った場合はどうなりますか。

相手がケガを負った場合は、傷害罪が成立する可能性があります。「傷害」とは人の生理的機能を害することをいい、ケガを負わせる行為は典型例です。

傷害罪は暴行罪よりも重く、15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金といった刑罰の可能性があります。

●「通行の邪魔だった」は通用するか

──SNSでは、少女が「通行の邪魔になっていた」「混雑していたから避けようとした」といった指摘もあります。しかし、動画を見ると、女性が少女に接触する前にも、男性や子どもにひじや体をあてているようにも見えます。

正当防衛が成立するには、急迫かつ不正の侵害に対して、自己または他人の権利を防衛するため、やむを得ずおこなった行為であることが必要です。

仮に、少女にぶつかる前から周囲の人にも積極的に接触していたとすれば、「防衛するため」や「やむを得ず(必要かつ相当)」という要件を満たすことは難しいでしょう。

さらに、自ら進んで他人に接触している場合、差し迫った侵害に対応したという意味での「急迫性」も認められにくく、正当防衛の成立は考えにくいといえます。

また、緊急避難が成立する可能性も低いと考えられます。

緊急避難は、自己または他人の生命・身体などに対する現在の危難を避けるため、やむを得ずおこなった行為で、避けようとした害の程度を超えない場合に成立するとされています。

単に「通行の邪魔になっていた」「混雑していた」という事情だけでは、生命や身体に差し迫った危難があったとは言い難いでしょう。

【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp