敵をつくらずに、ビジネスチャンスをつかむにはどうすればいいか。ジャーナリストの大野和基さんは「集団の場というのは、落とし穴、地雷が数多く仕込まれている。大事にすべきなのは1対1のチャンスで、チャンスがあれば、その日、相手が話したことについて相手を惹きつける言葉を投げかけることだ」という――。

※本稿は、大野和基『世界基準の「質問力」』(祥伝社)の一部を再編集したものです。

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■みんながいる場で、口にすべきでないこと

ジャーナリストの仕事のひとつに、まさに記者会見、プレスカンファレンスに出席し、相手の真意を問うというものがある。

もちろん、そのワーストのケースともいえるのが、フジテレビの中居正広問題の記者会見だったわけだが、では、あのような規模までいかないまでも、集団で質疑をし合う場に、どのような態度で臨めばいいのだろうか。

たとえば、就職試験の集団面接などであれば、自分をアピールせざるを得ない。そこで、面接官の記憶にぐさりと刺さる発言をしなければ、勝ち抜くことはかなり厳しい。

だが、大人になってから大人数が集まっている場で、就活の面接時のような“爪痕”を残さなければならないような機会は、あまりないのではないか。だとすると、そうした場での態度として、“目立つ”という選択肢は必然的に除外することになる。

では、その代わり何を意識すればいいのか。

実は就活時の真逆、すなわち「目立たない」である。

思い起こしていただきたい。正直、会社の会議等でクリティカルな発言をしたところで、果たして正当に評価されるだろうか。そうした会議には、さまざまな“stakeholder”、日本語で言うところの「利害関係者」が臨席している。

■集団の場には地雷がいっぱい

となると、社長にウケがよかったとしても、それを妬む人間もいる。あるいは、会社の問題点をズバリ指摘したことにより、“反体制派”と思われてしまうこともあるだろう。

だったら、適当にやり過ごせばいいのだ。

ここまでの私の発言と矛盾するかもしれないが、それだけ集団の場というのは、落とし穴、地雷が数多く仕込まれていると考えるべきなのである。

実際、私も数えきれないくらいの記者会見に参加してきたが、自分が本当に聞きたいことは、そうした場ではまず聞かない。

せいぜい心のなかでは「しょうもな」と思うことを、本心を隠して質問するくらいである。ライバルのジャーナリスト連中に、タダで手の内を明かす必要などこれっぽっちもない。

まして、いわゆる「コタツ記事」が氾濫しているいま、誰の発言、どの媒体など関係なく、あっという間にヴァリューのある発言はニュース化されてしまう。

場の意味合いを考えず、どこでも“ジャーナリスト精神”を発揮する人間は、記者の鑑どころか、単なるお人好しだ。こんな構えでは、この世界で生き抜くことなど絶対にできない。

■「コネ社会」で有力者とつながる方法

その代わり、大事にすべきなのは1対1のチャンスである。

たとえば、セミナーや講演会に出席したら、質疑応答では何も言わず、その代わりアフターパーティーなどで、必ず自分がつながりたい人間にアプローチする。

そして、チャンスがあれば、その日、相手が話したことについて質問をする。そして、何とか次につなげる。これが一番大事なことなのである。

よく日本は「コネ社会」だと言われる。誰か有力者とつながっている人は、いろいろと便宜を図ってもらえる反面、何もない人にはチャンスすら与えられない、と。

だが、たとえば「自由とチャンスの国」アメリカなど、日本とは比べ物にならないくらいコネ社会国家だ。

「ニューヨークに行けばチャンスがある」などというフレーズが、「アメリカンドリーム」という言葉とセットで語られることがある。ニューヨークに行けば、たしかに有名人、実力者とつながるチャンスは、他の地域に比べれば多くあるだろう。

写真=iStock.com/DogoraSun
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だが、成功するチャンスをつかめる人など、ほんの一握りもいない。なぜなら、名家の出、富豪の子息、大物政治家の2世たちが、すでにわんさとチャンスの束を独占してしまっているからだ。

無論、そうした連中とつながりが持てれば、当然、頭角を現すチャンスも広がる。だが、彼らの“入部チェック”は鬼のように厳しい。

■“Great question!”がなければ次がない

たとえば、若きトランプの生き方を描いた映画『アプレンティス』で、不動産屋の息子であるトランプが、何とか高級クラブに入り込み、飲めない酒を飲み、悪名高い弁護士でのちにトランプに冷酷な処世術を教えることになるロイ・コーンに近づこうとするシーンが描かれていた。まさに、トランプですらコネをつくるのに必死だったのだ。

大野和基『世界基準の「質問力」』(祥伝社)

結局のところ、アメリカであれ、日本であれ、本当にカネになる情報や仲間をもたらしてくれるのは、人とのつながりしかない。

だから私は、“Great question!”と相手が口走ってしまうような、クリティカルな質問を繰り出そうと日夜、頭を絞っているのだ。いや、極端な話をすれば“Great question!”がなければ次がないとすら考えている。

相手の脳裏に自分の姿を焼きつける武器が、そうしたいい質問なのだ。私はジャーナリストなので、それしか武器がないと言ってもいいかもしれない。

冒頭の話に戻れば、だからこそいい質問は、1対1のときにとっておくのである。そうしていい質問という武器で、人の輪を広げていく。そうすると、また新たな情報に出会える。

たとえば、私は経済学者のポール・クルーグマンと非常に親しく付き合っている。一方で、私もインタビューをしたことがある、やはりアメリカの著名経済学者で、ハーバード大学経済学部の教授のケネス・ロゴフには、そのことは絶対に言わない。

なぜなら、ケネス・ロゴフはポール・クルーグマンのことを心底嫌っているからだ。クルーグマンと対談中に大ゲンカをしたことすらある。

■絶妙なタイミングで、相手を惹きつける言葉を

だから、私は取材中、クルーグマンの「ク」の字も触れない。なぜなら、ケネス・ロゴフとの今後のつながりを保つこともまた、非常に大事だからだ。

会社員だろうとフリーランサーだろうと、人とつながる、そしてその輪を広げていかないと、この先ますます生きていくのが難しくなるのではないか。

ただし、どんな人にも、たったひとつだけ強い武器がある。それはすなわち、英語で言う“right time, right place”、すなわち絶妙なタイミングで、相手を惹きつける言葉を投げかけることだ。

そのチャンスがいつ来るかわからないからこそ、平時でも「質問力」を磨くよう意識することが、とても大事なのである。

CONCLUSION
「いい質問」だけが、
誰も傷つけない武器になる

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大野 和基(おおの・かずもと)
国際ジャーナリスト
1955年、兵庫県生まれ。大阪府立北野高校、東京外国語大学英米学科卒業。1979〜97年在米。コーネル大学で化学、ニューヨーク医科大学で基礎医学を学ぶ。その後、現地でジャーナリストとしての活動を開始、国際情勢の裏側、医療問題から経済まで幅広い分野の取材・執筆を行なう。1997年に帰国後も取材のため、頻繁に渡航。アメリカの最新事情に精通している。
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(国際ジャーナリスト 大野 和基)