(イラスト:島内美和子)

写真拡大

「<ご近所トラブル>に関するアンケート調査結果」(株式会社メディアシーク)によると、4人に1人が「これまでに近所とのトラブルを経験したことがある」と回答。その内容は「騒音(生活音・ペット・楽器など)」「駐車や通行に関する問題」が上位に上がっている。監視、悪口、嫌がらせ……。一度住んでしまうと、面倒な人たちからなかなか逃げられない――。加藤由佳さん(仮名・大阪府・主婦・56歳)が、若いころ子連れで引っ越した中古住宅。理想的な物件と思ったのに、まさかのご近所トラブルが……。

* * * * * * *

真夏も真冬も雨の日も、集まっては喋り続ける

住居を購入する際は、後悔のないように曜日や時間帯を変えて何度か訪れ、周囲の環境をよく観察してから決める。これはごく当たり前のことである。それなのに、初めて家を購入した27年前は、世間知らずで、よく確かめず即決してしまい、多大なストレスを抱えることになってしまった。

新婚で入居した社宅はエレベーターがなかったため、毎日の階段の昇り降りが体にこたえたのだろう、流産、切迫流産が重なった。長男が無事生まれてからも、赤ん坊を抱いて住んでいる5階まで上がるのは一苦労だ。

義両親や夫が第二子を強く望んだので、なんとしても妊娠する前に引っ越しを、と焦ってしまい、購入したのは築20年の中古の一軒家。間取りや広さ、日照も問題なく、家の裏側には畑が広がり、前の道も広く、のびのび暮らせそう。少々古い物件ではあるが、理想的に思えた。

しかし、隣近所に住む主婦らが最悪だったのだ。「近所姑」という言葉があるが、まさにそれに苦しめられ13年も暮らすことになる。

近所は古い家ばかりで、当時30歳手前だった私から見れば親世代の主婦たち5、6人(全員専業主婦でなぜか揃いも揃って孫なし、いても遠方)がヒマを持て余し、朝から夕方まで延々と井戸端会議をするのだ。

主婦の立ち話はよくある光景、と言われそうだが、その頻度と時間の長さが尋常ではなかった。毎日、お昼時以外はほぼ終日、真冬も真夏も、雨風の強い日は傘を差し、カッパを着て喋り続けるのだ。

全員が花や植木が大好きで、狭い庭だけでなく門の外にまで20個も30個も植木鉢をずらりと並べている。花の種や肥料も必ず連れ立って買いに行き、お揃いの花を並べるベタベタぶりも、女子高生のようで気持ち悪く感じた。

しかも、わが家の真向かいの家の50代のおばさんがリーダー格で、自然とその家の前(すなわちわが家の前でもある)に集まって来る。ということは、来客や宅配便の届く様子をすべて見られてしまうことになるのだ。

うるさい姑が5、6人できたようなもので、常にアラ探しをされる生活は、とても窮屈で耐えがたかった。

とにかく家の前にいつもいて、外出する時には「どこに行くの?」と聞かれ、帰宅するとまた同じメンバーから「電話が何度も鳴ってたで」とか「あんたの家の庭にノラ猫がいたから追い払ってやった」などと言われる。

これが1年365日続くと、どれだけ心理的負担になるか、わかってもらえるだろうか。

長男が2歳近くになると、晴れた日は毎日公園に行くようになった。ある日、留守中に訪ねてきた友人がわが家のベルを鳴らすと、おばさんたちに「今、公園に行ってるで」「だいたい3時半にいつも帰って来るよ」「あんた、どこの人?」などと口々に言われたらしい。

外出から帰って来ると、おばさんたちがうちの庭に入り草取りをしていたこともあれば、雨が降った時、わが家の洗濯物をすべて取り込み預かってくれていたこともある。

親切心からだったのかもしれないが、勝手に庭に入るのは近所なら当たり前、という考えには、最後までなじめなかった。

車の停め方がきっかけで険悪なムードに

夫が仕事で出張の時は、子どもを連れて隣県の実家で1、2泊過ごしていた。しかし戻って来ると必ず「今の若い奥さんはしょっちゅう実家に帰れて気楽でエエなぁ」だの「実家では上げ膳据え膳?」などと嫌みを言われる。

また実家の母に子どもの世話を頼んで出かけたりすると、「隣の県から親を呼びつけて子の面倒を見させて、甘えすぎ」などと言われた。アンタらは私の姑か。いや、姑に言われても腹が立つのに、なぜ隣近所というだけで、赤の他人にここまで干渉されないといけないのか。

人見知りで早生まれの長男を幼稚園に入れた時もつらかった。園バスが来ると、長男は大泣きして嫌がり、先生と私で必死になだめながらバスに乗せるのだが、その時もおばさんたちが集まってアレコレ言うのだ。

「ああいうタイプの子に3年保育はかわいそうやで」だの「アンタが自転車で送り迎えしてあげたらどう?」だの「幼稚園でいじめられてるんとちがう?」だの、こちらの不安が増すようなことばかり。

1ヵ月程度たち、息子が泣かずにバスに乗るようになると、面白くなくなったのか集まって来なくなった。

近所に1人、がんやほかの病気も患い、何年間も入退院を繰り返しているおばさんがいた。このおばさんの病気が治り、表に出て来るようになると、さらにやりにくい状況となる。

当時、私は子連れOKのハンドメイドの教室を自宅で主催していた。このことに関しては珍しくおばさんたちも「親子で楽しめる場を提供するのは立派な社会貢献や」とほめてくれ、遠方から教室に通う方が、わが家の前に車を停めることを黙認してくれていたのだ。

しかし病気が治ったおばさんが、ある日「いくら道が広くても、こういうことを許してはいけない」と言い出した。そこで近くに駐車場を借りることにしたところ、そのおばさんは駐車場の持ち主のところへ行き、常識がない、迷惑な人だと、散々私の悪口を言ったそうだ。

この頃から私は、もうここには長く住めないな、と真剣に考え出す。夫にはこれまでも何度か泣いて引っ越しを訴えていたが、そのたびに「まだローンもたくさん残っているのに手放せるか」と言われて喧嘩になっていた。

結局、きっかけとなったのは息子だった。正確には息子の遊び仲間が、わが家の前でボール遊びをしていて、近所のおばさんたちの大切な花や植木を折ってしまったのだ。

遊び仲間の親にも連絡し、一緒に謝りに行ったが、おばさんたちの怒りはなかなか収まらず、ボールを捨ててしまえ、と言われた。ここまで近所の人たちを怒らせてしまったら仕方ないと、ようやく夫も引っ越すことに同意した。

今は子どもの進学先に合わせ、新築で購入したマンションに住んでいる。ほとんどの家が表札を出さず、回覧板もない。私はいつの間にかあの頃の近所姑たちと同じ年齢になった。

マンション内に親しい人はおらず、隣の人ともいただきものの交換をするくらいで、深い話はしない。それはそれで少し寂しい気もするが、やはりあのおばさんたちのように、ご近所とベタベタする気はまったくしない。

ご近所トラブルに悩んだときは

加藤さんは、近隣のおばさん達の「近所姑」ぶりに耐え切れず、引っ越すこととなりました。

加藤さんのように、良い環境だと思って家を買っても、ご近所の方々の様子までは住んでみないとわからないもの。

ご近所とトラブルになった時、どこに相談すればよいのでしょうか。

法律の総合案内所「法テラス」では、近隣トラブルに関する相談も受け付けています。

●法テラス「近隣トラブル」
https://www.houterasu.or.jp/site/faq/kinrin-trouble.html

犯罪に当たるのか分からないけれど、近隣からの嫌がらせや脅迫など警察に相談したいことがあるときには、警察相談専用電話「#9110」番が利用できます。全国どこからでも、電話をかけた地域を管轄する警察本部などの相談窓口につながります。

●警察に対する相談は警察相談専用電話 「#9110」番へ
https://www.gov-online.go.jp/article/201309/entry-7508.html

※婦人公論では「読者体験手記」を随時募集しています。

現在募集中のテーマはこちら

アンケート・投稿欄へ