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排気量以上に荒々しい唸りのAシリーズ

角を曲がる度に、ロールケージが震える。横っ腹が、ビニール張りのバケットシートへ食い込む。まるで岩のように、小さなモーリス・ミニ・クーパーSは硬い。古いワークス・ラリーカーの熱意は、想像の遥か上を行く。

【画像】ワークスの熱意は想像の遥か上 ミニ・クーパーS ジョン・クーパー名乗る現代のミニ 全142枚

市街地を流せば、通行人に手を振ってもらえる。対向車は、パッシングで応援してくれる。レッドとホワイトのツートーン・ボディは、グレーな街並みで目を引くらしい。


モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

シャシー番号K/A2S4/384848のミニは、英国のRACラリーに向けて仕上げられた、初期のクーパーS。Aシリーズ・エンジンが、排気量以上に荒々しい唸りを撒き散らす。

ダッシュボードには、スミス社製メーターと一緒に、沢山のトグルスイッチ。樹脂製テープを打ち出す、懐かしいダイモテープで丁寧にラベリングされている。1万rpmまで振られたタコメーターの上にも、6500rpmがレブリミットだと貼られている。

サスペンションはハイドロラスティック

クラシックなレーシング・ミニへ乗るのは久しぶり。クラッチは、ペダルを数cm戻せば繋がる。運転姿勢は少々不自然だが、開発を率いたアレック・イシゴニス氏は、この方がドライバーの集中力を保てると考えたらしい。

ツインSUキャブレターの効果で、アクセルレスポンスは過激。舗装の穴を通過し、揺れでうっかり踏み込むと、リードを解かれた子犬のように暴れそう。旋回速度は滅法速い。ブレーキを頼るのは、横断歩道や交差点に差し掛かった時くらいだ。


モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

サスペンションは、アレックス・モールトン氏が提案したラバーコーンではなく、限定的に採用されたハイドロラスティック。跳ねるような乗り心地が抑えられ、だいぶ快適に進める。ダンパーが追加され、フラットに姿勢は制御され、操縦性も良い。

高回転型へ生まれ変わった1071ccユニット

今ではモデル名になったミニのクーパーは、もとは技術者のジョン・クーパー氏が提案した高性能仕様。反対していたイシゴニスを説得し、1961年にフォーミュラ・ジュニア仕様の997cc Aシリーズ・エンジンを搭載したのが始まりだった。

だがクーパーは、1100ccクラスへの挑戦を望んでいた。既にブロックはボアアップが難しく、モーリスのエンジン部門は、新しいAシリーズの開発へ取り組むことになる。


モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ストロークは、81.28mmから68.2mmへショート化。強化されたクランクシャフトが組まれ、ビッグバルブのシリンダーヘッドが載せられた。排気量は1071ccへ拡大され、より高回転型のエンジンへ生まれ変わった。

果たして、それを積むミニはクーパーSと呼ばれ、最高出力は15ps上昇。最高速度は152km/hに達した。K/A2S4/384848が搭載したエンジンも、当初は1071ccだった。

読み通り大ヒットした高性能なミニ

速さを受け止めるべく、フロントにはサーボアシスト付きで、直径7.5インチのディスクブレーキを採用。異なるフロントグリルとリアの専用エンブレムで、控えめに違いが主張された。ホイールは、冷却性を高めた幅3.5Jのスチールを履いた。

内装は従来のクーパーと共有しつつ、ダッシュボードは時速120マイル(約193km/h)まで振られたスピードメーターを獲得。幅4.5Jのホイールや右側へ追加される燃料タンク、オイルパンガード、クロスレシオのMTなど、多彩なオプションが用意された。


モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

クーパーSは1963年3月に発表され、4月に量産がスタート。高性能なミニは、クーパーの読み通り大ヒットしている。

1963年のRACラリーをBMC勢の最高位で完走

K/A2S4/384848は、オースチンを傘下にしたBMCのワークス部門によって、1963年の英国RACラリーへエントリー。そこには、もう1台のクーパーSと、クーパーが1台、2台のオースチン・ヒーレー3000が含まれていた。

1.1LエンジンにはSUキャブレターが2基組まれ、圧縮比は11:1へ上昇。ゼッケンは21番で、フロントには照射距離の長いスポットライトが並んだ。屋根にも1灯。ドライバーは、パディ・ホプカーク氏、コ・ドライバーはヘンリー・リドン氏へ任された。


モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ラリーのルートは、グレートブリテン島中西部のブラックプールを出発し、ヒルクライム・ステージなどを交えつつ、南部のウェアハムを目指すもの。21番は騒音規制に引っかかりつつも、警察によるスピード違反の取締りをかいくぐり、速さを競った。

1963年を制したのは、トム・トラナ氏が駆ったボルボPV544。ハリー・ケルストローム氏によるフォルクスワーゲン・タイプ3 1500Sが2位、エリック・カールソン氏によるサーブ96が3位と続いた。クーパーSは、BMC勢の最高位で完走している。

この続きは、モーリス・ミニ・クーパーS(2)にて。