地元紙・神戸新聞が検証…”インフルエンサー”中田敦彦の言動が兵庫県知事選に及ぼした「影響力」

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<裏の主人公と言っても良い方>

兵庫県ではいまだに「告発文書問題」について斎藤元彦兵庫県知事(48)に対する記者たちの追及が続いており、混乱は収まっていない。

’24年の兵庫県知事選をきっかけにさまざまな問題が噴出した。SNSでデマが拡散し、誹謗中傷が渦巻き、犠牲者も出た。百条委員会の委員だった竹内英明元兵庫県議会議員もそのひとり。竹内元県議が亡くなって1年が過ぎ、地元紙の神戸新聞が『兵庫県知事選 あの熱狂の中で』と題した、竹内元県議の死と先の県知事選をあらためて検証する連載を始めた。

その第11弾では〈「いいね」の重さ インフルエンサーの発言〉と題し、お笑いコンビ『オリエンタルラジオ』中田敦彦(43)のYouTubeチャンネルを取り上げている。

中田は知事選の投開票日である’24年11月17日の直前の15日と16日に〈兵庫県知事選という究極のミステリー〉というタイトルの動画を公開。その中で、

〈もう1人注目の人物、裏の主人公と言っても良い方が立候補してるんですね。それが立花孝志さんなんですよ〉

と、7人の立候補者の1人だった立花被告の主張を紹介し、解説している。神戸新聞は件(くだん)の動画内での中田の発言の問題点をいくつか指摘しているが、その一つが、

〈この方はものすごいことやってます〉

〈冷静に見ると立花さんという方は選挙というシステムを熟知した上でその裏をかくようなやり方をやってですね、何か自分の思いを国民に届けたいという方なんです〉

と、立花被告を賞賛するかのような発言をしている点だ。

〈今回はですね、この兵庫県知事選において、各社テレビで報道されているような斎藤さんのパワハラであるとかモラハラであるとか、そういったことの報道というものが実はウソであると、真実は逆なんだ。斎藤さんはものすごく陥れられているんだという主張を皆さんに知ってほしいがゆえに立候補したという話なんですよ〉

〈斎藤氏はパワハラなどしておらず、メディアや県議会が貶めようとしている〉

と、中田は動画内で立花被告の主張を紹介。

告発文書問題にも触れ、

〈内部告発という仕組みを悪い方向に利用して、政治的に邪魔な存在を追いやろうとしているだけなんじゃないか、という裏を主張したいということで、立花さんが動いているわけです〉

などと解説しているのだが、そのほとんどが後に第三者委員会で否定されている。中田は動画の最後でこう述べている。

〈私はですね、正直にこの動画において、絶対にこっちが正しいとか、絶対にこっちを応援してほしいということは一切言いません。そういうチャンネルではありません〉

あくまで自分は中立の立場で、候補者の主張を紹介、解説しただけ――そう主張しているのだが、動画を見た中田のファンたちは、立花被告に対してどんな印象を持っただろうか。当の立花被告は以下のように評価していた。

説明責任を果たすべき

立花被告は選挙後のネット番組でこう述べている。

〈最後の中田敦彦さんのユーチューブでもう決まりましたね〉

当の本人が、中田の動画が兵庫県知事選に及ぼした影響は大きいと考えていたのだ。

中田は現在、一般公開していた件(くだん)の動画を限定公開としている。その理由を含め、中田に書面で以下の質問を送った。

動画が県知事選に何らかの影響を与えたと認識しているか?

現時点でも立花被告に対する評価は変わりないか?

動画内でいくつか、事実誤認と思われる発言があるが、裏づけ取材はしているのか?

同動画が現在、限定公開となっている理由について、神戸新聞の取材に対し、〈その後の状況変化により、当該動画が切り取られて受け取られることで、誤解や対立が助長されることのないように公開範囲を見直しました〉と答えているが、具体的にどのような状況変化を指しているのか?

説明責任を問う声も上がっているが、説明責任についてどう考えているか?

今後SNS等で説明する気はあるか?

質問に対し、中田の動画運営スタッフから以下の回答があった。

「当社が運営するYouTubeチャンネルにおける当該動画は、兵庫県知事選をめぐる論点や情報環境について解説する目的で、当時公開されていた情報(公的発表、報道、当事者の発信等)を参照して制作したものです。

動画内では、第三者の主張・見解を『主張として』紹介した部分を含め、当社として特定の個人・団体に関する事実認定や評価を確定するものではなく、捜査・公判等の対象となり得る事項を断定するものではありません。

現時点でも、進行中の手続に関わる評価や、個別の責任の所在に関する見解表明は差し控えます。また、個別の選挙結果について、特定の動画が投票行動に与えた影響を当社として検証・定量することは困難であり、因果関係に関する見解表明は差し控えます。

当該動画を現在メンバーシップ限定としているのは、切り取られ方や受け取られ方によって誤解や対立の助長につながり得る点を踏まえ、公開範囲を見直したためです。当社としては、今後も出典の明示、表現上の配慮、訂正・更新の在り方等を含め、発信の方法を継続して検討してまいります」

中田の発言には何ら問題はなかったのだろうか。元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士はこう指摘した。

「中田氏は動画の中で、故人の元県民局長について『局長はなぜ死を選んでしまったのか』と題して『衝撃の説が唱えられているわけですよね』と述べ、また元県民局長の告発を“公益通報ではない”という立花被告の主張を大々的に紹介しています。

中田氏は『あくまで立花被告の言い分を紹介しただけ』と主張するでしょうが、立花被告を高く評価した上でその言い分を中心に構成された中田氏の発信は、立花被告の発信と実質上一体となって元県民局長の名誉を害していると解釈される可能性があるのではないでしょうか」

その上で西脇弁護士は「何もやましいことがないなら、公開範囲を限定する必要はないはずです」と続けた。

「『切り取られ方や受け取られ方によって誤解や対立の助長につながり得る』から公開範囲を狭めたという中田氏側の弁明は、裏を返せば『広く公開したら誤解や対立の助長につながり得る動画』と自分で認めているようにも思えます。

中田氏が動画を出した後、兵庫県の第三者調査委員会は元県民局長の告発を公益通報と認定しています。中田氏の動画に『誤報』はなかったのか。オールドメディアと呼ばれる報道機関は誤報があれば会社として謝罪を迫られます。

中田氏のYouTubeも広く一般に情報を伝えているという点で、テレビや新聞と同じです。名誉毀損に関する法律は他の報道機関と同じ厳しさで適用され、法的責任は変わらない。オールドメディアに対して厳しい指摘をしている中田氏が、自分のYouTubeについて説明責任を果たさないという選択肢はないのではないでしょうか」

インフルエンサーとしても「武勇伝」を創ることができるか。

取材・文:佐々木博之(芸能ジャーナリスト)