『弁天山 美家古(みやこ)寿司』浅茅 8800円 ネタには仕事がされ、煮切り醤油や煮ツメで味がついているから、間を置かず、そのまま口に放り込めばいい。シャリがほどけて重なり合う

写真拡大 (全20枚)

一度は食べたい憧れの老舗店。お値段の高いイメージがありますが、昼であればお得にいただけます。落ち着いた雰囲気の店内で楽しむ、職人の握り、仕事、所作――。目で楽しみ、舌で味わう愉悦。昼から贅沢に「江戸前」の寿司に酔いしれましょう。

【慶応2(1866)年創業】受け継がれた江戸前の仕事が口中でひとつになる至福『弁天山 美家古(みやこ)寿司』@浅草

澱みない仕草でテンポよく握られて、目の前にポンと出される。姿形のいい握りに思わず見惚れてしまう。

ここは浅草、弁天山美家古寿司。江戸前寿司の始祖、華屋与兵衛の流れを汲む店で修業を重ねた初代・金七が開業したのが慶応2年。以来まもなく160年、江戸前寿司の技法を磨き、守り続けている。

今どきの寿司との違いを言うなら「生ものを生々しく握るのではなく、可能な限り寿司ネタに仕事をして、そこに煮切り醤油をして食べていただく」(5代目・内田正さん)となる。

浅茅8800円

『弁天山 美家古(みやこ)寿司』浅茅 8800円 ネタには仕事がされ、煮切り醤油や煮ツメで味がついているから、間を置かず、そのまま口に放り込めばいい。シャリがほどけて重なり合う

昆布締めの平目に、才巻エビ、穴子や煮イカ、小肌、玉子焼まで、どのネタにも一つひとつ丁寧な仕事がされている。

「酢飯、仕事をした寿司ダネ、新鮮なわさび、煮切り醤油。この4つのバランスでおいしさを最大限に引き出します」とは6代目・山下大輔さん。

色をつけずにやさしく煮られた穴子に煮詰めがさっとのる。1枚15分かけてふんわり焼かれた玉子焼、キリッと酢〆された小肌の塩梅もたまらない。

老舗の佇まいも魅力だが、敷居はまったく高くない。目で舌で、心ゆくまで味わいたい。

『弁天山 美家古(みやこ)寿司』

[店名]『弁天山 美家古(みやこ)寿司』

[住所]東京都台東区浅草2-1-16

[電話]03-3844-0034

[営業時間]12時〜14時半(14時LO)、17時〜21時(20時LO)、日・祝:12時〜18時(17時LO)

[休日]月・第1、第3日

[交通]地下鉄銀座線ほか浅草駅7番出口から徒歩3分

【大正12(1923)年創業】ネタのよさが仕事で生きる艶のある味わい『喜寿司(きずし)』@人形町

※喜の字は本来、七が3つ

もとは置屋だったという風情ある日本家屋。暖簾をくぐって一歩入ると、昔ながらの設えと静かな佇まいに、少し時を遡ったような気もする。

油井一浩さんが4代目を預かる人形町の『喜寿司』だ。

「先代、先々代のときから基本的には変わってないですね」と、しっかり江戸前の仕事を継いでいる。一方で「今はネタがいいですから」と、素性のいいネタを生かすようにその仕事がされている。

結果、こちらの寿司にはどこかグッとくる艶がある。

にぎり8800円

『喜寿司(きずし)』にぎり 8800円 輪郭のしっかりした余韻の感じられる味わい

たとえば看板ともいえる穴子だ。塩で揉み、ぬめりを徹底的に洗って煮る。臭みは微塵もなく、穴子そのものの味や香りを感じさせ、口中で溶け、あとを引く。

秘伝の煮詰め、塩、煮切り醤油、どう食べても絶品。「唐子づけ」というハート型の仕立てにされた才巻エビもいい。色鮮やかなエビ、芝エビを使ったおぼろと、酢飯のコンビネーション。粒が立ち、角が立たずにネタが生きるバランスのいいシャリだ。

感性に訴えかけてくる旨さを味わいたい。

『喜寿司(きずし)』時の重なりを感じさせる佇まい

[店名]『喜寿司(きずし)』

[住所]東京都中央区日本橋人形町2-7-13

[電話]03-3666-1682

[営業時間]11時45分〜14時半、17時〜21時半※土は〜21時

[休日]日・祝、木は不定休

[交通]地下鉄日比谷線人形町駅A3出口から徒歩3分

【明治22(1889)年創業】守ることを守りつつ今に活かした江戸前の粋が光る『蛇の市 本店』@三越前

まだ日本橋に魚河岸があったころ、その前で屋台を出していたのが始まり。初代・市太郎氏は蛇目(じゃのめ)寿司で修業を積み、愛称は“蛇目の市ちゃん”。それが店名の由来で、名付け親は作家・志賀直哉だという。

店主の寳井(たからい)英晴さんは5代目だ。変わらぬこだわりは、砂糖を使わず、赤酢と塩だけで仕上げた伝統のシャリだ。煮切り醤油が少しだけ甘みを与える。

江戸前鮨10貫5500円

『蛇の市 本店』江戸前鮨10貫 5500円 海苔とゴマが入った酢飯が太巻き状に巻かれた玉子焼は、大昔のレシピから復刻させたものだという

「酢飯は酸っぱくないと。酸味と塩味で魚の甘さを感じ、かんぴょうなどの甘さも立ってくる」。

冷蔵庫のない時代からの手を入れるネタも多い。エビは甘酢に漬け、白身は昆布で締め、シャコを煮る。

ただ「仕事はやり過ぎないようにしてる」とも。「昔の仕事は保存目的で強め。それは少しずつ変えてきた。長く続けるとは守ることは守りつつの変化の歴史」。

見た目の美しさと、隠れた仕事、口中で味が重なり合うバランスまで計算された「ばらちらし」も5代目が生んだもの。本筋を見極めつつ続く老舗の味を楽しみたい。

『蛇の市 本店』

[店名]『蛇の市 本店』

[住所]東京都中央区日本橋室町1-12-10

[電話]03-3241-3566

[営業時間]11時半〜14時(13時半LO)、16時半〜22時(21時LO)

[休日]日・祝・月

[交通]地下鉄半蔵門線ほか三越前駅A1出口から徒歩3分

【文久元(1861)年創業】赤酢のシャリがネタを引き立て余韻を残す『九段下 寿司政』@九段下

趣きのある建物は大正時代のもの。関東大震災を経て九段下に店を構え、『寿司政』の味を確立したのが、職人気質の3代目・戸張政次郎氏だという。

「政次郎亡き後、その味を職人たちに伝え、誰が作っても『寿司政』の味となるようにしたのは祖母。私も10代の頃に教わりました」とは現在の5代目、戸張正大さんだ。

竹にぎり5500円

『九段下 寿司政』竹にぎり 5500円 煮物(穴子や煮イカ、煮蛤)、〆物(小肌、サバ)、焼物(玉子焼)それぞれに細やかな仕事がされている

小肌、穴子、煮蛤、玉子焼、おぼろ、しいたけ、かんぴょう、ガリ。

いずれも「仕事によって独自の味が出る」というものだ。そして欠かせないのが赤酢がよく効いたシャリだ。塩、砂糖と2種類の赤酢の独自の配分。甘みが抑えられた酢飯がネタを引き立て、余韻を残す。強めの酢〆で旨みが引き出された小肌などともこの上ない相性を見せる。

握りはもちろんだが、そうした仕事の集大成とも言えるのが「ちらし」。かんぴょう、椎茸、ガリ、おぼろ、小肌、シャコ、煮イカ、玉子……と16種類もの具が次々に顔を出す。しみじみとため息が出るような旨さである。

『九段下 寿司政』店内は木の香漂う落ち着いた雰囲気

[店名]『九段下 寿司政』

[住所]東京都千代田区九段南1-4-4

[電話]03-3261-0621

[営業時間]11時半〜14時、17時半〜22時※土・日・祝は〜21時

[休日]無休

[交通]地下鉄半蔵門線ほか九段下駅6番出口からすぐ

【昭和10(1935)年創業】洗練と華やかさ、お客様と向かい合い育まれた味『銀座 久兵衛 本店』@銀座

銀座木挽町の名店で修業を積んだ初代・今田壽治氏が開業したのは昭和10年。店名は修業時代からの愛称「久さん」から取ったものだという。創業から90年。今や押しも押されぬ名店と言えるだろう。

数寄屋造の店内で供される、その寿司を目の前にするとどこか心が浮き立つ。

織部8250円

『銀座 久兵衛 本店』織部 8250円 仕上がりが美しく、華やかという言葉が似合う。酢と塩だけのシャリがネタの繊細な味わいを引き立てる

「特に変わったことをやっているわけではありません。日々お客様に向かい合い応えていく、それが大事なことと考えています」とは3代目の今田景久さん。

それは江戸前の伝統を重んじながら、新しい発想を形にすることにも繋がっている。初代が、北海道からウニを持参したお客さんの声に応え、「軍艦巻き」を生んだのは有名な話だ。

江戸前の仕事も軽やかに洗練されている。白身魚の淡さを活かした浅めの昆布締めしかり、ネタがいいからこそ、その素材感を損なわないようにされている。ウニの軍艦は手から手へ渡される。

海苔が湿気ってしまわぬうちにすぐ食べれるように。そんな心遣いもまた憎い。

『銀座 久兵衛 本店』3代目 今田景久さん

3代目:今田景久さん「街とお客様に育てられてきたのが久兵衛です」

『銀座 久兵衛 本店』

[店名]『銀座 久兵衛 本店』

[住所]東京都中央区銀座8-7-6

[電話]03-3571-6523

[営業時間]11時半〜14時、17時〜22時

[休日]日・月

[交通]地下鉄銀座線新橋駅3番出口、JR山手線新橋駅銀座口から徒歩5分

撮影/貝塚隆、取材/池田一郎

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

※画像ギャラリーでは、絶品寿司の画像をご覧いただけます

※月刊情報誌『おとなの週末』2026年11月号発売時点の情報です。

2025年11月号

【画像】ネタが光り輝く!憧れの老舗でいただける江戸前寿司ランチ一覧(27枚)