前回大会では4強進出。北中米大会でもさらなる飛躍が期待されるモロッコ。(C)Getty Images

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 2022年のカタールW杯でベスト4に輝いたモロッコの躍進は、決して奇跡ではない。実際、世界を経験した若い選手を含め、個人がクラブレベルでも価値を上げているのだ。

 もちろん他のアフリカ諸国と同じく、中盤の支柱であるソフィアン・アムラバト(ベティス)をはじめとした欧州ベースの移民選手たちの存在を抜きに語れないが、ターゲットマンのユーセフ・エン=ネシリ(フェネルバフチェ)やディフェンスリーダーのナイエフ・アゲルド(マルセイユ)など、モロッコ育成改革の中核をなす「モハンマド6世アカデミー」の出身者など、モロッコで生まれ育った選手も多いのは、国を挙げての地道な努力の成果と言える。

 その象徴的な出来事となったのが、パリ五輪での銅メダル獲得だった。そこからイリアス・アコマシュ(ビジャレアル)やエリエス・ベン・セギル(レバークーゼン)、ウサマ・タルガリン(フェイエノールト)などが、A代表でも重要な選手になってきている。

 そのパリ五輪にオーバーエイジで出場し、キャプテンを務めたのがアシュラフ・ハキミ(パリSG)であり、心身両面で「アトラスのライオン(モロッコ代表の愛称)」を支える存在になっている。

 気鋭のタレント軍団を率いるのはワリド・レクラギ監督。前回はヴァヒド・ハリルホジッチ監督の解任を受けて、本番の3か月前に就任すると、短期間で選手たちを1つの戦う集団にまとめあげた。
 
 ボールを握って攻めることを目的とせずに、徹底した堅守から効率良くゴールを目ざす戦術を植え付けたことが、カタールでの躍進につながったことは間違いない。言い換えると、持たされる側になると難しくなる傾向は、準優勝に終わった自国開催のアフリカ・ネーションズカップでも出ており、48か国に拡大された北中米W杯でもテーマになってきそうだ。

 ディフェンスは前回大会から引き続き、ヤシン・ブヌ(アル・ヒラル)が後ろから支える。右サイドバックは攻撃的なハキミが君臨しており、左サイドでいかにバランスを取るかが生命線になるだけに、ヌサイル・マズラウィ(マンチェスター・U)の献身的な働きは大きい。

 さらに攻撃を加速させたい場合は、左利きの大型サイドバックであるアナス・サラー=エディン(PSV)が、ハキミにも引けを取らない攻め上がりを見せる。最終ラインの中央ではアゲルドの相棒が固まっているとは言い難く、19歳のアブデルハミド・アイト・ブドラル(レンヌ)にかかる期待が高まっている。
 
 中盤はニール・エル・アイナウイ(ローマ)がアンカーで攻守両面の強度を高めるが、大事な試合になるほどアムラバトの経験値が頼りになるかもしれない。チャンスの起点となるのが、ビラル・エル・カンヌス(シュツットガルト)だ。卓越した技術の持ち主でありながら視野も広く、ワイドな位置からのスルーパスなど、モロッコの課題であるポゼッションからの崩しでも、大きな役割を担うことになりそうだ。

 イスマエル・サイバリ(PSV)は中盤の万能戦士であり、相手や状況、時間帯に応じて攻撃的にも守備的にも振る舞えるだけに、最多で8試合を戦う今大会、モロッコで最も稼働の多いフィールド選手の一人になる可能性が高い。

 そしてハキミとともに、モロッコの顔になるのがブラヒム・ディアス(レアル・マドリー)だ。アフリカ選手権では決勝のパネンカ(PKにおけるトリッキーなチップキック)失敗が大きな話題を集めてしまったが、個の仕掛けとコンビネーション両面で違いを生み出すサイドアタッカーが、初となる世界の舞台で、攻撃の鍵を握ることは間違いないだろう。
 
 もう一人、ラ・リーガで評価を高めるアブデ・エザルズリ(ベティス)は前回に続く出場となるが、今度は左の主翼として真のブレイクが期待される。

 自国開催のアフリカ選手権で準優勝に終わり、レクラギ監督に対しても、少なからず批判的な声も出ている。そうした厳しい状況をプラスに持っていけるかどうか。ベスト4以上の再躍進に向けて、ブラジル、スコットランド、ハイチと対戦するC組の突破はマストになるが、その結果によってはいきなりF組の日本と対戦するだけに、ここからの動向から目が離せない国の1つだ。

文●河治良幸

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