パンダ去りしのち…愛と余韻に浸る上野の街 “先輩タウン”和歌山では4年ぶりの赤ちゃん動物がスターに
ジャイアントパンダのシャオシャオとレイレイが、中国に帰ったのは、1月27日だ。上野動物園に連日パンダを見たいという人が詰めかけ、27日には、2頭を乗せたトラックに「ありがとう」「元気でね」と声をかける人、涙ながらに見送る人であふれていた。翌28日には、別れを惜しんで訪れる人も多く見られた。
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しかし、2頭がいなくなった最初の週末である31日土曜日の上野動物園は閑散としていた。ショップでは引き続きパンダのグッズが売られ、東園と西園を結ぶいそっぷ橋には、「ありがとう シャオシャオ&レイレイ」の大きな写真。橋の両側には2頭の誕生から成長の記録写真が並べられ、2頭がいた“パンダのもり”には歴代のパンダたちの写真もある。だが、その“パンダのもり”は柵で囲われている。

かえがたい魅力
日本にジャイアントパンダが来たのは、1972年。日中国交正常化を記念して中国より2頭のパンダ、カンカンとランランが贈られた。2頭は上野動物園で飼育され、パンダを目当てに動物園には長蛇の列ができた。ころころした体、タレ目様の顔など愛らしい姿形に加え、ドテッと座って笹を食べる仕草などは人間くさい。パンダは何者にも代え難い魅力があり、見る人を笑顔にする。
2011年には、東日本大震災の1ヶ月前にリーリーとシンシンが来日。無邪気にのんびりと過ごす様子は、悲しみに沈んだ日本国民の心を癒し、勇気づけてくれた。2017年、2頭の間に双子の兄となるシャンシャンが生まれ、2021年にはシャオシャオとレイレイが誕生。新型コロナが蔓延し、疲弊している中での嬉しいお知らせだった。上野動物園も入場制限をしたが、戯れながら成長している愛らしい子パンダの姿は、人々を元気づけてくれた。
上野動物園にパンダが来て54年。パンダとともにあったのは、動物園だけではない。松坂屋上野店では、全館あげて「ダイスキ シャオシャオ!レイレイ!」展を2月17日まで開催している。1階入り口には、パンダへのメッセージを貼るコーナーが設けられ、訪れた人たちが次々とメッセージを書いて貼っていた。館内には、パンダの写真展、パンダグッズやお菓子、パンダをモチーフに取り入れた衣料品などを販売。上野はパンダへの愛と余韻に浸っていた。
和歌山では…
上野動物園より一足先、2025年6月にパンダがいなくなった動物園がある。和歌山県白浜町にある「アドベンチャーワールド」だ。ここは生まれたパンダに「浜(ひん)」のつく命名をすることでも知られている。
最初の来日は1994年だが、2000年に来た梅梅(めいめい)は子沢山のママパンダで、6頭の子どもを産んだ。その娘の良浜(らうひん)は、10頭もの子どもを産み、2000年から2020年の間に総数16頭のパンダが生まれている。アドベンチャーワールドは、パンダの出産・子育てのエキスパートとなった。
生まれたパンダは数年で中国に返還される。2025年6月に良浜と娘3頭が中国に帰り、30年間パンダと共にあったアドベンチャーワールドからパンダがいなくなってしまった。パンダに会えないのも寂しいが、たくさんのパンダの出産をサポートし、育ててきた経験をいかせなくなったのも残念だ。
“スター不在”とも言える現在のアドベンチャーワールド。パンダに代わりそうな動物はいるのだろうか。担当の新東さんは以下のように語ってくれた。
「当パークでは、パンダがいた時から、すべてのいのちを等しく大切にしてきました。パンダは多くの方に愛される存在で、自然と注目が集まることもありましたが、帰国後にパークとしての考え方が変わったわけではありません。現在は、ペンギンやトラをはじめ、さまざまないのちに改めて目を向けていただく機会が増えていると感じる場面があります」
ニューアイドルも
そうした中で来園者の関心を集めているのが、昨年9月30日に4年ぶりに誕生したエンペラーペンギンの赤ちゃんだ。よちよちと歩く姿が来園者の心を和ませている。
「SNSで成長の様子をお届けしているのですが、“赤ちゃんペンギンに会いたくて来ました”という声も聞かれるようになりました。関連グッズの売れ行きも好調です」(新東さん)
2月23日までの土日には『ナイトペンギンツアー』を実施しており、各日30名の定員はすでに満席となっている。
「昨年の夏には、アムールトラの赤ちゃんも3頭誕生しました。年末から親子での展示を始め、こちらも多くの方にご覧いただいています」
動物たちの夜の姿を観察できる『ナイトサファリー』は、2月22日と23日に開催される。
アドベンチャーワールドからパンダがいなくなっても、記念イベントはひき続き開催される。
1月25日には、16頭の父として多くのいのちを育ててきたジャイアントパンダ・永明(えいめい)の一周忌が営まれた。
「当パークでは『PANDA LOVE CLUB』という企画があり、当日は260名もの方が集まりました。永明との思い出やエピソードを語り合いながら、その存在が多くの方の心に残っていることを改めて感じました」
いわずもがな、パンダは希少な動物。世界中のパンダ飼育者や研究者が協力して守りたいと新東さんは言う。
すべての動物がおすすめ
上野動物園教育普及係の佐藤千恵子さんも、注目の動物として以下をあげてくれた。
「どの動物もおすすめですが、ゾウ、トラ、ゴリラ、コビトカバ、ハシビロコウなど注目の高い動物が当園にはいろいろいます」
また上野動物園の今後についても……。
「今後も絶滅の危機に瀕している野生動物の飼育・繁殖に取り組み、動物たちの多様な魅力を多くの方々にお伝えする活動を続けていきたい」(佐藤さん)
今回のシャオシャオとレイレイの帰国は既に予定されていたもので、昨年来、日本政府は新たなパンダの貸与を中国にお願いしていた。しかし、台湾有事を巡る高市首相の発言に中国側は反発、新たなパンダが来る予定はなくなった。日中友好のシンボルであるパンダは、いつ来てくれるのだろうか。
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取材・文/藤栩典子
デイリー新潮編集部
